かつては学生だけが着るもの、あるいは卒業後は“コスプレ”と捉えられがちだった制服。近年「なんちゃって制服」が、Z世代を中心に私服と制服の中間ファッションとして定着しつつある。2016年オープンの東京・原宿にある制服のセレクトショップ「KANKO SHOP Select Square」では、現役生のみならず20代の“青春の延長線”としての利用からその上の大人層、外国人観光客にまで客層が広がっている。世代間のギャップを越えて広がる制服の新たな価値とは? 「令和の制服」事情について掘り下げる。
◆活況得る制服のセレクトショップ、メイン利用は10代〜20代半ば、上は40代も
――制服のセレクトショップ「KANKO SHOP Select Square」をオープンした経緯を教えてください。
「関東エリアに多い『自由制服制』の学校に通う生徒に向け、地域に密着して自由制服を提案できるフラッグシップストアとして2016年に原宿でオープンしました。トレンドの発信地に店舗を構えることで、10代の生の意見を聞き、商品開発に生かす狙いもありました。通常のカンコーショップは全国にありますが、自由制服専門のセレクトショップとしては、現在は東京・原宿と千葉・舞浜の2店舗です」
――最近では現役の学生に限らず、大学生や社会人、外国人観光客なども利用しているそうですね。
「オープン当初の販売ターゲットは中高校生がメインでした。しかし、『レンタル事業』を始めてから一気に客層が広がり、高校を卒業した大学生から20代の方にも借りていただけるようになりました。さらに、会社の余興やイベントで使用するために、大人の方が利用されるケースもあります」
――レンタルだけでなく、実際に購入して私服のファッションアイテムとして取り入れる大人もいるのでしょうか?
「やはり制服ファッションが好きな大人の方は一定数います。特にチェック柄のスカートや無地のニットは、私服のコーディネートにも合わせやすいため、大人の方が普段着として購入されるケースもあります。もちろん、外国人観光客にご購入いただく機会も増えています」
――レンタルの利用年齢は、何歳くらいまでなのでしょうか?
「実店舗のボリュームゾーンは高校生から20代半ばです。20代後半の方もいますし、海外からのお客さまの中には、年齢を気にせずレンタルを楽しまれる方も多いです。また、オンラインでのレンタルも含めると、40代の方にもご利用いただき、年代の幅は非常に広いです」
――舞浜への出店は、テーマパーク利用が多いからでしょうか?
「その通りです。当初レンタル事業は原宿店だけでした。お客さまの多くが『テーマパークに着て行く』と聞き、アクセスの良い舞浜への出店を決めました。最近は、ライブなどの『推し活』イベントや、友達とお揃いコーデで遊ぶためなど、用途も多様化しています。また、外国人観光客の中には『アニメの影響で学ランや日本のJKの制服を着てみたかった』とレンタルされ、そのまま観光へ行かれる方もいます。利用者の8〜9割は女性で男性のみの来店は少ないのですが、カップルで来店し、お揃いの制服を着るというケースは結構あります」
◆20代利用は“コスプレ”というより“青春の延長線”、市民権を得た「なんちゃって制服」
――かつて高校卒業後の制服着用は“コスプレ”と捉えられていました。Z世代を中心に心理的ハードルは下がっているのでしょうか?
「確実に下がっていると思います。コロナ禍で青春の思い出作りが満足にできなかった方や、新しくできたパートナーとお揃いで制服デートをしてみたい方、自分の学校の制服が可愛くなかったなど、理由はさまざまです。また、ハイブランドでも『スクールルック(制服風スタイル)』のアイテムが展開されています。学校指定の制服ではなく、いわゆる『なんちゃって制服』が私服と制服の中間ファッションとして定着したことも抵抗感を減らしていると思います」
――いわゆる「なんちゃって制服」を楽しめる年齢の境界線は、何歳くらいだとお考えですか?
「ボリュームゾーンである10代〜20代半ばで、ひと区切りあるという印象です。ただ、それより上の方もオンラインショップ等でレンタルする方がたくさんいるので、決して着られないわけではありません。実際、さまざまな世代の方にも楽しんでもらえるように、大人向けの企画もスタートさせています」
――卒業後に制服を楽しむ風潮は、何がきっかけで増えたのでしょうか?
「K-POPアイドルによる韓国風制服の流行が、大きなきっかけだったと思います。ただ、ハイブランドでも、トラッドやプレッピーといった制服風スタイルは定期的に提案されており、ファッションとしてのベースは昔から存在していました」
――「友達と一緒なら恥ずかしくない」という、集団心理のようなものも影響しているのでしょうか?
「それもあります。街中で着るのには少しハードルが高くても、『テーマパークという特別な空間なら一歩を踏み出せる』という集団心理も影響しています。20代の利用者はコスプレというより、『青春の延長線上』として自然に楽しんでいるようです」
◆大人世代の制服願望は「性的嗜好」だけではない! 「純粋な憧れ」の対象として“普段着用”に
――大人層は定番のブレザースタイルが人気とのことですが、その背景には、どのような心理があるのでしょうか?
「20代の方には『これならまだ現役に見える、浮かないかな』という意味合いが大きいです。同時に、中高校生が持つ『制服=青春の象徴』というイメージに、自分の思い出を寄せにいっている部分もあります。王道スタイルを選びつつ、当時着られなかった流行のカーディガンやリボンを合わせてアレンジを楽しんでいます」
――20代女性がファッションとして楽しむ一方で、40代以上の世代にとって制服は「卒業したら着てはいけないもの」という意識があり、かつては「性的趣向」のイメージと結びつくネガティブな時代背景もありました。こうした世代間のギャップがある中で、店舗として利用者の属性に「線引き」はあるのでしょうか?
「店舗でもオンラインでも、利用の制限や線引きはしていません。実際、40代・50代の大人世代で制服を借りられるお客さまもいらっしゃいます。年齢・性別の壁を気にせず、『当時着たくても着られなかった』『一度着てみたかった』という純粋な思いで、好きなものを自由に選んで楽しんでいただけるスタンスを大切にしています」
――「制服=学生のもの」という固定概念は、今でも消えていないのでしょうか?
「残っていると思います。『制服は学生が着るもの』というベースがあるからこそ、あえて大人がファッションとして楽しむことへと広がったのではないでしょうか。また、“みんなでお揃いにする楽しさ”は、私服ではなかなか味わえない、制服ならではの魅力です」
◆
大人世代の意識に変化も「卒業後の制服着用へのネガティブなイメージが薄れてきている」
―― 一方、ファッションとして制服の流行において、韓国カルチャーの影響はどれくらい大きかったのでしょうか?
「注目度は非常に高かったです。当店でも韓国風のタイトなジャケットやシャツ、スカートを展開しましたが、同じように作って売れるかというと、そうではありませんでした。韓国風制服の魅力である“タイトでスタイルを強調するデザイン”に対し、日本の若者は『体型をそこまで露骨に出したくない』という意識が根強く、購入して何度も着るまでには至りませんでした。一方、それまでの日本の伝統的な制服にはなかった鮮やかなイエローや主張の強いブラウン系など、全体のシルエットやカラー面では、トレンドとして影響を受けました」
――近年の制服トレンドを教えて下さい。
「ここ数年は、平成レトロブームにより、ルーズソックスや合皮のスクールバッグ、ベージュのカーディガンなどが、一周回って『エモい価値』として受け入れられています。また、ここ2年ほどは『エンジ色のカーディガン』に人気が集中しています。大きめのカーディガンをダボッと羽織り、スカートの丈を調整し、足元にルーズソックスを合わせるのが、最新トレンドです」
――大人向けに提案された「チェック柄のロングスカート」の反響はいかがですか?
「私服として完全に成立し、狙い通り大人の方が購入されています。学生服と同じクオリティの生地を使っているためプリーツの保持性が圧倒的に高く、洗濯機で丸洗いしても型崩れしません。学校指定にはない明るいカラーも多いため、制服感を一切出さずに、質の良い普段着として使っていただけます」
――世代間の制服に対するギャップや風潮の変化について、今後はどのように変わっていくと思います?
「私自身も40代ですが、Z世代が違和感なく制服をファッションとして着こなしている姿には、時代の変化を強く感じます。その楽しそうな姿に影響されて、大人世代が持つ卒業後の制服着用へのネガティブな意識も薄れてきているように感じます。将来的に、制服の持つ価値がもっと自由に定着していけばいいなと思っています。学生服は3年間毎日激しく動いても傷まないよう、一般のアパレル製品に比べて耐久性や縫製技術が格段に優れています。今後はその最大の強みを活かし、『学校へ着ていく服』にとどまらず、中高生はもちろん、幅広い世代に私服や一般アパレルとしても長く愛用してもらえる上質な服を提案していきたいです」
【写真】セーラー服から最新トレンド制服まで、キュートに着こなす女子たち
◆活況得る制服のセレクトショップ、メイン利用は10代〜20代半ば、上は40代も
――制服のセレクトショップ「KANKO SHOP Select Square」をオープンした経緯を教えてください。
――最近では現役の学生に限らず、大学生や社会人、外国人観光客なども利用しているそうですね。
「オープン当初の販売ターゲットは中高校生がメインでした。しかし、『レンタル事業』を始めてから一気に客層が広がり、高校を卒業した大学生から20代の方にも借りていただけるようになりました。さらに、会社の余興やイベントで使用するために、大人の方が利用されるケースもあります」
――レンタルだけでなく、実際に購入して私服のファッションアイテムとして取り入れる大人もいるのでしょうか?
「やはり制服ファッションが好きな大人の方は一定数います。特にチェック柄のスカートや無地のニットは、私服のコーディネートにも合わせやすいため、大人の方が普段着として購入されるケースもあります。もちろん、外国人観光客にご購入いただく機会も増えています」
――レンタルの利用年齢は、何歳くらいまでなのでしょうか?
「実店舗のボリュームゾーンは高校生から20代半ばです。20代後半の方もいますし、海外からのお客さまの中には、年齢を気にせずレンタルを楽しまれる方も多いです。また、オンラインでのレンタルも含めると、40代の方にもご利用いただき、年代の幅は非常に広いです」
――舞浜への出店は、テーマパーク利用が多いからでしょうか?
「その通りです。当初レンタル事業は原宿店だけでした。お客さまの多くが『テーマパークに着て行く』と聞き、アクセスの良い舞浜への出店を決めました。最近は、ライブなどの『推し活』イベントや、友達とお揃いコーデで遊ぶためなど、用途も多様化しています。また、外国人観光客の中には『アニメの影響で学ランや日本のJKの制服を着てみたかった』とレンタルされ、そのまま観光へ行かれる方もいます。利用者の8〜9割は女性で男性のみの来店は少ないのですが、カップルで来店し、お揃いの制服を着るというケースは結構あります」
◆20代利用は“コスプレ”というより“青春の延長線”、市民権を得た「なんちゃって制服」
――かつて高校卒業後の制服着用は“コスプレ”と捉えられていました。Z世代を中心に心理的ハードルは下がっているのでしょうか?
「確実に下がっていると思います。コロナ禍で青春の思い出作りが満足にできなかった方や、新しくできたパートナーとお揃いで制服デートをしてみたい方、自分の学校の制服が可愛くなかったなど、理由はさまざまです。また、ハイブランドでも『スクールルック(制服風スタイル)』のアイテムが展開されています。学校指定の制服ではなく、いわゆる『なんちゃって制服』が私服と制服の中間ファッションとして定着したことも抵抗感を減らしていると思います」
――いわゆる「なんちゃって制服」を楽しめる年齢の境界線は、何歳くらいだとお考えですか?
「ボリュームゾーンである10代〜20代半ばで、ひと区切りあるという印象です。ただ、それより上の方もオンラインショップ等でレンタルする方がたくさんいるので、決して着られないわけではありません。実際、さまざまな世代の方にも楽しんでもらえるように、大人向けの企画もスタートさせています」
――卒業後に制服を楽しむ風潮は、何がきっかけで増えたのでしょうか?
「K-POPアイドルによる韓国風制服の流行が、大きなきっかけだったと思います。ただ、ハイブランドでも、トラッドやプレッピーといった制服風スタイルは定期的に提案されており、ファッションとしてのベースは昔から存在していました」
――「友達と一緒なら恥ずかしくない」という、集団心理のようなものも影響しているのでしょうか?
「それもあります。街中で着るのには少しハードルが高くても、『テーマパークという特別な空間なら一歩を踏み出せる』という集団心理も影響しています。20代の利用者はコスプレというより、『青春の延長線上』として自然に楽しんでいるようです」
◆大人世代の制服願望は「性的嗜好」だけではない! 「純粋な憧れ」の対象として“普段着用”に
――大人層は定番のブレザースタイルが人気とのことですが、その背景には、どのような心理があるのでしょうか?
「20代の方には『これならまだ現役に見える、浮かないかな』という意味合いが大きいです。同時に、中高校生が持つ『制服=青春の象徴』というイメージに、自分の思い出を寄せにいっている部分もあります。王道スタイルを選びつつ、当時着られなかった流行のカーディガンやリボンを合わせてアレンジを楽しんでいます」
――20代女性がファッションとして楽しむ一方で、40代以上の世代にとって制服は「卒業したら着てはいけないもの」という意識があり、かつては「性的趣向」のイメージと結びつくネガティブな時代背景もありました。こうした世代間のギャップがある中で、店舗として利用者の属性に「線引き」はあるのでしょうか?
「店舗でもオンラインでも、利用の制限や線引きはしていません。実際、40代・50代の大人世代で制服を借りられるお客さまもいらっしゃいます。年齢・性別の壁を気にせず、『当時着たくても着られなかった』『一度着てみたかった』という純粋な思いで、好きなものを自由に選んで楽しんでいただけるスタンスを大切にしています」
――「制服=学生のもの」という固定概念は、今でも消えていないのでしょうか?
「残っていると思います。『制服は学生が着るもの』というベースがあるからこそ、あえて大人がファッションとして楽しむことへと広がったのではないでしょうか。また、“みんなでお揃いにする楽しさ”は、私服ではなかなか味わえない、制服ならではの魅力です」
◆
大人世代の意識に変化も「卒業後の制服着用へのネガティブなイメージが薄れてきている」
―― 一方、ファッションとして制服の流行において、韓国カルチャーの影響はどれくらい大きかったのでしょうか?
「注目度は非常に高かったです。当店でも韓国風のタイトなジャケットやシャツ、スカートを展開しましたが、同じように作って売れるかというと、そうではありませんでした。韓国風制服の魅力である“タイトでスタイルを強調するデザイン”に対し、日本の若者は『体型をそこまで露骨に出したくない』という意識が根強く、購入して何度も着るまでには至りませんでした。一方、それまでの日本の伝統的な制服にはなかった鮮やかなイエローや主張の強いブラウン系など、全体のシルエットやカラー面では、トレンドとして影響を受けました」
――近年の制服トレンドを教えて下さい。
「ここ数年は、平成レトロブームにより、ルーズソックスや合皮のスクールバッグ、ベージュのカーディガンなどが、一周回って『エモい価値』として受け入れられています。また、ここ2年ほどは『エンジ色のカーディガン』に人気が集中しています。大きめのカーディガンをダボッと羽織り、スカートの丈を調整し、足元にルーズソックスを合わせるのが、最新トレンドです」
――大人向けに提案された「チェック柄のロングスカート」の反響はいかがですか?
「私服として完全に成立し、狙い通り大人の方が購入されています。学生服と同じクオリティの生地を使っているためプリーツの保持性が圧倒的に高く、洗濯機で丸洗いしても型崩れしません。学校指定にはない明るいカラーも多いため、制服感を一切出さずに、質の良い普段着として使っていただけます」
――世代間の制服に対するギャップや風潮の変化について、今後はどのように変わっていくと思います?
「私自身も40代ですが、Z世代が違和感なく制服をファッションとして着こなしている姿には、時代の変化を強く感じます。その楽しそうな姿に影響されて、大人世代が持つ卒業後の制服着用へのネガティブな意識も薄れてきているように感じます。将来的に、制服の持つ価値がもっと自由に定着していけばいいなと思っています。学生服は3年間毎日激しく動いても傷まないよう、一般のアパレル製品に比べて耐久性や縫製技術が格段に優れています。今後はその最大の強みを活かし、『学校へ着ていく服』にとどまらず、中高生はもちろん、幅広い世代に私服や一般アパレルとしても長く愛用してもらえる上質な服を提案していきたいです」
2026/07/09