• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
オリコンニュース

『M-1』成功の秘訣は“ガチンコ”にあり “生みの親”が語る紳助さんの慧眼と敗者復活の意義

 今年もこの季節がやってきた。漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2023』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の敗者復活戦・決勝戦が、24日に行われる。お笑いファンはもちろん、世間的な関心も年々高くなっている“賞レース”で、19回目となる今年は過去最多の8540組がエントリーした。今や当たり前の存在となっている『M-1』だが、そもそもどういった経緯で立ち上がったのだろう。『M-1』の立ち上げ人で、このほど『M-1はじめました。』(東洋経済新報社)を出版した谷良一氏に話を聞いた。

谷良一氏 (C)ORICON NewS inc.

谷良一氏 (C)ORICON NewS inc.

写真ページを見る

この記事の写真はこちら(全3枚)


■低迷していた漫才を救え! 他事務所の芸人たちを突き動かした優勝賞金1000万円のインパクト

 今では考えられないが、2001年当時、漫才は低迷していた。1981年に吉本興業に入社して20年が経った当時、谷氏に言い渡されたのが“漫才再建プロジェクト”だった。4月に本格始動すると、まずはベテランから若手まで“漫才師”たちの話を聞いていった。熱意を感じ取り、再建策を思案している中、テレビ局を訪れたある日、かつてチーフマネージャーを務めていた島田紳助さんの楽屋を見つけ、漫才プロジェクトについて話をしてみた。すると、紳助さんは「若手の漫才コンテストをやったらどうや?」と提案。3日後、再び紳助さんのもとを訪れると「優勝賞金を1000万円にしよう!」「漫才のガチンコ勝負、K-1のようなガチンコの大会にするんや」との言葉が飛び出した。そう、この瞬間に『M-1』が産声をあげたのだ。

 吉本が主催する漫才コンテストということもあり、他事務所からは「自分たちは噛ませ犬になるのでは」と“出来レース”を疑われることもあったが、1000万円というインパクト大の“魔力”が芸人たちの心を突き動かした。他事務所への説明にもあたった谷氏がなつかしむ。「1000万円という金額を思いつく、紳助さんはやっぱりすごいです。人間の本能を突いているなと感じました。今の『M-1』を見ていたらそんなことはないとわかってもらえると思いますが、立ち上がった当時の状況を考えれば、他事務所の人たちからすれば『優勝は(吉本の芸人で)決まっているんじゃないの?』と思われるのも無理はないなと感じていました」。それでも、初回には1603組のエントリーがあった。

 「所属芸人を守るために事務所が止める…ということも考えられたのですが、漫才師たちは『いや、1000万取りに行く』と決意してくれた。そのおかげで、エントリーがいっぱいあったので、紳助さんが本質を突いたアイデアを出してくれたおかげだと感謝しています。それから実際に予選が始まっていくのですが、あくまでその日の漫才の出来にこだわって審査しているので、吉本興業の実績ある漫才師も当然ながら落ちていきました。その辺りから、芸人さんたちの中でも『これは、本当にマジなガチンコのコンテストかもしれない』ということを信じてもらえたような雰囲気がありました」

 今回の書籍では、紳助さんが「谷と作ったM-1」と題して“異例の寄稿”をしているが、それも『M-1』そして谷氏への思いの深さゆえ。谷氏も感謝を伝える。「びっくりしました。引退してから、表立ってこういったことを一切されていなかったので、まさか書いてくれるとは…というのはありました。『M-1』への思い入れがそこまであったんやなっていうのは、とてもうれしかったです。『M-1』について『自分だけが脚光を浴びているのは違う。これは谷と一緒に作ったもんや』ということをずっと思ってくださっていて、熱い情を持っている方だなと改めて感じました」。

『M-1はじめました。』(東洋経済新報社)

『M-1はじめました。』(東洋経済新報社)

写真ページを見る

■“公開審査”で伝わったガチンコ勝負 松本人志の“審査のブレなさ”に賛辞

 漫才プロジェクトが結実し、2001年12月に第1回目となる『M-1グランプリ』が開催された。ファイナリストは中川家、ハリガネロック、アメリカザリガニ、ますだおかだ、麒麟、フットボールアワー、キングコング、チュートリアル、DonDokoDon、おぎやはぎで、審査員は西川きよし、青島幸男さん、春風亭小朝ラサール石井鴻上尚史、松本人志、そして紳助さんが務めた。今では、おおよそ90点を前後する形で採点が行われているが、初回は松本と紳助さんが最低得点に50点をつける一方、西川は最高点に95点をつけるなど、審査員たちの間でもジャッジが揺らいだ。書籍では、初回の“ヒリヒリ感”が伝わってくる描写が登場するが、谷氏は「1年目なので、審査員のみなさんもどうつけていいかわからなかったのではないかなと思います。さらに、初見で、点数をつけるわけですし、戸惑いもあったと思います」と振り返りながら、ここに成功の要因があったと語る。

 「やっぱり漫才が面白いんだということを、世間のみなさんがわかってくれた、知ってくれたっていうことが大きいと思います。それに『M-1』が貢献したっていうのはやっぱりガチで、ガチンコ勝負をしたことですね。審査員がつけた点数を公衆の前で明らかにしないといけないというのも大きかった。それまでの賞レースでは、密室で決められて結果だけを発表するという形が通例でした。『M-1』では、審査の過程をその場で見ることができる。それゆえに、審査員も下手な点数のつけ方とか、いい加減な点数つけていたら、視聴者なり漫才師から馬鹿にされる、そういうけっこうつらい立場なんですよね。ただ、その立場をみなさんが受け入れてくれたおかげで、ガチンコ勝負やっていることをわかってもらえて、『M-1』をガチンコの賞レースとして見てもらえるようになったのかなと考えています」

 現在の審査員の中で、初回の『M-1』を知るのは松本のみとなったが、谷氏は「松本くんは『M-1』の“おもし”のような存在になってくれています」と賛辞を送る。「初回の審査員の中で、松本くんは最年少なのですが、とにかくブレがなかったのを覚えています。点数をつけるのもそうですし、批評もきちっと自分の意見を言いますよね。最近は、審査員のみなさんも意見を言うようになりましたが、これがけっこう難しいことで、最初の頃はなかなか受け入れられなかった。そんな中にあっても、松本くんは自分の基準をしっかりと持っていて、それが今でも変わっていないと思います」。

谷良一氏が保管していた『M-1グランプリ』第1回&第2回の台本 (C)ORICON NewS inc.

谷良一氏が保管していた『M-1グランプリ』第1回&第2回の台本 (C)ORICON NewS inc.

写真ページを見る

■“生みの親”が考える敗者復活枠 人気投票でもOKの理由「人気も実力のうち」

 今年の『M-1』では、敗者復活戦のあり方が大きく変わる。準決勝での順位をもとにA・B・Cの3ブロック制で行われる。審査手順は、各ブロックの7組が4分間の漫才を披露。1組目VS2組目、その勝者VS3組目…といったように、どちらが面白かったかを会場にいる観客からランダムに選ばれた審査員がネタ終了後に投票を行う。最終7組目までサバイバル方式で競い、勝ち残った1組がブロックの勝者となり、『M-1グランプリ』を知り尽くした芸人審査員が、各ブロックの勝者3組から一番面白いと思った組に投票し、得票数が多かった組が決勝へと進出する。

 『M-1はじめました。』には、谷氏が敗者復活戦を提案したという記述が登場する。“生みの親”である谷氏にとって、敗者復活の意義はどこにあるのだろう。「その日の出来だけで、ガチンコで選ぶのが『M-1』だけど、それだけだと見落としがあるかもしれない。あと『人気も実力のうち』という言葉があるように、人気があるっていうことはいいことやし、極論すれば、芸人のそもそもの存在意味は『人気があるかないか』だとも思っています。だから、個人的には人気のある漫才師を出してもいいんじゃないかっていうのはあって、人気投票という側面も取り入れて敗者復活の枠を作ったという経緯がありました。やっぱり選ばれてくるということは、人気だけでなく実力もあるということなのではないかなと、個人的には考えています。ただ、大事なのは本選できちんと上がってきたファイナリストと敗者復活枠を同じ扱いにしないことだと思って、待遇に絶対的な差をつけました。敗者復活の人たちには、敗者復活戦の休憩部屋もないし、野外でやりますといった面ですね」。

 19回目にして、新たなステージを迎えそうな『M-1』。谷氏の目にはどう映っているのか。「やっぱり『面白いものは勝つ』というのは受け継がれていますよね。今年に関して言えば、敗者復活の仕組みがどうなって、どういう結果をもたらすのかなと。あとは初決勝進出が5組いるんですよね。これは興味深いですよね。毎年、レベルが積み上がっていって、今の『M-1』があって、どんどん新しい漫才が出てくるので、今年もどんな漫才が見られるのか楽しみにしています」。

関連写真

  • 谷良一氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 『M-1はじめました。』(東洋経済新報社)
  • 谷良一氏が保管していた『M-1グランプリ』第1回&第2回の台本 (C)ORICON NewS inc.

求人特集

求人検索

 を検索