映画配給大手の東宝13日、今年（2022年）配給した23作品の興行収入を合計が、630億円前後になる見込みであることを明らかにした。この日、都内で開催した「2023年配給作品ラインナップ発表会」の席で、取締役専務執行役員・市川南氏らが報告した。

　年間興行収入500億円超えは19年連続、600億円超えは11年連続。最近5年間の平均は670億円前後で、今年の630億円は、「コロナの影響が残る中ではまずまずの1年だった」と市川氏。

　今年は、昨年12月公開の『あなたの番です　劇場版』（興行収入20億円）、そして『劇場版 呪術廻戦0』（同138億円）の大ヒットで幕を開けた。さらに11月11日より公開中の『すずめの戸締まり』がすでに86.6億円に達し、年内にも100億円を突破する見込みであることから、「興行収入100億円超えの作品が年に2本出せたのは当社では初めてのこと」（市川氏）。4月公開の『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』も97.8億円の成績を残し、「ビッグヒットを連発できたことが最大のトピックス」（同）と語った。アニメ作品のヒットが目立つが、同社の興行収入のアニメと実写の比率は53：47（％）。

　業界全体の年間興行収入は2100億円前後になる見込み。コロナ禍となって以降、2020年が1432億円、昨年が1618億円だったことからすると大きなジャンプアップとなる。昨年、100億円を超えた作品は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』だけだったが、今年は東宝の2作品に加え、『トップガン マーベリック』（135億円）と『ONE PIECE FILM RED』（182億円）も大ヒット。100億円超えの作品が年に4作品あったのは、2000年以降で最高の年間興行収入を記録した2019年以来となる。

　一方で、ヒットの基準とされる10億円を下回った作品が東宝では11作品あり、執行役員の吉田充孝氏は「10億円のハードルが以前より上がったような感触」「100億円超えの4作品がけん引しての2100億円。全体が底上げされたというわけではない」との見解を示した。「コロナ禍前は邦画洋画合わせて60本前後あった10億円超えの作品が、50本以上出てくるようになると、“回復した”と実感を持って言えるのではないか」と話していた。

　今週末には、同社配給作品の『Dr.コトー診療所』、さらには全世界興行収入No.1の『アバター』の続編『アバター：ウェイ・オブ・ウォーター』が公開。「当社の配給作品もあわせて、今年の冬休み興行は大変な賑わいとなりそう」（吉田氏）と期待を寄せていた。

■興行収入10億円以上の東宝配給作品

『劇場版 呪術廻戦0』　138.0億円
『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』　97.8億円
『すずめの戸締まり』　86.6億円※上映中　12月13日時点
『キングダム2 遥かなる大地へ』　51.6億円
『シン・ウルトラマン』　44.4億円
『沈黙のパレード』　29.7億円※上映中　12月11日時点
『コンフィデンスマンJP 英雄編』　28.9億円
『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021』　26.9億円
『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』　20.4億円
『あなたの番です 劇場版』　20.0億円
映画『おそ松さん』　16.7億円
『今夜、世界からこの恋が消えても』　15.3億円