『M:I-III』（2006年）に初登場して以来、最新作『ミッション：インポッシブル／デッドレコニング PART ONE』（公開中）にも登場し、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントの相棒ベンジー役で知られるサイモン・ペッグ。アクションスパイ映画で世界的にその名が知られるようになった彼は、「実は叔父が2人GCHQ（英国の諜報機関）で働いていた」と明かし、もともと“スパイ組織”と無縁ではなかった。

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　サイモンが叔父のことを明かしたのは、英国の電波やサイバー上の情報を通信傍受する「政府通信本部（GCHQ）」を舞台に、現代のサイバー戦争の脅威をリアルに描くスパイサスペンス・ドラマ『GCHQ：英国サイバー諜報局』（全6話）のインタビューでのこと。このドラマにサイモンはGCHQの作戦本部長ダニー・パトリック役で出演している。

　「このドラマを通して学んだことは何か？」と問われたサイモンは、「本当にたくさんのことを学びました。子どもの頃、GCHQは身近だったんです」と切り出し、「実は叔父が2人GCHQで働いていたのですが、仕事の詳細は教えてもらえなかったので、何をやっているのか知りませんでした。兄は今のGCHQの本部の電気工事を担当していましたが、当然のことながら、そこで何が行われているのか、どんな仕事内容なのかはまったく知る由もありません。このドラマに出演してサイバー社会について、多くのことを学びました」と答えた。

　GCHQは、英国に実在する諜報、サイバー、セキュリティ機関。前身は第一次世界大戦後の1919年、ブレッチリー・パークに作られたGCCS（政府暗号学校）で第二次世界大戦時に天才数学者アラン・チューリングが中心となりドイツ軍の暗号「エニグマ」の解読に成功したことで知られている。今年の5月、104年の歴史上初の女性長官が就任したことが大きなニュースとなった。

　ドラマは、ロシアにより“宣戦布告なしに”突如仕掛けられたサイバー攻撃に翻ろうされるGCHQと、総選挙目前に通信障害が発生し混乱を極める英国政府、そしてSNSを駆使して反英プロパガンダ作戦を行ったり、フェイクニュースを拡散したりするプーチン政権のFSB（連邦保安庁）との攻防を描く。ウクライナ侵攻やボリス・ジョンソン氏の退任など、直近に実際に起きた出来事がタイムリーに織り交ぜられ、その描写は不気味なほどリアルでスリル満点だ。

　「サイバー戦争の脅威が身近になってまだ20年ほどしか経っていませんが、その現状、対応策、そのための準備などを学ぶことができ、本当に勉強になりました。サイバー戦争は、人々が本当に知っておくべきもので、今や紛争の非常に現実的な領域です。ソーシャルメディアにアクセスすると、話している相手の多くが実在しないこと、世の中には多くのプロパガンダが存在すること、社会における真の反対意見を阻止するためにエコーチェンバー現象（※）が助長されていることを意識しなければならない。これは本当に勉強になりました」と話し、現代の人々がサイバー戦争について学ぶきっかけになると、ドラマ『GCHQ：英国サイバー諜報局』の視聴を促していた。

■作戦本部長としてシリアスな演技を披露

　スタンダップ・コメディアンとしてキャリアをスタートさせたサイモンは、『SPACED〜俺たちルームシェアリング〜』（1999年〜2001年）で、『スター・ウォーズ』おたくの主人公を演じて注目され、『ショーン・オブ・ザ・デッド』（04年）や『ホットファズ　俺たちスーパポリスメン！』（07年）、『ワールズ・エンド　酔っ払いが世界を救う』（13年）などのコメディ映画に多数出演。

　「スタートレック」シリーズ（09年、13年、16年）、スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』（18年）などで印象的な役柄を演じ、「ミッション：インポッシブル」シリーズ（06年、11年、15年、18年、21年）のベンジーは陽気なキャラクターで物語に緩急を与える役割として愛されてきた。コミカルな役を演じることの多いサイモンだが、『GCHQ：英国サイバー諜報局』でのダニーはGCHQの作戦本部長という立場もあり、今までにないシリアスな演技が見せている。

　「私はコメディのイメージが強いので、このようなシリアスなドラマの役柄をオファーされたことが光栄でした。実は脚本を読むのが得意ではなく、特に長編は苦手なのですが、この作品は6時間ものなのに1日で読み終えたんです。ダニーというキャラクターがとても魅力的で、即決でした。この役をいただけたことを本当に光栄に思いました」と、監督・脚本・製作総指揮を一手に担うピーター・コズミンスキーに感謝。また、自身も映画の脚本を手がけることもあるサイモンは、コズミンスキーの豊かな才能を絶賛してやまない。

　「ピーターはせりふを書くのがとても上手で、シーンが長いこともあり、舞台劇のような感覚になります。自分のせりふが迫ってきて、一か八かという感じなのですが、私はその緊張感が好きで、彼の書いたせりふが大好きでした。監督としての彼は、私がこれまで仕事をした中で、最も親切な“アクターズディレクター”の一人です。彼は、役者の役作りのプロセスに非常に敏感なのですが、自分がやりたいことは正確に理解しています。彼は近づいてきて『君が考えていることはこれとこれだと思うんだけど…』と、導いてくれるのでとても助かります。

　撮影に入る前に、ダニーのバックストーリーを教えてくれたのですが、ダニーは幼少期、里親の元で育ったこと、結婚して息子が2人いること、ラグビーファンで子どもたちもラグビーをしていること、本当は普通の父親として、夫として過ごしたいのに、国家安全保障という重荷を背負っていて、ストレスに感じていることなど、本当に細かく書かれていたんです。俳優で一番嫌なのは、自分が何を演じればいいのかわからなくなることです。しかし、ピーターと仕事をすれば、そのような心配はない。できることなら、彼とずっと一緒に仕事をしたいくらいです」

　コズミンスキーのもとで、とても充実していた様子のサイモン。「苦労したことは、コンピューターとスクリーンでいっぱいの部屋はとても暑くて少し汗ばんだことかな！」と、茶目っ気を見せる余裕も。

　また、お気に入りの小道具として、「ダニーがずっと首から下げている読書用のメガネ」を挙げ、「私はここ数年、老眼鏡が必要になってきたので、ダニーは書類からスクリーンへ、そして対面へと、常に老眼鏡が必要な状態なのではと思い、ひも付きのすてきな眼鏡を用意しました」とコメント。劇中でダニーがかける眼鏡にも注目だ。

　同ドラマは、英国の「チャンネル4」で昨年6月に放送開始、同8月に米「Peacock」で配信されて以来、続編を待ちわびる声が多数上がっていたが、シーズン2の製作が決定。コズミンスキーは、続編で回収すべき伏線を最終話に残していることを明らかにしている。

　日本では、Amazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で今月3日より独占配信中（字幕版、毎週月曜1話ずつ更新）。「BS10 スターチャンネル」では8月15日より放送開始（STAR1 字幕版：8月15日スタート、毎週火曜　後11：00〜ほか、8月5日　後2：00〜第1話先行無料放送／STAR3 吹替版：8月17日スタート、毎週木曜　後10：00〜ほか）。