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ギャレス・エドワーズ監督、「スター・ウォーズ」の呪縛と映画づくりの真実
 20日より公開中の映画『ザ・クリエイター/創造者』は、近年のハリウッドで珍しいものとなってしまった、原作のない、シリーズものでもない、オリジナルの SF大作映画だ。監督は、ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(2014年)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16年)を手掛けたギャレス・エドワーズ

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)ギャレス・エドワーズ監督(C)ORICON NewS inc.

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 1975年生まれのギャレスは、子ども頃に『スター・ウォーズ』に夢中になり、やがて映画監督になることを夢見て、実現させた人物だ。彼が少年だった80年代、90年代は、映画館でオリジナリティあふれる名作SF映画が次々と上映されていた時代。そういった映画の映像やキャラクターが少年のやわらかい新鮮な脳に刻み込まれ、「ロボットや宇宙船が出てこない映画ってあるのかな?」とジョークを言うほど、SFの申し子となった。

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios

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 『ザ・クリエイター/創造者』もガチガチのSF映画だ。AI(人工知能) によってロサンゼルスが核爆発で破壊された後の世界から物語は始まる。西洋の各国はAIの完全禁止に呼応するが、東洋の各国はAIテクノロジーの開発を継続し、AIを搭載したロボットが人間と同等に暮らす“ニューアジア”として発展。地球からAIの脅威を取り除くことを目的とした戦争がぼっ発する。

 主人公ジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は人類を脅かす兵器を生み出す創造者=クリエイターの暗殺ミッションに身を投じる中で、アジトを突き止めるが、そこにいたのは、超進化型AIを搭載した半分機械の少女アルフィーだった。ジョシュアは“ある理由”から彼女を守ることを決意し、人間であるジョシュアとAIのアルフィーの間に深い絆が生まれていく。やがて2人は衝撃の真実に直面することになる。

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios

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 アルフィーのほか、渡辺謙が演じるハルンなど、正面から見ると人間そっくりで、後頭部から耳にかけて機械となっているAIのキャラクターが登場する。現代よりもはるかに進化したテクノロジーが想像力豊かに描かれる一方で、深い緑が広がる自然の中で伝統的な暮らしを続けるアジアの風景が渾然一体となった“ニューアジア”の表現が印象的だ。

 ギャレス監督は、本作の世界を築き上げるたのめのインスピレーションになった作品として、世界24ヶ国の大自然や人間の営みを映し出したドキュメンタリー『バラカ』(1993年)、ハリソン・フォード主演の『ブレードランナー』(82年)、日本のアニメーション映画『AKIRA』(88年)、ジョセフ・コンラッドの小説『闇の奥』、フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』(79年)を挙げている。

 ジョシュアとアルフィーの関係性へのインスピレーションとなった作品には、『レインマン』(88年)、『殺し屋たちの挽歌』(84年)、『E.T.』(82年)、『ペーパー・ムーン』(73年)など、少し意外な映画のタイトルも。

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios

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 来日中に行われた「SPパネルセッション」では、「イギリスにいた時に、日本の『子連れ狼』を見た時から、こんな映画を作りたいと思っていたんだ。それに日本の映画やアニメなどがこの映画のインスピレーションの元になっていて、この映画に出てくるロボット等に影響を与えている」とも話していた。

 そして、ORICON NEWSのインタビューでは「『ローグ・ワン』を作っていなかったとしてても『スター・ウォーズ』の影響というのは出ていたと思います。子どもの頃、朝起きて、ベッドルームから階段を降り、朝食のシリアルを食べながら『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のビデオをソニーのベータマックスで観てから学校に行く日々を過ごしていたんです。だからどんな映画を作っても『スター・ウォーズ』がにじみ出てしまうんじゃないかな」と、「スター・ウォーズ」の影響力の大きさにも言及していた。

 今回のプロダクションデザイナーのジェームズ・クラインも、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17年)や『ハン・ソロ:スター・ウォーズ・ストーリー』(18年)などを手掛けていて、「すごくクールなデザインだ、と思っても、『スター・ウォーズ』に似すぎているな、と思ったら、違う方向を模索する、といったことをしてきました。それほど、『スター・ウォーズ』はパーフェクトなデザイン性、世界観だから、なかなかその影響から逃げるのは難しいですよね」とギャレス監督。この映画の視覚的な洗練と独創性は、自分たちが「好きなもの」を突き詰め、模索してたどり着いたものだった。

■お金をどこにかけるか“工夫”が必要

 ハリウッドのメジャースタジオが、ブランド化された IP に基づいていないオリジナル企画に消極的になっている昨今、比較的低予算で本作のような大規模映画を製作できたことも、アメリカでは称賛されている。

 「長編映画デビュー作『モンスターズ/地球外生命体』は、予算はほとんどありませんでしたが、クリエイティブな自由がありました。そして、自分は非常に幸運なことに、いきなりワールドカップの決勝戦に行ってしまったかのように、長編2作目で『ゴジラ』の監督をすることができたのです。やっていくうちに、ハリウッドの超大作のいいところと難しいところに気づきました。予算のない映画を作っていた時には簡単だったことが、大予算映画では難しい、いやむしろ不可能にさえなる。一方で、予算がなくて自分でやっていた視覚効果ショットづくりなどは、簡単にできるようになりました。それで今回は、インディペンデントとハリウッドのちょうど真ん中、いいとこ取りをしたいと思ったんです。どうしたかというと、少人数の撮影チームを編成し、リアルな国々のリアルなロケーションで、リアルな人々をまず撮影しました。撮影にお金をかけず、予算の多くをポストプロダクションに回して、いいものに仕上げていくというやり方です」とギャレス監督。

 撮影では、ソニーの軽量映画用カメラを使用し、タイ、ベトナム、カンボジア、ネパール、日本、インドネシア、イギリス(ロンドン郊外のパインウッド撮影所)、アメリカ(ロサンゼルス)の8ヶ国、80ヶ所を訪れた。役者たちはモーション・ピクチャー・スーツを着ることもなく、ロケ地のあちこちにトラッキング用の印をつける必要もなかったという。

 あとは、視覚効果会社ILM(インダストリアル・ライト&マジック)が、最先端のテクノロジーを駆使して、SF的要素をデジタルで追加。鮮明な自然さが備わったVFXで誰も見たことがないような世界を描き出した。ギャレス監督は「この映画の世界観をリアルに感じてもらえたらうれしいです」と少しはにかみながらアピールしていた。

映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios

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 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』での成功を受けて、ギャレス監督のもとにはさまざまなオファーが舞い込んできたというが、本作のインスピレーションを受けてからは、これを自身の次回作にしようと決めていたという。自分が作りたい映画と観客が観たい映画(製作費を出してもらえる映画)について尋ねると、ギャレス監督は次のように答えた。

 「そのバランスは考えないといけないですよね。今回の規模でいうと、編集に1年くらい時間をかけることができたのですが、最初の3分の1で自分が作りたいように作って、残りの3分の2はほかの人に見てもらって、意見を聞きながら仕上げていくという感じでした。やっぱり誰かに観てもらうために作っているし、どんなに素晴らしい意図をもって作ったところで伝わらなければ映画として世に出す意味がない。ただ、テスト試写のアンケートで『一番好きじゃなかったところはどこですか?』という質問の答えを読むのはつらいですね。本当にいろいろなことが書かれていて、お腹に何百発もパンチをくらったみたいなダメージを受けます。映画づくりは心を削られてきついところもあるんだけど、観客の皆さんに楽しんでもらいたい、という気持ちが自分を動かしてくれる原動力でもあるのです」

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  • 映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)(C) 2023 20th Century Studios
  • 映画『ザ・クリエイター/創造者』(公開中)日本版ポスター(C) 2023 20th Century Studios

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