数々のヒット作を世に送り出す福田雄一監督が、Netflixとタッグを組んだ映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』。“福田組”のヒロインを多数演じてきた橋本環奈が満を持して主演を務め、豪華キャストたちと作品を奏でた。今回は赤ずきん役の橋本に加え、シンデレラ役の新木優子、王子様役の岩田剛典がインタビューに応じ、福田組ならではの撮影エピソードトークに花を咲かせた。

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■童話の世界を実写化　想像を超えるビジュアルも話題

　童話の世界で起きる事件を、旅の途中の赤ずきんが探偵役としてスッキリ解決していく、青柳碧人の同名小説（双葉社）を、『勇者ヨシヒコ』シリーズや『今日から俺は!!』などのヒットで知られる福田雄一監督が実写映画化した本作。知的で辛口な名探偵・赤ずきんを橋本が、美しく影のあるシンデレラを新木が、クールな王子様を岩田が演じる。

――それぞれ個性的な役を演じていますが、脚本を読んでどんな印象を持ちましたか？

橋本：童話の登場人物という日常とはかけ離れた役柄なのですが、強く“赤ずきんらしさ”みたいなことは考え過ぎないようにしようと思って挑みました。すごく勘が鋭く、淡々と推理をしていくキャラクターなので、“頭脳明晰”に見せたいという思いはありました！

新木：私は「みんなの想像するシンデレラになれるのかな？」と不安はありました。なかなか想像できなくて。でも仕上がった作品を観たら、抱いていたような違和感はなく、衣装やCGにも助けていただけたなと思います(笑)。

――岩田さんは「国中の女性が憧れる王子様」の役柄でしたね。

岩田：福田監督はいじってきていますよね (笑)。普段の僕とはイメージの違う役だったので、楽しませてもらおうという思いでした。

――衣装もすごく豪華でしたね。

橋本：衣装合わせの段階からちょっとふざけているというか、「こんなのおもしろいんじゃない？」と、みんなノリノリでアイディアを出し合って決めていく感じでした。でも福田監督はしっかりとイメージを持っている方なので、いろんな意見があっても、軸はブレないんですよね。

岩田：王子の衣装合わせもかなり楽しかったです。帽子が見たこともないくらいの大きさで、しかもそれで馬に乗らないといけないので、「どう考えても無理だよ！ どうしよう！」で、大盛り上がり(笑)。最終的には、完璧に世界観に合う形で仕上がってきて、ヘアメイクさんや衣装さんに助けられて、王子が出来上がりました。

新木：シンデレラはボロボロの衣装で登場するので、土をこすりつけたり、みすぼらしく見えるように頭巾の汚し方とか、かなりこだわりました。そうすることで、ピカピカのドレスを着たときのコントラストが出るよねって話していて。シンデレラが赤ずきんと出会う森は、本物の土を使っていたので、ドレスの時は汚さないように必死でした(笑)。

橋本：セットの中なのですが、本当の森だと思って虫が入ってくるぐらい、しっかり森になっていましたよね(笑)。

■笑いにストイックな福田組の重鎮たち

――橋本さんは福田組常連ということもあり、安定感が抜群でした。

橋本：福田監督には本当にお世話になっているのですが、実は主演をやらせていただくのは初めてだったんです。『勇者ヨシヒコ』で主演を務めた山田孝之さんから「周囲がふざけて、主演が受ける…という芝居は、結構大変だよ」とアドバイスいただいていたので覚悟していたんですけど、意外と自分から笑わせにいくシーンもあったので楽しめました。

新木：本当にみんなが全力でふざけているのが衝撃でした。現場でねずみ役のムロさんが「（語尾の）チューどれぐらい入れようかな？」と、真剣に議論していたのがおもしろかったです(笑)。

――ムロさんが連発していた語尾の「チュー」は脚本に書かれていたのですか？

橋本：入っていなかったです(笑)。ムロさんが「チューって入れたいんだよね」と提案して、福田監督が「それいいね」って。テストで「チュー」って言いすぎて、何話しているのかわからないって盛り上がっていました。

――岩田さんはもうひとりの福田組重鎮、佐藤二朗さんと対峙するシーンが多かったですね。

岩田：二朗さんは王様の役だったのですが、とにかく笑わないようにするのが大変でした。“笑いたいのに笑えない”という状況で芝居を続けるのは想像以上にきつかった(笑)。基本的にはリハーサル通りの芝居なのですが、なんでか本番は想像を超えてくることばかりで。本当にすごいです、二朗さんの芝居。

――新木さんは福田組のお芝居に触発されて、なんかおもしろいことをしてみようという気持ちになりましたか？

新木：脚本を読んで、シンデレラのふざけている姿はあまり想像できなかったので、意識はしなかったです。でも王子様のことになるとフワフワしてちょっと抜けているような描写もあったので、そのあたりは少しくだけた感じで演じました。ムロさんも二朗さんもすごくて圧倒されることが多々ありました。またご一緒する機会があったら、チャレンジしてみたいですね(笑)。

――福田組は、出演を重ねると、より笑いのハードルが上がって恐怖だと常連俳優さんはおっしゃっていましたが、橋本さんはそういうプレッシャーはありましたか？

橋本：多分そのプレッシャーを感じているのは、ムロさんと二朗さん、賀来賢人くんじゃないですかね(笑)。福田監督って、テストでめちゃくちゃ笑ってくれるので、テストを超えなければいけないというプレッシャーがあるんじゃないかと思います。でも本番はなかなかカットをかけないで様子を見ているので、悪質ですよね(笑)。

■福田監督がつくる、現場の雰囲気「ピリピリしない」

――みなさんは共演されて、いかがでしたか？

橋本：優子ちゃんは本当にそのまま。明るくてなんでも笑ってくれる！

新木：もともと環奈ちゃんにはサバサバしたイメージを持っていましたが、想像をはるかに超えていました(笑)。“男気”があります！

橋本環奈：ありがとうございます！

岩田剛典：それは褒めているの？(笑)

新木：もちろん、褒めています！　飾らない方…という印象だったのですが、本当にその通りで。みんなに同じ目線で話しかけてくれるので、現場がいつも明るいんです。岩田さんは2回目の共演だったのですが、今回すごく笑顔が多くて、こんなに笑っている姿を見たのは初めてかもしれません。

岩田：たしかに楽しかったですね！　福田監督の作る雰囲気もあるのかもしれませんが、2人とも気を使わないで良いので、ご一緒して楽しかったです。

橋本：福田組って、スタッフさんがピリピリすることがないんです。監督がいつも「現場では絶対怒るな」と言っているので、その雰囲気が出ているんでしょうね。今回は真矢みきさんや二朗さんなど先輩方が率先して笑いをとってくださったりもして現場が和み、すごくアットホームな雰囲気で雰囲気で撮影が進んでいきました。

――橋本さんは若月佑美さんとまた共演されていますね。

橋本：『今日から俺は!!』では舎弟という間柄だったのですが、今回はまったく違う役での共演で。若も福田組の作品にたくさん出ているので、現場でも勝手知ったる……という感じでやりやすかったです。

――今回は赤ずきんでしたが、童話や神話で演じてみたい役はありますか？

橋本：私は続編がやりたいですね。

新木：私は『さるかに合戦』とか。これどうやったらおもしろくなるの？ というのを福田組でやってみたい。

橋本：2秒で終わりそう(笑)。

岩田：僕は鶴の恩返しとかやってみたいかな(笑)。

橋本：鶴役？

岩田：いやお爺さんの役(笑)。

新木：もったいない(笑)。

――では、最後に、作品の見どころを教えてください。

橋本：原作もキャラクターが立っていて、とてもおもしろい作品です。伏線の張り方も秀逸で、ストーリーも見応えがあります。衣装やセットはもちろんなんですが、CGもすごくて、ビジュアル的にも楽しめると思います。

新木：ミステリーとしてもおもしろいですし、キャラクターのおもしろさやビジュアルの美しさもあるので、小さいお子さんも楽しめると思います。老若男女誰が観ても楽しめるツボがたくさんある作品です。

岩田：ポスタービジュアルや、CMなどの印象からは想像がつかないほど緻密なストーリーになっています。大人から子どもまで楽しめる作品なので、たくさんの方に届いてくれたらうれしいですね。

取材・文／磯部正和
写真／MitsuruYamazaki