年間約6万件(推定)の誘拐事件が発生するメキシコの誘拐ビジネスの闇に迫った映画『母の聖戦』(1月20日公開)は、犯罪組織に誘拐された娘を奪還するため、命がけの闘争に身を投じた母親の実話をベースにしている。
映画は、ある日突然、娘を誘拐された主人公シエロが、容赦なく身代金をむしり取られ、たちまち孤立無援の極限状況に。誰にも頼れないことを悟ったシエロは、危険を顧みず犯罪組織への監視、追跡を行い、軍をも巻き込んで娘の捜索を繰り広げていくストーリー。
ごく平凡なシングルマザーの主人公がたどる想像を絶する運命――決して裕福ではない庶民が犯罪組織に搾取され、警察にも取り合ってもらえない非情な現実を描き出す。全編にわたって主人公シエロの視点でストーリーが展開し、観る者を誘拐ビジネスの闇の奥深くへと誘い、この世のものとは思えない理不尽な暴力が渦巻く光景を目撃させていく。入念なリサーチが重ねられた、リアリスティックな眼差しに貫かれた映像世界の強度に息をのまずにいられない。
■映画のモデルとなった、ミリアム・ロドリゲス
主人公シエロのモデルとなったのが、娘を誘拐されたのちに殺害された、ミリアム・ロドリゲス。復讐のため、たった一人で麻薬カルテルに挑み、犯人たち10人を監獄へと追いつめることに成功した実在の女性だ。
2012年、当時20歳だった娘のカレンを誘拐されたミリアムのもとには、犯人から脅しの電話が繰り返され、要求された高額の身代金を銀行でローンを組み工面し支払ったが、娘は解放されず、解放を約束された墓地で暗くなるまで待っていたという。
そこでミリアムは娘を誘拐した犯罪組織<ロス・セタス>のリーダー格の男に会い、娘を解放して欲しいと直接懇願した。しかし男は「組織は誘拐に関与していない。2千万ドルを払えば娘を見つける手助けをする」と言い張り、ミリアムは男に追加の金を支払ったが、一週間後には男と音信不通になる。代わりに誘拐犯を名乗る他の男たちから、「もう少しだけ金が必要だ」と追加で金を要求する電話がかかってくるように…。家族は一縷(る)の望みをかけて要求された金を払い続けたが、ついに娘は戻ってこないまま、誘拐から2年後の14年に、大量の死体の中から娘のカレンの遺骨が見つかった。
そして、ある日を境に、ミリアムは犯人たちへの復讐を決意したという。髪を短く切って赤く染め、世論調査員や医療従事者、選挙管理人のふりをして犯人たちの名前や住所を調べ、犯人たちの祖母やいとこに近づき情報を集めていった。
犯人の中には故郷に戻って敬虔なクリスチャンとして過ごしている男もいたが、ミリアムは男の祖母に近づき、男が通っているという教会を聞き出し、ミサに参加していた犯人の男を見つけ出して警察に引き渡した。教会の中で男を捕らえたとき、男は慈悲を乞いたが、「娘を殺したとき、お前の慈悲心はどこにあった?」とミリアムは言い返したという。
また別の犯人は、ミリアムがリーダー格の男に会った際に無線から漏れ聞こえた名前から男のSNSを見つけ出し、一年にわたり彼のSNSを監視し続け、交友関係をひも解いていき、ついに男が路上で花売りをしていると情報を掴む。ミリアムは銃を持ってすぐに現場へと向かい、逃亡する男を追いかけて捕らえ、警察へと引き渡すまでの約1時間、「動いたら撃つ」と言って犯人の背中に銃を押し付け続けていたという。
そうしてミリアムは、娘の誘拐殺人事件に関わった犯人のうち、生存しているほぼ全員となる10人もの犯人を逮捕へと追いつめた。正義を求めるミリアムの鬼気迫る行動は、組織の報復を恐れて見て見ぬふりをしてきた街の人々に大きな衝撃を与え、多発する犯罪に苦しむ市民を熱狂させ被害者たちを勇気づけた。
しかし、面目をつぶされた組織の方もそのまま黙ってはおらず、最後の犯人を捕まえた数週間後、2017年の母の日に、ミリアムは自宅前で十数発もの銃撃を受けて殺された。ミリアムが立ち上げた行方不明者の家族を支援する団体は息子が引き継ぎ、今も活動が続けられている。
■監督のテオドラ・アナ・ミハイが映画化した理由
本作は、現代のヨーロッパを代表する名匠のダルデンヌ兄弟、『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ映画祭パルムドールに輝いたクリスティアン・ムンジウ、『或る終焉』で知られるメキシコの俊英ミシェル・フランコがプロデューサーとして参加。テオドラ・アナ・ミハイ監督の劇映画デビュー作となる。
テオドラ・アナ・ミハイ監督は、生前にミリアムと話した際に聞いた、「毎朝、起きるたびに、この拳銃で自殺するか、人を撃ちたいと思う」という言葉に衝撃を受け、なぜ彼女がそんな過激な感情を持つようになったのかを知りたいと思い、彼女の物語を撮ることを決めたという。「彼女とその他多くの犠牲になった方々へのリスペクトから、この映画がポジティブな変化をもたらすことを願っている」と本作に込めた想いを語っている。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
映画『母の聖戦』(1月20日公開) (C)MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS,TEOREMA All rights Reserved.
映画は、ある日突然、娘を誘拐された主人公シエロが、容赦なく身代金をむしり取られ、たちまち孤立無援の極限状況に。誰にも頼れないことを悟ったシエロは、危険を顧みず犯罪組織への監視、追跡を行い、軍をも巻き込んで娘の捜索を繰り広げていくストーリー。
ごく平凡なシングルマザーの主人公がたどる想像を絶する運命――決して裕福ではない庶民が犯罪組織に搾取され、警察にも取り合ってもらえない非情な現実を描き出す。全編にわたって主人公シエロの視点でストーリーが展開し、観る者を誘拐ビジネスの闇の奥深くへと誘い、この世のものとは思えない理不尽な暴力が渦巻く光景を目撃させていく。入念なリサーチが重ねられた、リアリスティックな眼差しに貫かれた映像世界の強度に息をのまずにいられない。
■映画のモデルとなった、ミリアム・ロドリゲス
主人公シエロのモデルとなったのが、娘を誘拐されたのちに殺害された、ミリアム・ロドリゲス。復讐のため、たった一人で麻薬カルテルに挑み、犯人たち10人を監獄へと追いつめることに成功した実在の女性だ。
2012年、当時20歳だった娘のカレンを誘拐されたミリアムのもとには、犯人から脅しの電話が繰り返され、要求された高額の身代金を銀行でローンを組み工面し支払ったが、娘は解放されず、解放を約束された墓地で暗くなるまで待っていたという。
そこでミリアムは娘を誘拐した犯罪組織<ロス・セタス>のリーダー格の男に会い、娘を解放して欲しいと直接懇願した。しかし男は「組織は誘拐に関与していない。2千万ドルを払えば娘を見つける手助けをする」と言い張り、ミリアムは男に追加の金を支払ったが、一週間後には男と音信不通になる。代わりに誘拐犯を名乗る他の男たちから、「もう少しだけ金が必要だ」と追加で金を要求する電話がかかってくるように…。家族は一縷(る)の望みをかけて要求された金を払い続けたが、ついに娘は戻ってこないまま、誘拐から2年後の14年に、大量の死体の中から娘のカレンの遺骨が見つかった。
そして、ある日を境に、ミリアムは犯人たちへの復讐を決意したという。髪を短く切って赤く染め、世論調査員や医療従事者、選挙管理人のふりをして犯人たちの名前や住所を調べ、犯人たちの祖母やいとこに近づき情報を集めていった。
犯人の中には故郷に戻って敬虔なクリスチャンとして過ごしている男もいたが、ミリアムは男の祖母に近づき、男が通っているという教会を聞き出し、ミサに参加していた犯人の男を見つけ出して警察に引き渡した。教会の中で男を捕らえたとき、男は慈悲を乞いたが、「娘を殺したとき、お前の慈悲心はどこにあった?」とミリアムは言い返したという。
また別の犯人は、ミリアムがリーダー格の男に会った際に無線から漏れ聞こえた名前から男のSNSを見つけ出し、一年にわたり彼のSNSを監視し続け、交友関係をひも解いていき、ついに男が路上で花売りをしていると情報を掴む。ミリアムは銃を持ってすぐに現場へと向かい、逃亡する男を追いかけて捕らえ、警察へと引き渡すまでの約1時間、「動いたら撃つ」と言って犯人の背中に銃を押し付け続けていたという。
そうしてミリアムは、娘の誘拐殺人事件に関わった犯人のうち、生存しているほぼ全員となる10人もの犯人を逮捕へと追いつめた。正義を求めるミリアムの鬼気迫る行動は、組織の報復を恐れて見て見ぬふりをしてきた街の人々に大きな衝撃を与え、多発する犯罪に苦しむ市民を熱狂させ被害者たちを勇気づけた。
しかし、面目をつぶされた組織の方もそのまま黙ってはおらず、最後の犯人を捕まえた数週間後、2017年の母の日に、ミリアムは自宅前で十数発もの銃撃を受けて殺された。ミリアムが立ち上げた行方不明者の家族を支援する団体は息子が引き継ぎ、今も活動が続けられている。
■監督のテオドラ・アナ・ミハイが映画化した理由
場面写真 (C)MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS,TEOREMA All rights Reserved.
テオドラ・アナ・ミハイ監督は、生前にミリアムと話した際に聞いた、「毎朝、起きるたびに、この拳銃で自殺するか、人を撃ちたいと思う」という言葉に衝撃を受け、なぜ彼女がそんな過激な感情を持つようになったのかを知りたいと思い、彼女の物語を撮ることを決めたという。「彼女とその他多くの犠牲になった方々へのリスペクトから、この映画がポジティブな変化をもたらすことを願っている」と本作に込めた想いを語っている。
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2023/01/10