香港の100万ドルの夜景を飾っていたネオン看板が2010年の建築法等の改正以来、ほとんどのネオンが違法とされ、特にこの数年で9割ものネオン看板が撤去されている。そんな以前と変わってしまった香港を背景に描いた映画『燈火(ネオン)は消えず』(2022年)が、東京のBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿ほかでされている。9割が姿を消した名物ネオンの再現に胸熱くなる本作のキャッチフレーズは「香港。私は忘れない。」。映画ファンにとってかけがえのない場所、「香港」への愛に満ちた作品だ。
『過ぎゆく時の中で』(1989年)や『呉清源〜極みの棋譜』(2006年)のシルヴィア・チャンと、ジョニー・トー作品や『イップ・マン 序章』(08年)のサイモン・ヤムが夫婦役を演じ、『返校言葉が消えた日』(21年)で人気スターとなったセシリア・チョイが娘役、本作で香港電影金像奨新人賞にノミネートされたヘニック・チャウが物語の鍵になる青年を演じた。中華圏を代表する映画賞・金馬奨で、シルヴィア・チャンが主演女優賞に輝き、「第96回アカデミー賞」国際長編映画賞の対象となる香港代表作品にも選出された。
映画は、ネオンサイン職人だった夫の死後、妻は夫がやり残した最後のネオンを完成させようと決意するが、思いもよらぬ展開になり…という物語。香港といえば100万ドルの夜景に煌めくネオンサインを思い浮かべる人は多いが、建築法等の改正以来、2020年までに9割ものネオンサインが姿を消している。そのため本作は、すでに撤去された数々の香港名物だったネオンを再現しているのも大きな見どころだ。
過去の記録映像を使用したり、CGを使ってネオンを再現したり、さらにはネオン指導の職人が新たに作り直したり。今はほとんどが消えたネイザンロードのネオンや2016年に水没したJUMBOのネオンを見るだけで香港好きなら胸が熱くなるはず。
本作で昔気質のネオンサイン職人だった夫(サイモン・ヤム)の死後、夫がやり残した最後のネオンを完成させようと決意する妻メイヒョンを演じたシルヴィア・チャンは、中華圏のアカデミー賞と呼ばれる「金馬奨」で、自身3度目の主演女優賞を獲得。昨年12月には「第60回金馬奨」で『PERFECT DAYS』の役所広司とともにプレゼンターも務めた。
このほど解禁となったインタビュー動画では、「主人公は私じゃない ネオンね」と語るシルヴィア・チャンの言葉が印象的。彼女は台湾生まれだが、チョウ・ユンファと共演した『過ぎゆく時の中で』はじめ、数々の香港映画に出演してきた彼女自身の香港のネオンへの想い入れも強い。
また、劇中に登場するネオン管づくりのシーンの裏話も披露。実際にネオン管の曲げ方を習い、自身でU字管を作り、スタッフに喝采を浴びたという。
シルヴィア・チャンは名優としてだけでなく、名監督としても知られる映画人。1995年に監督デビューするとアジア太平洋映画祭最優秀作品賞・最優秀脚本をダブル受賞、アジア映画界の女性監督の先駆け的な存在でもある。そんな大先輩について、本作のアナスタシア・ツァン監督は、「“チャンお姉さん”にインスパイアされたことは、もうキリがないくらい」と讃える。
数々のエピソードから一つ紹介すると、たとえばシルヴィア演じるメイヒョンが亡くなった夫の洋服など残されたものを片付ける場面。監督は「撮影現場のビルで内装工事をやっていて、雑音が入ってしまい、私はイライラしていました。するとチャンお姉さんが、『大丈夫。この方がかえっていいわ』と。『この役の人物は今、何かにイライラしていて怒りっぽくなっている。むしろこういう雑音があった方が彼女の心情にぴったりじゃない?』。それで『あ、本当だ』と気づいたんです」と話す。名優にして名監督だからこその器と視野、瞬発力を感じるエピソードだ。シルヴィア・チャンの存在が、この映画を支えているのは間違いない。
映画の中に記録された在りし日の香港のネオンの輝きと共に、シルヴィア・チャンの名演も味わってほしい。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
映画『燈火(ネオン)は消えず』東京のBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿ほか全国順次公開 (C)A Light Never Goes Out Limited. All Rights Reserved.
過去の記録映像を使用したり、CGを使ってネオンを再現したり、さらにはネオン指導の職人が新たに作り直したり。今はほとんどが消えたネイザンロードのネオンや2016年に水没したJUMBOのネオンを見るだけで香港好きなら胸が熱くなるはず。
本作で昔気質のネオンサイン職人だった夫(サイモン・ヤム)の死後、夫がやり残した最後のネオンを完成させようと決意する妻メイヒョンを演じたシルヴィア・チャンは、中華圏のアカデミー賞と呼ばれる「金馬奨」で、自身3度目の主演女優賞を獲得。昨年12月には「第60回金馬奨」で『PERFECT DAYS』の役所広司とともにプレゼンターも務めた。
このほど解禁となったインタビュー動画では、「主人公は私じゃない ネオンね」と語るシルヴィア・チャンの言葉が印象的。彼女は台湾生まれだが、チョウ・ユンファと共演した『過ぎゆく時の中で』はじめ、数々の香港映画に出演してきた彼女自身の香港のネオンへの想い入れも強い。
また、劇中に登場するネオン管づくりのシーンの裏話も披露。実際にネオン管の曲げ方を習い、自身でU字管を作り、スタッフに喝采を浴びたという。
シルヴィア・チャンは名優としてだけでなく、名監督としても知られる映画人。1995年に監督デビューするとアジア太平洋映画祭最優秀作品賞・最優秀脚本をダブル受賞、アジア映画界の女性監督の先駆け的な存在でもある。そんな大先輩について、本作のアナスタシア・ツァン監督は、「“チャンお姉さん”にインスパイアされたことは、もうキリがないくらい」と讃える。
数々のエピソードから一つ紹介すると、たとえばシルヴィア演じるメイヒョンが亡くなった夫の洋服など残されたものを片付ける場面。監督は「撮影現場のビルで内装工事をやっていて、雑音が入ってしまい、私はイライラしていました。するとチャンお姉さんが、『大丈夫。この方がかえっていいわ』と。『この役の人物は今、何かにイライラしていて怒りっぽくなっている。むしろこういう雑音があった方が彼女の心情にぴったりじゃない?』。それで『あ、本当だ』と気づいたんです」と話す。名優にして名監督だからこその器と視野、瞬発力を感じるエピソードだ。シルヴィア・チャンの存在が、この映画を支えているのは間違いない。
映画の中に記録された在りし日の香港のネオンの輝きと共に、シルヴィア・チャンの名演も味わってほしい。
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2024/01/13