オリコンニュース

【インタビュー】林部智史、原点のカバーに再び向き合う 『カタリベ』シリーズ新作に託した思い

 テレビ番組『THEカラオケ★バトル』への出演をきっかけに、“泣き歌の貴公子”としてその名を馳せてきた林部智史。デビュー8周年を迎えた今年は「∞(無限・無限大)」をテーマに活動し、「無限の可能性を探るために、自分の原点であるカバーに再び向き合いたい」という思いから、生誕年である1988年以降の楽曲12曲を集めたカバーアルバム『カタリベ2』を6月5日に発売。10月23日には1988年以前の楽曲をカバーした『カタリベ 〜愛のエクラン〜』を連続リリースした。3枚目のカバーアルバムとなる本作に託した思いや、タイトルにナンバリングがない理由など、制作秘話を聞いた。

“泣き歌の貴公子”の異名を持つ林部智史

“泣き歌の貴公子”の異名を持つ林部智史

写真ページを見る

この記事の写真はこちら(全2枚)


■ゼロベースで、一歌い手として向き合った12曲

“語り継ぐ人”を意味する“語り部”の名を冠したカバーアルバム『カタリベ』。2018年に発表した『カタリベ1』では、アマチュア時代にライブで披露していた楽曲やデビューのきっかけとなった『THEカラオケ★バトル』で歌唱した楽曲の中から“泣ける”カバーソング12曲を収録。今年6年ぶりにリリースした『カタリベ2』では、自身の生誕年である1988年以降の楽曲で、アマチュア時代から聴き、歌い、影響を受けてきた12曲をセレクトして発表した。

 そして、『2』のリリースから約半年、今回は、1988年以前の楽曲12曲をカバーした『カタリベ 〜愛のエクラン〜』をリリース。『カタリベ3』とはせず、副題をつけた背景には、本作に込めたこんな思いがあった。

「僕が生まれる前の、僕が知らない世代の楽曲をカバーするということで、1と2とは違うニュアンスにしたいと思ったことがきっかけでした。3とナンバリングしてしまうと、これまでと同じような楽曲が入っているのかなと思われてしまうかもしれません。そうではなく、今回はこれまでとは違って、どの曲も僕との直接の接点が少ない楽曲ばかりなので、1と2とは差をつけて、特別感を出したいと考えました」

 1と2との差は、制作過程においても表れている。これまでカバーアルバムの収録曲は林部自身が選んできたが、今回は、選曲に一切タッチしなかったというのだ。

「僕が生まれる前の時代の歌でも、絞り出せば12曲は知っている歌をあげられると思います。でも、そうしたくはありませんでした。デビューから8年、“無限の可能性を探る”ことをテーマとしている今、自分の年齢、そして今の自分の立ち位置で、もう一度、ゼロベースに戻って、一歌い手として楽曲に向き合い、どれだけ形にできるか。それを自分とは接点が少ない楽曲で試みたいと考えました」

 収録の12曲はどれも「女性の繊細な恋心」を歌ったものだが、それもこの試みの要素のひとつだった。

「僕は生物学的に男性ですし、そういったところでの共通点も極力なくして、本当にゼロベースで、歌い手として歌に向き合いたいと思い、あえて女性歌を選んでもらいました」

■歌が生まれた時代と原曲の雰囲気を壊さず、どれだけ自分の立ち位置で歌えるか

林部智史『カタリベ 〜愛のエクラン〜』

林部智史『カタリベ 〜愛のエクラン〜』

写真ページを見る

 指定された12曲の中には「初めて聴く曲も多かった」という林部。オリジナルを聞いたときの印象をこう語る。

「今は使われなくなった言葉だったり、情緒ある言葉がたくさん使われていることに感銘を受けました。また、今とは違う恋愛観、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという男女のあり方が、より色濃く表れた楽曲が多いと感じました。洋楽のサウンドを取り入れた個性的なメロディーも多く印象的ですが、やはり日本語の使い方というのがこの時代の歌謡曲の真骨頂なのではないかなと感じています」

 そんな時代の「女性歌」を歌うにあたり、心がけたのは「第三者と主人公の真ん中の立ち位置で歌うこと」だったという。

「女性の歌を歌うということで、声の響きや歌い方は硬くなりすぎないようにしながらも、歌い手として歌への気持ちは込めるけれど、主人公としての心は込めないことを心がけました。心を込めるのは男性である僕には難しいですし、主人公になり切って歌ってしまうと、逆に聞いている方が歌の世界に入ってこられなくなることにつながると思うんです。今回は、この時代に生きた、特に女性の方々に、どなたかに思いを寄せた美しいあの頃に思いを馳せていただければという気持ちを一番大切にしていますので」

 その思いは音作りにも表れている。

「同じ時代に聴いてこられた方々に伝わらなかったら意味のないものになってしまうと思ったので、イントロを聴いた瞬間、『あの歌だ!』と思えたり、当時の方々が耳に残っていたりするであろうサウンドやその時代の風情が感じられる響きは変えずに再現することにこだわりました。ただ、レコーディングの技術が変わった今、当時の音をそのまま再現することは実はすごく難しくて、原曲に入っているこの音を入れたいけれど、今の技術ではその音が表現できないという歯がゆさもいっぱいありました」

 また、いつもどおり、レコーディングは一発録りだったものの、そこに至るまでの事前準備にはかなりの時間を要したという。

因幡晃さんの『忍冬(すいかずら)』は、なんと読むのか、タイトルの言葉すら知らなかったので、意味を調べることからスタートしたのですが、知らない歌が多かった分、聴きこむ時間はもちろん、その曲が生まれた年代に他にどんな歌が流行したのかとか、どんな事件が起きたのかとか、時代背景も知識として得ながら歌を完成させるためにかなりの時間をかけました。また、たとえば南こうせつさんの『夢一夜』は、僕にとってキーを上げると優しく歌えるのですが、こうせつさんの歌という印象が非常に強い分、その印象を大切にするためにも、原曲のキーでいきたいと考えました。当時の世界観と原曲を壊さずに、そのうえでどのくらい僕らしい位置で歌えるのか。1曲1曲、キーの設定、声の出し方、自分の立ち位置にはかなり苦心しました」

■歌い手として進化が問われた1枚に

 レコーディングを終え、「時代的に触れてきていない楽曲たちを歌ったことで、本当に勉強になったし、課題として、今の年齢、今の自分の立ち位置で、どれくらい挑戦できるのかが問われた1枚だったと思う」と振り返る林部だが、本アルバムの制作は、オリジナル楽曲への意欲にもつながっている様子。

「歌を通じて時代をさかのぼり、そこから感じたことをもとに今度は自分の言葉で歌を紡いでみたいと思うようになり、そこから新たなオリジナル楽曲も生まれました。そんなふうに、カバーを歌うことは僕の音楽活動にも生きていると思います」

 林部は『THEカラオケ★バトル』への出演を機に、“泣ける”カバー曲で一躍人気を得たため、デビュー当初は“カバーの人”や“カラオケの人”と形容されることが多かった。しかしその一方で、現状の立ち位置に留まらないためにと、オリジナル楽曲も意欲的に制作。さらに、コンサート活動をメインに日本の抒情歌も大切に歌い継ぎ、8年間、着実に歌い手としての存在感を高めてきた。今回のカバーアルバムを通して、歌い手として原点回帰した今、今後の展望をこう語る。

「原点回帰すると言いつつ、今回のアルバムでは、新たな挑戦ができました。この経験を通して、今、僕がやるべきなのは“やったことのない何か”を探すのではなく、“やってきた何かから違う方向へ行けるもの”を探すことなのではないかと考えるようになりました。今まで自分の中に培ってきたものの中から可能性を探り、それによってまた新しい扉を開く。それもありなのではないかと思いましたので、これからも、新たな方向性を探っていくことは忘れないようにしたいと思います」

 林部がどんな新しい扉を開いたのか。『カタリベ 〜愛のエクラン〜』でぜひ、その無限の可能性を確かめてほしい。

■リリース情報
林部智史『カタリベ 〜愛のエクラン〜』
発売日:2024年10月23日
品番:AVCD-63655/価格:3,400円(税込)

■収録曲
01. どうぞこのまま(丸山圭子/1976年)
02. 夢一夜(南こうせつ/1978年)
03. 花水仙(八代亜紀/1976年)
04. 愛のくらし(加藤登紀子/1971年)
05. 秋冬(中山丈二/1980年、高田みづえ/1984年)
06. 忍冬(因幡晃/1985年)
07. よろしかったら(梓みちよ/1979年)
08. 難破船(加藤登紀子/1984 年、中森明菜/1987年)
09. つぐない(テレサ・テン/1984年)
10. アドロ(アルマンド・マンサネーロ/1967年、グラシェラ・スサーナ/1971年)
11. 少しは私に愛を下さい(小椋佳/1974年)
12. 合鍵(しばたはつみ/1974年)
※カッコ内はオリジナルアーティスト/発表年(後発曲も一般的な場合は併せて表記)

■林部智史オフィシャルサイト:https://hayashibe-satoshi.com/

関連写真

  • “泣き歌の貴公子”の異名を持つ林部智史
  • 林部智史『カタリベ 〜愛のエクラン〜』

オリコントピックス

求人特集

求人検索

メニューを閉じる

 を検索