動画配信サービス「DMM TV」が、在阪テレビ局のカンテレと1年間4本のドラマを共同製作し、カンテレの地上波放送と「DMM TV」での独占配信を行うことが発表された。松村沙友理・竹財輝之助/岡本玲・桐山漣(※“漣”は正式にはさんずい+一点しんにょうの“連”)/北乃きい・平岡祐太が主演を務め、来年1月18日から放送・配信される第1弾『極限夫婦』(原作:きづきあきら+サトウナンキ/双葉社・アクションコミックス)は、妻から夫への痛快な“復讐劇”。朝日放送(ABCテレビ)に続き、ローカル局との協業に注力するDMM TVのオリジナルコンテンツ制作責任者・久保田哲史氏と、今回の共同製作ドラマのエグゼクティブプロデューサーを務める吉條英希氏(カンテレ コンテンツビジネス局専門局長)が、本タッグの狙いについて語った。
――今年4月の朝日放送とのドラマ共同企画プロジェクトに続き、在阪テレビ局であるカンテレとの協業も発表されました。
久保田:弊社にとって、地上波テレビ局さんと組むのはメリットだらけなんです。まずは認知。カンテレさんと言えば、数々の名作ドラマを世に送り出しているというブランド力もあります。定額制動画配信サービス(SVOD)を行なっている会社にとって、発信力というのは非常に重要。外資系の配信サービスのように、とんでもないPR予算がある会社さんは別ですが、なかなかそうもいかない会社にとって、地上波と共に認知度を上げるというのは、非常に重要なんです。
もう一つ、私はオリジナルコンテンツを作る担当部署にいますが、定期的にドラマを作り続けるというのはかなりのパワーがいる。そこにドラマ作りで高い実績があるカンテレさんのドラマを独占で配信できるというのは、本当に心から望んでいたことです。
――カンテレさんはフジテレビ系月10で、数々の話題作を世に送り出すなど、大きなブランド力もあり、他の動画配信サービスなどにもコンテンツを提供していますが、今回DMM TVさんとこうした試みをするうえで、どんなところに期待しているのですか?
吉條:実はうちもずっとDMMさんにはラブコールを送っていたんです。地上波と言っても弊社はローカル局であり、テレビドラマを作る機会というのはどんどん減ってきている。一方、ドラマを作りたいという熱量は社内に溢れているという意味で、今回の話はこんな幸せはないという思いです。これまで培ってきた人材をフル活用できる。
あともう一つ、キー局さんと違って、なかなか制作したものすべてが全国ネットになるというのは難しい。それがDMM TVだったら全国の皆さんに観てもらえるじゃないですか。本当にそれはうれしい事なんです。モチベーションも上がりますね。
久保田:いまの話でいうと、やはりカンテレさんって『大豆田とわ子と三人の元夫』や『エルピス-希望、あるいは災い-』など、他の地上波ドラマとは違った視点の良作が多い。実はサブスクで観てもらえる作品との親和性も高いと感じています。
――企画という部分で地上波のドラマを制作する部分と違うなと感じたところはありましたか?
吉條:各レイヤーのプロデューサー陣が密にやり取りはしていると思いますが、なにより僕らはサブスクという舞台でどんなものが受け入れられるかというのは未知の世界なので、企画会議をしている段階で「なるほど、そんな視点があるのか」という驚きは多々あります。何よりも今回1年間で4本のドラマを作ることになっていますが、すべてに共通するテーマが「復讐」なんですよね。僕らの企画会議では絶対に出てこない発想です。すごく刺激を受けています。
――DMMさんとカンテレさんの役割分担はどのようになっているのですか?
久保田:基本的に制作はカンテレさんにお願いしています。題材や原作選びという部分は、お互いにアイデアを出し合って揉んでいるという感じですかね。
――「復讐」というテーマもサブスクという仕組みには合うテーマだということですか?
久保田:デジタルでの動画配信サービスは、かなり細かなデータが出るので、そこが一つの判断基準になっているというのはあります。地上波ももちろん視聴率を取るというのは大前提ですが、視聴率はそこまで細かくデータが出ないので、思いみたいな要素が大事になってくる。そのバランスですかね。作り手の思いが詰まって、数字も取れて、話題にもなって、そしてクオリティもという。まあそんなうまくいけば苦労はしませんが、その可能性があるのはカンテレさんなのかなと。
――共同製作第一弾となる『極限夫婦」はどのように決定されたのですか?
久保田:カンテレ×DMMという取り組みですが、いくらカンテレさんの認知度が高くても、もっとリーチさせるためには、ある程度、コンテンツの話題性みたいなものは必要だと思ったんです。そこで復讐という大枠のテーマが決まり、そこから原作を探していったという感じです。
吉條:コミックサイトでランキング1位の原作だということで、作品の力もある。1発目の題材としては、とてもいいなと思いました。
――これまで地上波テレビというと指標は視聴率だと思いますが、DMMさんとご一緒することで、評価基準が変わっていくのかもしれませんね。
吉條:そうですね。DMMさんの出される数字というのはとても興味があります。それがドラマの評価を表すものになってくれば、やりがいもありますよね。もちろん、ゴールデンの最前線でやっている人間にとって、視聴率はとても大切な指標ですが、いまはTVerなどの視聴回数なども大きな話題になっていますからね。いまや配信というのも大きな仕事の柱となりつつあるので、基準は変化していくと思います。
――『極限夫婦」はカンテレさんの深夜の地上波と、DMM TVさんで配信という形になります。物語の過激さや表現の基準などは、どのようなラインで行っているのですか?
久保田:こちら側からすると、ギリギリまでチャレンジしてくださいという言い方になってしまいますね(笑)。
吉條:過激だからいいわけでもないですからね。表現の仕方を工夫することでクリアできることも多い。視覚的にグロいものなどは、どうなんだろうということにはなりますが、それを心理的に訴えかけるなどの方法もある。逆に言えば、作り手はそうした制約のなか、どこまでセンセーショナルなものを表現できるかというのは、やりがいになっていくと思います。「これは無理だよね」という既成概念を取り除いてもらえる座組になることは、いいですよね。
久保田:確かに『エルピス-希望、あるいは災い-』などは、テレビ業界としてはタブーな内容だと思うし、企画も通しづらかったと思うけれど、しっかりと放送して反響も大きかったですよね。やっぱり「カンテレさんってすげー!」って思いました。
――お話を聞いていると、非常に未来のあるタッグのように感じられます。
久保田:いまはどうか分かりませんが、地上波のビジネスモデルって最強なんですよね。その地上波モデルを守ろうという意識が強い。それがテレビマンのプライドというか。そのなかでカンテレさんの柔軟性というのは、非常に心強いですし、ご一緒できることに感謝しかないですね。
吉條:まあ僕は、コンテンツビジネスという部署にいる人間。これからテレビ局がどう生き残っていくかということを担っているので、新しいことに対して、どんどん向き合っていかなければ、仕事として成り立ちませんからね。
――いまエンタメ業界や映像業界も過渡期にいると思いますが、どんな未来になるといいなと感じていますか?
久保田:いまこれだけ多チャンネルになり、プラットフォームもたくさんあります。そのなかで、ある程度「観たい」と思えるような衝動がないと、時間を費やしてもらえないと思うんです。だからこそ、有名なキャストとか有名な作品というものに頼りがちになってしまう。もちろんそこも大切なので、「本当にいいものを作りたい」というクリエイターたちがうまくバランスをとって、良質なコンテンツを作りだしていくことが大切だと思います。
吉條:僕がテレビ局に入ったときは、地上波がめちゃくちゃ強い時代だったんです。でもいまは、DMMさんはもちろん動画配信サービスの会社に、若い人材が流出してしまっている。今後もっとテクノロジーが発展して、メディアも大きく変貌するかもしれない。
でも僕たちが考えたものを映像と音声で創り、伝えるということは、時代が変わっても何も変わらないのかなと。その意味でしっかりと地に足をつけてコンテンツを作り続け、後輩たちに受け継いでいきたいですね。制作力さえあれば、将来どんなメディアが現れても怖くないと思うんです。
(取材・文:磯部正和)
【カンテレ×DMM 年間ドラマ第1弾『極限夫婦』】
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あらゆる手段を使って経済的、社会的に夫に復讐をしていく姿はまさに爽快!
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新感覚の愛憎&復讐エンターテインメントを描く。
【放送】2024年1月18日スタート 毎週木曜深夜0時25分〜(関西ローカル)
(※初回のみ深夜0時40分〜OA)
【配信】DMM TV独占配信
【出演】松村沙友理、竹財輝之助、岡本玲、桐山漣、北乃きい、平岡祐太 ほか
(※桐山漣の“漣”は正式にはさんずい+一点しんにょうの“連”)
【原作】きづきあきら+サトウナンキ『極限夫婦』(双葉社・アクションコミックス)
――今年4月の朝日放送とのドラマ共同企画プロジェクトに続き、在阪テレビ局であるカンテレとの協業も発表されました。
久保田:弊社にとって、地上波テレビ局さんと組むのはメリットだらけなんです。まずは認知。カンテレさんと言えば、数々の名作ドラマを世に送り出しているというブランド力もあります。定額制動画配信サービス(SVOD)を行なっている会社にとって、発信力というのは非常に重要。外資系の配信サービスのように、とんでもないPR予算がある会社さんは別ですが、なかなかそうもいかない会社にとって、地上波と共に認知度を上げるというのは、非常に重要なんです。
もう一つ、私はオリジナルコンテンツを作る担当部署にいますが、定期的にドラマを作り続けるというのはかなりのパワーがいる。そこにドラマ作りで高い実績があるカンテレさんのドラマを独占で配信できるというのは、本当に心から望んでいたことです。
――カンテレさんはフジテレビ系月10で、数々の話題作を世に送り出すなど、大きなブランド力もあり、他の動画配信サービスなどにもコンテンツを提供していますが、今回DMM TVさんとこうした試みをするうえで、どんなところに期待しているのですか?
吉條:実はうちもずっとDMMさんにはラブコールを送っていたんです。地上波と言っても弊社はローカル局であり、テレビドラマを作る機会というのはどんどん減ってきている。一方、ドラマを作りたいという熱量は社内に溢れているという意味で、今回の話はこんな幸せはないという思いです。これまで培ってきた人材をフル活用できる。
あともう一つ、キー局さんと違って、なかなか制作したものすべてが全国ネットになるというのは難しい。それがDMM TVだったら全国の皆さんに観てもらえるじゃないですか。本当にそれはうれしい事なんです。モチベーションも上がりますね。
久保田:いまの話でいうと、やはりカンテレさんって『大豆田とわ子と三人の元夫』や『エルピス-希望、あるいは災い-』など、他の地上波ドラマとは違った視点の良作が多い。実はサブスクで観てもらえる作品との親和性も高いと感じています。
――企画という部分で地上波のドラマを制作する部分と違うなと感じたところはありましたか?
吉條:各レイヤーのプロデューサー陣が密にやり取りはしていると思いますが、なにより僕らはサブスクという舞台でどんなものが受け入れられるかというのは未知の世界なので、企画会議をしている段階で「なるほど、そんな視点があるのか」という驚きは多々あります。何よりも今回1年間で4本のドラマを作ることになっていますが、すべてに共通するテーマが「復讐」なんですよね。僕らの企画会議では絶対に出てこない発想です。すごく刺激を受けています。
――DMMさんとカンテレさんの役割分担はどのようになっているのですか?
久保田:基本的に制作はカンテレさんにお願いしています。題材や原作選びという部分は、お互いにアイデアを出し合って揉んでいるという感じですかね。
――「復讐」というテーマもサブスクという仕組みには合うテーマだということですか?
久保田:デジタルでの動画配信サービスは、かなり細かなデータが出るので、そこが一つの判断基準になっているというのはあります。地上波ももちろん視聴率を取るというのは大前提ですが、視聴率はそこまで細かくデータが出ないので、思いみたいな要素が大事になってくる。そのバランスですかね。作り手の思いが詰まって、数字も取れて、話題にもなって、そしてクオリティもという。まあそんなうまくいけば苦労はしませんが、その可能性があるのはカンテレさんなのかなと。
――共同製作第一弾となる『極限夫婦」はどのように決定されたのですか?
久保田:カンテレ×DMMという取り組みですが、いくらカンテレさんの認知度が高くても、もっとリーチさせるためには、ある程度、コンテンツの話題性みたいなものは必要だと思ったんです。そこで復讐という大枠のテーマが決まり、そこから原作を探していったという感じです。
吉條:コミックサイトでランキング1位の原作だということで、作品の力もある。1発目の題材としては、とてもいいなと思いました。
――これまで地上波テレビというと指標は視聴率だと思いますが、DMMさんとご一緒することで、評価基準が変わっていくのかもしれませんね。
吉條:そうですね。DMMさんの出される数字というのはとても興味があります。それがドラマの評価を表すものになってくれば、やりがいもありますよね。もちろん、ゴールデンの最前線でやっている人間にとって、視聴率はとても大切な指標ですが、いまはTVerなどの視聴回数なども大きな話題になっていますからね。いまや配信というのも大きな仕事の柱となりつつあるので、基準は変化していくと思います。
――『極限夫婦」はカンテレさんの深夜の地上波と、DMM TVさんで配信という形になります。物語の過激さや表現の基準などは、どのようなラインで行っているのですか?
久保田:こちら側からすると、ギリギリまでチャレンジしてくださいという言い方になってしまいますね(笑)。
吉條:過激だからいいわけでもないですからね。表現の仕方を工夫することでクリアできることも多い。視覚的にグロいものなどは、どうなんだろうということにはなりますが、それを心理的に訴えかけるなどの方法もある。逆に言えば、作り手はそうした制約のなか、どこまでセンセーショナルなものを表現できるかというのは、やりがいになっていくと思います。「これは無理だよね」という既成概念を取り除いてもらえる座組になることは、いいですよね。
久保田:確かに『エルピス-希望、あるいは災い-』などは、テレビ業界としてはタブーな内容だと思うし、企画も通しづらかったと思うけれど、しっかりと放送して反響も大きかったですよね。やっぱり「カンテレさんってすげー!」って思いました。
――お話を聞いていると、非常に未来のあるタッグのように感じられます。
久保田:いまはどうか分かりませんが、地上波のビジネスモデルって最強なんですよね。その地上波モデルを守ろうという意識が強い。それがテレビマンのプライドというか。そのなかでカンテレさんの柔軟性というのは、非常に心強いですし、ご一緒できることに感謝しかないですね。
吉條:まあ僕は、コンテンツビジネスという部署にいる人間。これからテレビ局がどう生き残っていくかということを担っているので、新しいことに対して、どんどん向き合っていかなければ、仕事として成り立ちませんからね。
――いまエンタメ業界や映像業界も過渡期にいると思いますが、どんな未来になるといいなと感じていますか?
久保田:いまこれだけ多チャンネルになり、プラットフォームもたくさんあります。そのなかで、ある程度「観たい」と思えるような衝動がないと、時間を費やしてもらえないと思うんです。だからこそ、有名なキャストとか有名な作品というものに頼りがちになってしまう。もちろんそこも大切なので、「本当にいいものを作りたい」というクリエイターたちがうまくバランスをとって、良質なコンテンツを作りだしていくことが大切だと思います。
吉條:僕がテレビ局に入ったときは、地上波がめちゃくちゃ強い時代だったんです。でもいまは、DMMさんはもちろん動画配信サービスの会社に、若い人材が流出してしまっている。今後もっとテクノロジーが発展して、メディアも大きく変貌するかもしれない。
でも僕たちが考えたものを映像と音声で創り、伝えるということは、時代が変わっても何も変わらないのかなと。その意味でしっかりと地に足をつけてコンテンツを作り続け、後輩たちに受け継いでいきたいですね。制作力さえあれば、将来どんなメディアが現れても怖くないと思うんです。
(取材・文:磯部正和)
【カンテレ×DMM 年間ドラマ第1弾『極限夫婦』】
「幸せな将来を夢見て結婚したはずなのにー…」。結婚を期に本性を現した最低夫たち。妻として、女性としてのプライドを踏みにじる言動、妻に対して高圧的な態度で支配、そして「浮気」という裏切り。
そんな最低夫たちに対して我慢の限界を迎えた妻が立ち上がる!
あらゆる手段を使って経済的、社会的に夫に復讐をしていく姿はまさに爽快!
そして、その先にあるものは一体なんなのか!?
新感覚の愛憎&復讐エンターテインメントを描く。
【放送】2024年1月18日スタート 毎週木曜深夜0時25分〜(関西ローカル)
(※初回のみ深夜0時40分〜OA)
【配信】DMM TV独占配信
【出演】松村沙友理、竹財輝之助、岡本玲、桐山漣、北乃きい、平岡祐太 ほか
(※桐山漣の“漣”は正式にはさんずい+一点しんにょうの“連”)
【原作】きづきあきら+サトウナンキ『極限夫婦』(双葉社・アクションコミックス)
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2023/12/14