たまごをモチーフとしたサンリオのキャラクター『ぐでたま』が、今年10周年を迎えた。多くの人気キャラクターが元気に活躍するサンリオで、「だりぃ〜、ねみぃ〜」と無気力を貫いてきたぐでたま。そのやる気のなさとは裏腹に人気は高く、Twitterのフォロワーは100万人超。世界的にも活躍し、昨年12月にはNetflixデビューも果たしている。“サンリオピューロランド出禁”など数々の型破りな伝説を残してきたぐでたまの10年、サンリオに話を聞いた。 『ぐでたま』とは、ぐでぐでと脱力したポーズとやる気のない発言でお馴染みの、たまごをモチーフとしたキャラクター。サンリオの王道キャラクターらしからぬ愛想のなさと後ろ向きなスタンスながら、2013年のデビュー以来、根強い人気を誇っている。2022年度の『サンリオキャラクター大賞』では、日本では15位だったものの、オーストラリアで2位、ドイツ3位、シンガポール3位にランクイン。過去にはアメリカ、韓国、台湾で1位に輝いたこともあるなど、グローバルに心を掴んでいる。
「日本以外では生たまごを食べる習慣がほとんどないため、社内でも当初は『海外では理解されないのでは?』と言われていました。ぐでたまの発言をまとめた本『ぐでたま哲学』は翻訳版も出版されているのですが、海外からも『本質を突いている』といった反響があり、キャラクター造形を超えて支持してくださっているのを感じます」(サンリオ 海外事業本部・沖崎麗さん)
昨年12月からは、実写ドラマとしてNetflixシリーズ『ぐでたま〜母をたずねてどんくらい〜』がグローバル配信。Netflixでの展開は、『アグレッシブ烈子』(アニメ)に続きサンリオでも2作目。「今までにないサンリオのキャラクターであり、ストーリーを持たせられるのでは」とのNetflixの見解もあり、まさかの実写化に至ったという。
こう聞くと、なにか大きなプロジェクトのようだが、『ぐでたま』の第一発見者(デザイナー)のAmyさんはこう述べる。
「Netflixの方には、世界配信するからといってやる気を出さないようにお願いしました。ぐでたまの造形については『おいしそうしてください』と。私自身は最初から“そういうもの”として作ったので。ただ今作で初めてぐでたまに触れた方から、『こんな結末だなんて!』と怒られないか、ずっとドキドキしています」(Amyさん)
その人気と知名度とは裏腹に、10周年を迎えた今なお、「ぐでたまってサンリオのキャラクターだったの?」と言われることも多い異色のキャラクターだ。そもそも開発時、「これまでとは違う新しいキャラクターを」という企画から生まれただけに、ある意味で成功していると言えるだろう。当時は“ゆるキャラ”ブームなどもあり、同社でも新たな魅力を持つキャラクターを求めていたのだろう。そんな中、意外なものに着想を得たのがAmyさんだ。
「家でたまごかけご飯を食べていて、ぐでっとした黄身が寝そべっている人のように見えたんです。たまごって栄養もあるしいろんな料理にもなるし、すごく優秀なのになんかやる気がなさそう。それって、本当は能力があるのに、競争社会に疲れてしまって『頑張るのは嫌だな』と思っている現代人っぽいな、と思ったのが始まりでした」(Amyさん)
初登場は2013年。同年に開催された『食べキャラ総選挙〜食うか食われるか真剣勝負!〜』の結果は惜しくも2位だったが、ここで「順位とかどうでもいいわ〜」という名言を残している。
「これまでのキャラクターにはあまりないパターンですが、ぐでたまとセリフは切っても切り離せない関係にあります。ぐでたまが最初に注目されたきっかけは、ちょうどそのころ盛り上がっていたLINEスタンプ。当時のスタンプはイラストだけのものが主流でしたが、セリフ付きのぐでたまスタンプは文字を打つのが面倒なときなどに使い勝手がよかったのかもしれません」(沖崎さん)
■フォロワーは103.8万、後ろ向きなつぶやきでやらかし…社内でも物議に
ユルいのに深いことを言っているようなぐでたまのセリフは、SNSとの相性もいい。Twitterのフォロワーは現在103.8万と、サンリオニュースはもとよりTwitterアカウントを持つサンリオキャラクターの中でも最多を誇る。
「もともと、『自分もだらけているけど、ぐでたまよりはマシだな』と安心してもらえたらと思ってセリフを考えていたのですが、意外にも共感してくださる方が多かったですね。みなさん、思ったよりダラけたかったのかな(笑)。アメリカでのサイン会のときは、お仕事ができそうなステキな女性から『ぐでたまは家での私そのものよ』とこっそり言われたこともありました」(Amyさん)
ちなみに、ぐでたまのセリフやTwitterのつぶやきはすべてAmyさんが監修している。
「基本的に後ろ向きなことしかつぶやかないので、何回かやらかして怒られています(笑)。でも今は会社でも、『ぐでたまだからしょうがないか』と諦めてくれているみたいですね」(Amyさん)
子どもから大人まで万人に愛される、明るく元気でキラキラしたサンリオの王道キャラクターを尻目に、ぐでぐでとブレない姿勢を貫いてきたぐでたま。とはいえAmyさんは「そこまで攻めたつもりはなかった」と言う。
「サンリオにも、『クロミ』とか『バッドばつ丸』のように表面的には“いい子”じゃないキャラクターはたくさんいますし、その系譜に入れたらいいなという思いでした」(Amyさん)
だが、ぐでたまは“いい子”でないばかりか、サンリオのキャラクターの概念を覆すある要素があったという。
「個人的に衝撃的だったのは『誕生日=毎日』という設定でした。ハローキティもマイメロディもそうですが、キャラクターというのはこの世にたった1人の唯一無二の存在。それが、たまごとして毎日生まれて、食べられるけどまた生まれて、世の中にたくさん存在するという…。どこか哲学すら感じさせるコンセプトに、最初は頭を抱えてしまいました(笑)」(サンリオ 広報課・小畑恭子さん)
一方で、「対外的には非常に汎用性が高い」との評価もある。
「唯一無二の存在というのは、『複数体を同時に存在させることができない』という縛りにもなります。その点、ぐでたまなら無制限ですから(笑)、それこそ一度に大量発生するみたいな展開もできたら楽しそうだなと考えています」(沖崎さん)
ニセたまさんがぐでたまを連れて勝手にパレードに出てしまったり、通路でぐでーてぃんぐ(ぐでたまによるグリーティング)を実施してしまったことで、サンリオピューロランドへの出入り禁止処分をくらう(その後なんとか解除)など、ほかのキャラクターではあり得ない功績を残してきたぐでたま。Amyさんは、ぐでたまのこれからについても、これまでにない展開に思いを馳せる。
「何かギャップのあること…たとえば美術館の音声ガイドを、ぐでたまがやったら面白そうだなとか考えたりしますね。あのやる気のない口調と適当な説明なら、声だけでもぐでたまと認識してもらえるんじゃないかなと思っています」(Amyさん)
本来、キャラクターは造形ありきで成立するもの。しかしぐでたまは、Twitterとの親和性からもわかるように、造形を超えてパーソナルな側面が支持されてきた。視覚要素に縛られないということは、たとえば目の不自由な人にもぐでたまの魅力は伝わるだろう。いわばバリアフリーなキャラクターとも言える。やる気がないながらも、そのポテンシャルは計り知れない。
(文:児玉澄子)
(C) 2023 SANRIO CO.,LTD. S/D・G 著作(株)サンリオ
「日本以外では生たまごを食べる習慣がほとんどないため、社内でも当初は『海外では理解されないのでは?』と言われていました。ぐでたまの発言をまとめた本『ぐでたま哲学』は翻訳版も出版されているのですが、海外からも『本質を突いている』といった反響があり、キャラクター造形を超えて支持してくださっているのを感じます」(サンリオ 海外事業本部・沖崎麗さん)
昨年12月からは、実写ドラマとしてNetflixシリーズ『ぐでたま〜母をたずねてどんくらい〜』がグローバル配信。Netflixでの展開は、『アグレッシブ烈子』(アニメ)に続きサンリオでも2作目。「今までにないサンリオのキャラクターであり、ストーリーを持たせられるのでは」とのNetflixの見解もあり、まさかの実写化に至ったという。
こう聞くと、なにか大きなプロジェクトのようだが、『ぐでたま』の第一発見者(デザイナー)のAmyさんはこう述べる。
「Netflixの方には、世界配信するからといってやる気を出さないようにお願いしました。ぐでたまの造形については『おいしそうしてください』と。私自身は最初から“そういうもの”として作ったので。ただ今作で初めてぐでたまに触れた方から、『こんな結末だなんて!』と怒られないか、ずっとドキドキしています」(Amyさん)
「家でたまごかけご飯を食べていて、ぐでっとした黄身が寝そべっている人のように見えたんです。たまごって栄養もあるしいろんな料理にもなるし、すごく優秀なのになんかやる気がなさそう。それって、本当は能力があるのに、競争社会に疲れてしまって『頑張るのは嫌だな』と思っている現代人っぽいな、と思ったのが始まりでした」(Amyさん)
初登場は2013年。同年に開催された『食べキャラ総選挙〜食うか食われるか真剣勝負!〜』の結果は惜しくも2位だったが、ここで「順位とかどうでもいいわ〜」という名言を残している。
「これまでのキャラクターにはあまりないパターンですが、ぐでたまとセリフは切っても切り離せない関係にあります。ぐでたまが最初に注目されたきっかけは、ちょうどそのころ盛り上がっていたLINEスタンプ。当時のスタンプはイラストだけのものが主流でしたが、セリフ付きのぐでたまスタンプは文字を打つのが面倒なときなどに使い勝手がよかったのかもしれません」(沖崎さん)
■フォロワーは103.8万、後ろ向きなつぶやきでやらかし…社内でも物議に
ユルいのに深いことを言っているようなぐでたまのセリフは、SNSとの相性もいい。Twitterのフォロワーは現在103.8万と、サンリオニュースはもとよりTwitterアカウントを持つサンリオキャラクターの中でも最多を誇る。
「もともと、『自分もだらけているけど、ぐでたまよりはマシだな』と安心してもらえたらと思ってセリフを考えていたのですが、意外にも共感してくださる方が多かったですね。みなさん、思ったよりダラけたかったのかな(笑)。アメリカでのサイン会のときは、お仕事ができそうなステキな女性から『ぐでたまは家での私そのものよ』とこっそり言われたこともありました」(Amyさん)
ちなみに、ぐでたまのセリフやTwitterのつぶやきはすべてAmyさんが監修している。
「基本的に後ろ向きなことしかつぶやかないので、何回かやらかして怒られています(笑)。でも今は会社でも、『ぐでたまだからしょうがないか』と諦めてくれているみたいですね」(Amyさん)
子どもから大人まで万人に愛される、明るく元気でキラキラしたサンリオの王道キャラクターを尻目に、ぐでぐでとブレない姿勢を貫いてきたぐでたま。とはいえAmyさんは「そこまで攻めたつもりはなかった」と言う。
「サンリオにも、『クロミ』とか『バッドばつ丸』のように表面的には“いい子”じゃないキャラクターはたくさんいますし、その系譜に入れたらいいなという思いでした」(Amyさん)
だが、ぐでたまは“いい子”でないばかりか、サンリオのキャラクターの概念を覆すある要素があったという。
「個人的に衝撃的だったのは『誕生日=毎日』という設定でした。ハローキティもマイメロディもそうですが、キャラクターというのはこの世にたった1人の唯一無二の存在。それが、たまごとして毎日生まれて、食べられるけどまた生まれて、世の中にたくさん存在するという…。どこか哲学すら感じさせるコンセプトに、最初は頭を抱えてしまいました(笑)」(サンリオ 広報課・小畑恭子さん)
一方で、「対外的には非常に汎用性が高い」との評価もある。
「唯一無二の存在というのは、『複数体を同時に存在させることができない』という縛りにもなります。その点、ぐでたまなら無制限ですから(笑)、それこそ一度に大量発生するみたいな展開もできたら楽しそうだなと考えています」(沖崎さん)
ニセたまさんがぐでたまを連れて勝手にパレードに出てしまったり、通路でぐでーてぃんぐ(ぐでたまによるグリーティング)を実施してしまったことで、サンリオピューロランドへの出入り禁止処分をくらう(その後なんとか解除)など、ほかのキャラクターではあり得ない功績を残してきたぐでたま。Amyさんは、ぐでたまのこれからについても、これまでにない展開に思いを馳せる。
「何かギャップのあること…たとえば美術館の音声ガイドを、ぐでたまがやったら面白そうだなとか考えたりしますね。あのやる気のない口調と適当な説明なら、声だけでもぐでたまと認識してもらえるんじゃないかなと思っています」(Amyさん)
本来、キャラクターは造形ありきで成立するもの。しかしぐでたまは、Twitterとの親和性からもわかるように、造形を超えてパーソナルな側面が支持されてきた。視覚要素に縛られないということは、たとえば目の不自由な人にもぐでたまの魅力は伝わるだろう。いわばバリアフリーなキャラクターとも言える。やる気がないながらも、そのポテンシャルは計り知れない。
(文:児玉澄子)
(C) 2023 SANRIO CO.,LTD. S/D・G 著作(株)サンリオ
2023/02/20