今月12日(日本時間13日)に授賞式を控える「第95回アカデミー賞」で“最多”10部門11ノミネート、その前哨戦とされる名だたる賞レースですでに旋風を巻き起こしている映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(以下、『エブエブ』)が、3日より日本でも公開中。特に注目を集めているのが、同作で約30年ぶりのスクリーン復帰を果たし、ゴールデングローブ賞含む本年度の賞レースを総なめにしているキー・ホイ・クァンだ。このたびオンライン取材が実現。ハリウッドでの復活劇について語ってくれた。
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)、『グーニーズ』(85年)で最もアイコニックなキャラクターを演じたにもかかわらず、その後は役者としての仕事を見つけるのに苦労したというキー。南カリフォルニア大学に進学し映画制作について学び、『X-MEN』の格闘シーンの振り付けや、木村拓哉も出演したウォン・カーウァイ監督の『2046』で助監督を務めるなど、スクリーンの裏側で活躍し続けていた。そして、全米で大ヒットしたキャスト全員がアジア系の『クレイジー・リッチ!』(『エブエブ』で共演しているミシェル・ヨーも出演)を観て、「時代は変わった」と思い、映画復帰を考えたという。
――本作への出演はオーディションで勝ち取ったそうですね。
【キー・ホイ】脚本を読んで感動しました。キャスティング・ディレクターに、本作の監督・脚本を手がけたダニエル・クワン、ダニエル・シャイナートへの賛辞を伝えました。子役として仕事を始めた当時からアジア人ができる役は少なかったから、中国系の家族を主人公とした脚本を書いてくれたこと、僕が観たいと思っていたもの、ハリウッドがなかなか作らないような映画の脚本を書いてくれたことに感謝を示しました。中国系の家族だったから、僕もキャスティングしてもらえたし、そのこと自体が贈り物。こうやって俳優復帰できるとは思いませんでした。
――役者としての仕事を見つけるのに苦労したとのことですが、一番つらかった時期は? つらかった時を救ってくれたものはありましたか?
【キー・ホイ】一番つらかったのは、高校を卒業したらフルタイムで役者をやっていきたいと思った頃です。それまでに『インディ・ジョーンズ』、『グーニーズ』、本田美奈子さん主演の日本映画『パッセンジャー 過ぎ去りし日々』(1987年)にも出演して、ある程度のキャリアはあったけれども、いざ、役者一本でやっていこう思った時に、自分が演じられる役がない、という現実に直面したんです。混乱しましたし、落胆しました。演技しかやってこなかったのに、これからどうしたらいいんだと、人生の迷子になってしまった。
とりあえず、大学に進学して映画について学ぶことにしたんです。そこには、“映画”という同じ言語を話す人たちがいました。自分と同じように映画に対して情熱を持つ人たちに囲まれて、救われたんです。そこで自分が歩んでいく道、目的が見えた気がして、前向きな気持ちを取り戻すことができました。
■アップ・ダウンがあるから人生は美しい
――劇中でウエストポーチをヌンチャクのようにぶん回し、敵を倒すシーンなど、スクリーンの裏側で培った経験の一部を、『エブエブ』で生かすことができたのではないですか? 人生に無駄なことはないんだなって励まされました。
【キー・ホイ】その通りです。自分が歩んできた道で良かったんだと思いますし、このまま歩んでいきたい。アップ・ダウンがあるから人生は美しいと思うし、ほろ苦い経験をしていないと、何が甘いかわからないですしね。
――『エブエブ』は、観たらびっくりの「マルチバース」と「カンフー」が融合したカオスな世界観に引き込まれ、気づいたら感動している異色作。キー・ホイさんは本作のどんなところが魅力的だと思いますか?
【キー・ホイ】本作に携われたことを誇らしく思っています。アメリカで暮らすアジア系の人たちの物語が正確に描かれているところも誇らしい。僕自身のことでいうと、アメリカにチャンスを求め、一家そろってベトナムから移住しました。この移住なくして、僕の人生はどうなっていたかわからないし、そういう意味では移住を決断した両親が僕にとってのヒーローでもあるわけです。この映画の中国系の家族は、僕の家族そのままのようにも見えるし、(ルーツに関係なく)自分の家族に重ねて観ることができると思う。
さらに、親子と世代間ギャップやそれぞれの葛藤、人には優しく、親切しよう、そして、愛といった共感性や普遍性のあるテーマも込められているから、多くの方に支持してもらえたのかな。
何より、この映画が作られ、公開されたタイミングが良かったと思うんだ。パンデミックで世界中が苦しんで、混乱もしている中で、みんなにインスピレーションを与えるような作品になったと思う。実際に観てくれた人の感想がまた素晴らしくて、人によっていろいろな受け取り方、感じ方をするみたい。「人生観が変わりました」と言ってくださる方も多い。
一つだけシェアすると、2歳の子どもがいて、離婚を考えていたというご夫婦がこの映画を観て、もうちょっと頑張ってみようという気持ちになったというんだ。今、カップルセラピーに通っているという話を聞いて、僕、感動しちゃって。映画というのは人にインスピレーションを与え、人を癒すものであるべきだと常々思っているから、これこそ映画だ!って、感動したんです。
■『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
アメリカでコインランドリーを経営する“フツ―のおばさん”エヴリン(ミシェル・ヨー)は、突如、“別の宇宙から来た”という気の弱い夫・ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)から“全宇宙をカオスに陥れる、<巨大な悪>を止められるのは君だけだ”と告げられ、いくつもの並行世界(マルチバース)の存在を知ることに。ワケも分からず混乱しつつも宇宙と家族を救うため宿命を受け入れたエヴリンは、マルチバースを駆け巡り、巨悪との壮絶な戦いに立ち向かうことを決意する…。
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)、『グーニーズ』(85年)で最もアイコニックなキャラクターを演じたにもかかわらず、その後は役者としての仕事を見つけるのに苦労したというキー。南カリフォルニア大学に進学し映画制作について学び、『X-MEN』の格闘シーンの振り付けや、木村拓哉も出演したウォン・カーウァイ監督の『2046』で助監督を務めるなど、スクリーンの裏側で活躍し続けていた。そして、全米で大ヒットしたキャスト全員がアジア系の『クレイジー・リッチ!』(『エブエブ』で共演しているミシェル・ヨーも出演)を観て、「時代は変わった」と思い、映画復帰を考えたという。
――本作への出演はオーディションで勝ち取ったそうですね。
【キー・ホイ】脚本を読んで感動しました。キャスティング・ディレクターに、本作の監督・脚本を手がけたダニエル・クワン、ダニエル・シャイナートへの賛辞を伝えました。子役として仕事を始めた当時からアジア人ができる役は少なかったから、中国系の家族を主人公とした脚本を書いてくれたこと、僕が観たいと思っていたもの、ハリウッドがなかなか作らないような映画の脚本を書いてくれたことに感謝を示しました。中国系の家族だったから、僕もキャスティングしてもらえたし、そのこと自体が贈り物。こうやって俳優復帰できるとは思いませんでした。
【キー・ホイ】一番つらかったのは、高校を卒業したらフルタイムで役者をやっていきたいと思った頃です。それまでに『インディ・ジョーンズ』、『グーニーズ』、本田美奈子さん主演の日本映画『パッセンジャー 過ぎ去りし日々』(1987年)にも出演して、ある程度のキャリアはあったけれども、いざ、役者一本でやっていこう思った時に、自分が演じられる役がない、という現実に直面したんです。混乱しましたし、落胆しました。演技しかやってこなかったのに、これからどうしたらいいんだと、人生の迷子になってしまった。
とりあえず、大学に進学して映画について学ぶことにしたんです。そこには、“映画”という同じ言語を話す人たちがいました。自分と同じように映画に対して情熱を持つ人たちに囲まれて、救われたんです。そこで自分が歩んでいく道、目的が見えた気がして、前向きな気持ちを取り戻すことができました。
■アップ・ダウンがあるから人生は美しい
ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)=映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 (C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
【キー・ホイ】その通りです。自分が歩んできた道で良かったんだと思いますし、このまま歩んでいきたい。アップ・ダウンがあるから人生は美しいと思うし、ほろ苦い経験をしていないと、何が甘いかわからないですしね。
――『エブエブ』は、観たらびっくりの「マルチバース」と「カンフー」が融合したカオスな世界観に引き込まれ、気づいたら感動している異色作。キー・ホイさんは本作のどんなところが魅力的だと思いますか?
【キー・ホイ】本作に携われたことを誇らしく思っています。アメリカで暮らすアジア系の人たちの物語が正確に描かれているところも誇らしい。僕自身のことでいうと、アメリカにチャンスを求め、一家そろってベトナムから移住しました。この移住なくして、僕の人生はどうなっていたかわからないし、そういう意味では移住を決断した両親が僕にとってのヒーローでもあるわけです。この映画の中国系の家族は、僕の家族そのままのようにも見えるし、(ルーツに関係なく)自分の家族に重ねて観ることができると思う。
さらに、親子と世代間ギャップやそれぞれの葛藤、人には優しく、親切しよう、そして、愛といった共感性や普遍性のあるテーマも込められているから、多くの方に支持してもらえたのかな。
何より、この映画が作られ、公開されたタイミングが良かったと思うんだ。パンデミックで世界中が苦しんで、混乱もしている中で、みんなにインスピレーションを与えるような作品になったと思う。実際に観てくれた人の感想がまた素晴らしくて、人によっていろいろな受け取り方、感じ方をするみたい。「人生観が変わりました」と言ってくださる方も多い。
一つだけシェアすると、2歳の子どもがいて、離婚を考えていたというご夫婦がこの映画を観て、もうちょっと頑張ってみようという気持ちになったというんだ。今、カップルセラピーに通っているという話を聞いて、僕、感動しちゃって。映画というのは人にインスピレーションを与え、人を癒すものであるべきだと常々思っているから、これこそ映画だ!って、感動したんです。
■『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
アメリカでコインランドリーを経営する“フツ―のおばさん”エヴリン(ミシェル・ヨー)は、突如、“別の宇宙から来た”という気の弱い夫・ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)から“全宇宙をカオスに陥れる、<巨大な悪>を止められるのは君だけだ”と告げられ、いくつもの並行世界(マルチバース)の存在を知ることに。ワケも分からず混乱しつつも宇宙と家族を救うため宿命を受け入れたエヴリンは、マルチバースを駆け巡り、巨悪との壮絶な戦いに立ち向かうことを決意する…。
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2023/03/04