• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • 「歯医者に犬!?」治療嫌がる子どもと親から反響、「危険はない? 衛生面は?」数々の問題クリアし認められた20年
ORICON NEWS

「歯医者に犬!?」治療嫌がる子どもと親から反響、「危険はない? 衛生面は?」数々の問題クリアし認められた20年

 歯医者が嫌いな子どもは多く、治療や検診に通わせるのに苦労している親も多いだろう。そんな中、「子どもが喜んで通う」「なかなか帰らない」ほど人気の歯医者が、茨城県に実在した。数少ない小児歯科であり、なんと犬が子どもたちをサポートするという。子どもが犬を抱えた状態で歯の治療を受ける…となると、「危険では?」「衛生的にどうなの?」という声も確かにあった。実際、どのような診療が行われているのか。パレットデンタルクリニック・鈴木伸江先生に聞いた。

歯の治療をする子どもに犬が寄り添う!?(写真:『犬のまほうのはいしゃさん』より)

歯の治療をする子どもに犬が寄り添う!?(写真:『犬のまほうのはいしゃさん』より)

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


■歯医者嫌いの子どもたち、ケアできる小児歯科に通わせたくとも数少なく

――鈴木先生は20年前に犬のいる小児歯科を始めたとのことですが、当時はどんな状況だったのですか?

【鈴木先生】定期健診なども多くなった現在と違い、当時はやはり「歯が痛くなったらくる」という人がメインでした。とくに子どもは嫌がる子が多く、なんとか治療に来ても我慢ばかり。小児歯科医としては、歯医者さんってそんなに嫌なところじゃないよ、と思いながら治療していました。

――実際、今も歯医者さんが嫌いな子どもは多いですよね。

【鈴木先生】そうですね。小児歯科医は子どもの心理についても勉強して、歯科治療に対してのマイナスのイメージを抱かない工夫をしますが、一般歯科の先生方は大人の治療で大変ですから仕方ないかもしれません。それであれば、できることなら小児歯科医に通わせたいと思うかもしれませんが、専門医が少ないのが現状です。

――親御さんにとっては小児歯科というだけでもありがたいのに、先生のクリニックには犬がいて、お子さんたちが喜んで通っていると。

【鈴木先生】半分遊びに来ているような感じです(笑)。治療前は待合室で犬が子どもたちの対応をしてくれますし、診療室ではユニット(診療用チェア)に上がって、ずっと応援してくれる。治療が終わったあとも犬と遊んで、なかなか帰らない子がいるくらいです。今では5頭の犬たちが当番制で担当しています。

鈴木伸江先生と“ちにた”(写真:『犬のまほうのはいしゃさん』より)

鈴木伸江先生と“ちにた”(写真:『犬のまほうのはいしゃさん』より)

写真ページを見る

――治療のときに犬がそばにいると、危ないのではないかという気もしますが。

【鈴木先生】犬はほぼ動きませし、これまで子どもを咬んだり傷つけたことは、一度もありません。犬たちは子どもの上にうつ伏せや仰向けの姿勢で乗ったり、お股の間に入ったり。犬の温かさを感じるだけで、子どもたちは安心して治療に臨めるようですね。

――たしかに、大人でも安心しそうです。

【鈴木先生】しかも面白いもので、犬は本当に治療が怖い子には寄り添うのですが、単にわがままで嫌がる子には寄り添わないんです(笑)。そうした見抜く力があるから、こちらが教えられることもあります。あと、セラピー犬(病院や老人ホームなどで人間を癒す犬)でもあるせいか、障害のあるお子さんのことはすぐわかるよう。こちらが気づく前に、車までお迎えに行ったりするんですよ。

■きっかけはセラピー犬との出会い、歯科特有の強いにおいや音もなんのその

――そもそも犬を導入したのは、どんなことがきっかけだったんですか?

【鈴木先生】私がもともと犬を飼っていたのですが、その流れでセラピー犬のことを知り、飼い主さんと出会ったんです。当時、子どもたちを笑顔にするには? 犬を治療室に入れるのはどうかな?と考えていて、相談したところ快く協力ししてくださいました。

――それが、初代のフローラという犬ですね。

【鈴木先生】はい。とはいえ、歯科では強いにおいのある薬剤を使うし、歯を削るキーンという音もする。犬には耐えられないのではないかと思ったのですが、まずはお試しとしてフローラに短時間来てもらいました。そうすると、薬にも音にも反応しない。事情をご理解いただいた親御さんも、お子さんもすごく喜んでくれました。

――まさに、子どもたちが笑顔になった。

【鈴木先生】そうですね。フローラだけでは寂しいと思い、もう1頭、救助犬として訓練されたミニチュアダックスのジュンにも入ってもらいました。フローラはゴールデンレトリバーで大型なので待合室で、ジュンは小型犬なので子どもたちが抱きかかえる形に。ジュンの飼い主は看護師さんでもあったので、みなさん安心されていました。

『犬のまほうのはいしゃさん』(ポプラ社)

『犬のまほうのはいしゃさん』(ポプラ社)

写真ページを見る

――順調にスタートできたのですね。でも20年前というとセラピー犬なども知られていなかったですし、広く理解を得るには苦労されたのでは?

【鈴木先生】とくに茨城の郊外では、「犬は外で飼うもの」と考える方も多かったですしね。実際、歯科医師会からは「犬なんか入れて汚いんじゃないか」というお声もありました。その後、保健所からも見学に来たいと連絡があったのですが…。

――やはりそうしたこともあったんですね。

【鈴木先生】ただ私は愛玩動物飼養管理士1級を取っていましたし、フローラやジュンの飼い主さんも資格を持っていらっしゃいます。クリニックに来る日は、犬のシャンプーや爪切り、ハブラシ、コーミングを行い、事前に排泄してしっかりきれいにしているので、保健所からは「問題ない」との回答をいただきました。

――患者さんたちはいかがでしたか?

【鈴木先生】最初は怖がった子もいたのですが、帰る頃には犬と一緒に遊んでいますね。年配の方の中には「犬がいるの!?」と驚く方もいるのですが、実際触れあうと「可愛いものだな」と言ってくださいます。大人の男性の方で、歯医者さんが怖くて続かなかったけれど、「ここでなら頑張れる」という方もいました。大人の方でも本音で相談してくだされば、犬が寄り添う治療はできます。

――なるほど。

【鈴木先生】ただ、管理士の試験のときに、「世の中の1/3は犬や猫を嫌いな人がいる」と教わっていますし、その点は気をつけています。犬が嫌いな方やアレルギーの方もいるので、事前にお伝えしていますね。

■犬がいる歯科医は今後も増える?「犬の福祉への知識があってこそ実現できる治療」

――今年、先生のクリニックで働く犬“ちにた”の視点で描かれた児童書『いぬのまほうのはいしゃさん』(ポプラ社)を発表されました。反響はいかがですか?

【鈴木先生】読者の方からお便りをたくさんいただいて、とても嬉しいです。取材や講演の依頼をいただくこともあります。

――20年続けてこられた手ごたえは感じていますか?

【鈴木先生】20年も経つと、子どもの頃に犬と治療していた子がお母さんになって、娘をまた連れてきてくれたこともありました。娘さんは少し怖がっていたのですが、「お母さんも昔やったんだよ」と聞いて、安心して治療を受けてくれましたね。ほかにも、子どもたちから「ありがとう!」と犬のイラストが送られてきたり。すごく嬉しいですね。

――これだけ反響があるとなると、今後“犬のいる歯医者さん”は増えていくのでしょうか?

【鈴木先生】以前、学会でも他の歯科医の先生から「どうやったらできるの?」「誰に頼めばいいの?」という質問が来ました。でも、ただ「来てほしい」というものではなく、私も管理士の資格を取ったり、犬のうんち拾いのボランティア活動をしていく中で、セラピー犬の飼い主さんと出会い、協力いただいた経緯があります。単に「1時間いくらで来て」といったことではなく、人と人との繋がり、犬の福祉への知識があってこそ実現できる治療です。

――たしかに、子どもも犬も安心して治療に臨めるような理解や知識は必要ですよね。では最後に、先生から何か、読者に伝えておきたいことは?

【鈴木先生】『犬のまほうのはいしゃさん』のほかにも、『おばあちゃん先生とくろワンコのはいしゃさん1』(自費出版)という本も出していまして。歯科心身学会の会員でもあるので、子どもの口の中の症状と心の問題がわかるような内容なので、こちらもご覧いただけたら嬉しいですね。小児歯科医としては、小さな虫歯のうちに治療を受け、その後は虫歯を作らないように予防で通っていただくのが良いですとお伝えしたいです。子どもたちも、早めに歯医者さんに行けば怖くないし、歯医者さんって楽しいところなんだよと思ってもらえたらうれしいですね。

関連写真

  • 歯の治療をする子どもに犬が寄り添う!?(写真:『犬のまほうのはいしゃさん』より)
  • 子どものお腹の上で見守る、救助犬として訓練された犬ジュン(写真:『犬のまほうのはいしゃさん』より)
  • 鈴木伸江先生と“ちにた”(写真:『犬のまほうのはいしゃさん』より)
  • 『犬のまほうのはいしゃさん』(ポプラ社)

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

>

 を検索