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「足がないの、アリエルとおそろいやん」 車椅子のパリコレモデルが手に入れた“声”

 SNS総フォロワー数70万人超、2022年秋にミラノコレクション、23年春にパリコレクションのランウェイを歩き、歌手・MISIAのアリーナツアーでバックダンサーも務めた車椅子モデル・葦原海(あしはら・みゅう)。両足をなくしても、「そんなの関係ない!」とやりたいことにまっすぐに、毎日を楽しみ尽くす彼女の姿が反響を呼んでいる。同年5月に刊行された初の書籍『私はないものを数えない。』では、「車椅子女子」という“ハッシュタグ”を超えたその圧倒的行動力の背景にある、究極にポジティブなものの見方・考え方を初めて語りつくした。今回は書籍の中から一部抜粋して届ける。

『私はないものを数えない。』より(C)Sumiyo IDA

『私はないものを数えない。』より(C)Sumiyo IDA

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■生まれ変わっても、私は私に生まれたい

「切断した足はその後、どうしたんですか?」

あるときSNSに、こんなコメントがついた。切った足は今でも保存しているのか、それとも火葬したのか……。考えたことすらなく、親に聞いてみた。

「火葬したよ」が答えだった。

これは自分で選べるそうで、冷凍保存しておく人もいるらしい。

いつか医学が進歩して手術できるまで取っておくため、自分が死んだとき、お棺に入れて一緒に焼くため、それぞれ理由はあるらしい。

火葬も、自分の足だけ単独で焼いてもらうか、他の人の摘出した臓器なんかとまとめて焼いてもらうかが選べる。まとめて焼いたほうが安いらしいけど。

「切断した足はその後、どうしたんですか?」

この質問は失礼でも無神経でもなく、知らないことを考えるきっかけになってよかった。人それぞれ気になる点も違うし、思いつくことも違うからこそ、素直な意見は貴重だと私は思っている。

せっかく調べたので、知識はどんどんシェアしたい。

足の火葬の説明動画を投稿したら、「この動画だけ涙目」とか、「苦しそうにしゃべっている」というコメントがたくさんついた。

知らなかったことを知れてうれしい私に、悲しさは1ミリもなかったし、前に書いたとおり「かわいそう」と勝手に決めつけられるのが大嫌い。

だけど、もしそう見えたなら、親のことが頭の隅にあったのかもしれない。

足があってもなくても私は私だ。

生まれ変わっても、私は私に生まれたい。

その気持ちに嘘(うそ)はないけど、両親の気持ちはきっと違う。

健康体に産み、風邪も引かない丈夫な子に育てたのに、両足を失うことになった。

こういう性格の娘が完全に吹っ切れていても、普通の性格の親はそうじゃないから、事故のことはあまり聞かない。思い出させるのは残酷だ。

「足を切るか・切らないか」は、とても大きな選択だ。

回復するわずかな望みにかけて足を残しておくか、傷口から全身に感染症が広がる、命の危険を避けて切断するか。

私は意識不明だったから知らないけど、元気で外出ばかりしていた16歳の娘の足を切断するかどうか、両親は本当に悩んだだろう。

想像しかできないけど、とてもつらい選択だっただろう。

「足を切るか・切らないか」なんて、意識が仮にあったとして、私は自分じゃ選べなかった。

どれが正解かはわからないし、そもそも正解なんてないと思う。

だからこそ「足より命を優先する」と考えて、私の代わりにつらい選択をしてくれた両親に心から感謝している。

気がついたとき、足はもうなかった。

だから私は受け入れられた。お母さん、お父さん、本当にありがとう。

■足はなくしたんじゃなくて「あげた」

『私はないものを数えない。』より(C)Sumiyo IDA

『私はないものを数えない。』より(C)Sumiyo IDA

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足の話を続けると、私のブログやTikTokのタイトルは「足は姫にあげた」だ。

数年前の冬、ディズニー公式グッズにアリエルのブランケットがあった。

他のキャラクターもあったけど、アリエルのだけ人魚みたいに見えるように、筒の状態になっていた。

みんなは家でくるまるんだろうけど、私は車椅子だから外でも使える! スティッチ推しでも、プリンセスの中で一番好きなのはアリエルだな……。

さっそく買って、気がついた。

「足がないの、アリエルとおそろいやん」

私は16歳で足をなくしていろんな活動を始め、声が注目された。「変わってる」「かわいい」「声優みたいな声」って。

人魚姫のアリエルは16歳で恋をして、美しい声と引き換えに足をもらった。

じゃあ、「私の足は声と交換した」そう思えばいいんじゃないかな?

いろんなストーリーを考えたけど、私の足がアリエルの足になった──ポエマーじゃないから、そこまでは思わないよ。

でも、「足はなくしたんじゃない、姫にあげた」と考えるほうが気分がいい。

足は姫にあげた、その代わりに私は声をもらった。

たくさんの人に、たくさんのことを届けられる声を。

■葦原海プロフィール
1997年生まれ。高校在学中の16歳で事故に遭い、両足を切断。車椅子ユーザーになる。リハビリをしながら「できること」に目を向け、社会復帰。専門学校在学中、NHK番組内のファッションショーに出演。これをきっかけにモデル活動を開始。2021年東京パラリンピック閉会式パフォーマー、グラビアなど、唯一無二の「両足のない車椅子ユーザーのモデル」として活躍。新型コロナウイルスで活動できなくなったことをきっかけに、YouTube、TikTokなどの動画配信を本格始動。車椅子ユーザーの入浴やトイレのリアル、旅行、一人暮らしなどNGなしであらゆる質問に答えて反響を巻き起こす。2022年にはミラノコレクション、23年にはパリコレクションのランウェイを車椅子で歩き、世界デビュー。MISIAのアリーナツアーではバックダンサーとして出演した。モデル・SNSに総フォロワー数70万人のインフルエンサー・観光アドバイザー。

『私はないものを数えない。』書影(C)Sumiyo IDA

『私はないものを数えない。』書影(C)Sumiyo IDA

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車椅子モデル・葦原海 初の書籍
『私はないものを数えない。』

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  1. 1. 16歳で両足を失って…車椅子に乗ったパリコレモデル もしも彼氏ができたなら
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