『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命‐』や『リーガル・ハイ』『逃げるは恥だが役に立つ』など、多くの作品でさまざまな役を演じ分け、天性の癒し系オーラで人々の心を掴み続ける俳優の新垣結衣。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)では、苛酷な境遇に翻ろうされる女性をしなやかに演じ、新境地を開いたと注目を集める中、出演映画『ゴーストブック おばけずかん』が、7月22日より公開中だ。
本作は、『ALWAYS 三丁目の夕日』でなつかしい昭和の風景を、『DESTINY 鎌倉ものがたり』で妖しくも美しい黄泉の国を圧倒的なVFXで映像化した山崎貴監督の最新作。映画『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年)以来、2度目のタッグで再発見した魅力を互いに話し合った。
■コメディエンヌとして輝く新垣結衣に大満足!?
── まずお伺いしたいのは、13年ぶりの山崎監督作品への出演。いかがでしたか?
【新垣】台本を読んで本当にワクワクしました。異世界に迷い込んで冒険する物語の中に、「でも、大丈夫!」というポジティブなメッセージが込められていて、すごく好きだな、と思いました。そして、13年ぶりにまた山崎監督とご一緒できる喜びがありましたが、プレッシャーもありました。
【山崎】成長しているかどうか、比べられてしまうから?
【新垣】そうですね(笑)。
【山崎】大丈夫、大丈夫! 『BALLAD 名もなき恋のうた』に出てもらった時にも、すてきな方だと思っていましたが、その後、古沢良太さん脚本の『リーガル・ハイ』を見て、すごくくやしい思いをしたんですよね。新垣さんのコメディエンヌぶりが面白くて、その魅力、僕が引き出したかった!と、忸怩(じくじ)たる思いがあって。何かチャンスがあったら…、とずっと思っていました。
なので今回の作品で「子どもたち」と行動をともにする大人を入れたいな、と思った時に、「巻き込まれた先生」をやっていただくなら新垣さんしかいない、と思いました。新垣さんに演じてもらった臨時の新米教師・瑤子先生は、ちょっとネガティブなことを言ったりするんだけど、それを全部かわいらしくしてくれるんじゃないか、という期待を持ってダメもとでオファーしたら、引き受けてくださって、本当によかったです。
新垣さんのコメディエンヌのセンスは、僕の想像を超えてきましたね。モニターを観ながら、うわって(笑)。すごく的確なタイミングでボケてくれるし、ツッコミを入れてくれるし、ふくれっ面さえもかわいいって、なんなの!(笑) ものすごく作品が膨らんで、底上げしてくださったと思います。
【新垣】今、直接お聞きして心底安心しました(笑)。
【山崎】なかなか面と向かっては言えない(笑)。こういう取材の場じゃないと(笑)。
■新垣結衣の「無理をしない」スタンス
――子どもたちと対等に接して、一緒に冒険できる瑤子先生がとてもすてきだと思いました。
【新垣】教師としては新米ですが、大人だからこその弱さをさらけ出して、子どもたちに助けてもらうところもありながら、子どもたちがちゃんと頼れる存在という、とても魅力的な役をいただいたと思っています。
主人公の少年少女たちを演じる子役たちは本当に気遣い屋さんばかりだったので、“新垣結衣”がいる、というだけで緊張させてしまった部分もあったと思うのですが、私が気負って仲良くなろうとすると、ますます気を遣わせてしまいそうだったので、そこは無理をせず。一樹役の城桧吏くんが子どもたちのグループと大人たちのパイプ役になってくれたので、桧吏くんに頼れるところは頼って、私を頼ってくれることがあったら全力で応えるから、いつでもどうぞ、と両手を広げているような気持ちでいようと心がけていました。
【山崎】湊役の吉村文香(よしむら・あやか)さんは、映画初出演で、演技も初めてだったんだけど、なかなか僕の要求に応えられなくて落ち込んじゃったことがあったんですね。その時に、新垣さんが「外の空気を吸いに行こうか」と彼女に声をかけて、「私の最初の頃は、もっとひどかったよ」って励ましてくれたのは、本当にありがたかったです。
【新垣】本当に私の方がひどかったから(笑)。
【山崎】新垣さんと外でしばらく話した後、戻ってきた時の湊の顔つきが明らかに変わっていました。デビューして、初めてお芝居した時はどんなだったか、そこから始まって、今がある。先に通ってきた人が言うことには、絶対的な説得力があると思うんです。新垣さんが、初めて演技をする子に寄り添っている姿、なんていいもの見れたんだ、と感激していました。
【新垣】子どもたちをリラックスさせることに関しては、山崎さんの方が何枚も上手だと思います。現場では、よく虫を捕まえていたり、他愛もないおふざけをしたり、積極的にコミュニケーションを取ってらっしゃって。どのキャストより子どもらしく感じられる瞬間もありました。そういう少年性みたいなものを持っている方ですよね。
【山崎】少年性と言うとすごくいい感じに聞こえますけど、ただ精神年齢が低いだけです(笑)。
【新垣】『BALLAD』でご一緒した時は、私も20歳前後でまだまだ子どもみたいなものだったので、30歳を過ぎて、今回の現場で改めて気づくことがたくさんありました。山崎監督の作品には、童心が沸き立つようなものがどの作品にもあって、少年少女が主人公の『ゴーストブック おばけずかん』はそれがストレートに出ていますけど、大人向けのシリアスな作品にも、これからの日本や世界で生きていく若い世代の人たちへのメッセージが込められている。『BALLAD』もそうだった…、と新しい発見、気づきがありました。
――「これからの日本や世界で生きていく世代の人たちへのメッセージ」というのは意識されているのですか?
【山崎】そうですね、作品ごとにいろいろあるのですが、『ゴーストブック おばけずかん』では、原作を読んだ時に、日常に潜むおばけと出会ってしまった時に「でも、大丈夫!」と思える対処法を教えてくれるところにひかれて、僕も「でも、大丈夫!」という言葉を今の子どもたちに言ってあげたい!と素直に思ったんです。情報が足りなくても、多すぎても、不安になることだらけの現代社会で、たいした根拠はないけれど、「でも、大丈夫!」って言ってもらえるだけで、ちょっと安心できると思うんですよね。それだけは、伝えたいと思って、新垣さん演じる瑤子先生に代弁していただきました。「でも、大丈夫! 何とかなってきたんだから」って。
■久々に子どもたちメインの作品を作れてすごくうれしい
――「何とかなってきた」レベルだけど、「大丈夫」っていいですよね。無理していない感じも。新垣さんは普段から、無理しないタイプですか?
【新垣】無理しないように心がけるタイプです。私の場合、無理をすると失敗するので。
【山崎】それはこれまでの経験で得た教訓ですか?
【新垣】はい。気合入れると、ろくなことがない(笑)。気負っちゃダメなんです。
【山崎】肩の力を抜くことの大切さもありますよ。
【新垣】そうですよね。私は、ここ絶対外せない、みたいなところで、ビシッと決められるスター性みたいなものはないので、「できなかったら、できなかったで、しょうがない」と思ってるくらいの方が、少しリラックスできてむしろうまくいったりするんです。
【山崎】「しょうがない」って、簡単にあきらめちゃっているような否定的なイメージに聞こえることもあるんだけど、新垣さんが言うとなんだか前向きに聞こえるんですよね。今回の映画でも瑤子先生がネガティブな発言をしてても、失敗してても、いい感じに見える。そう見せてしまう、真似のできない技を新垣さんは持っているんですよ。それも一種のスター性じゃないかと思いますね。
――少年少女を主人公にしたデビュー作『ジュブナイル』(2000年)から約20年を経て、山崎監督にとっては原点回帰。集大成といったら大げさですか?
【山崎】大げさです(笑)。いろんなジャンルの映画を作ってきましたが、これもラインナップの一つですね。集大成の作品なんて、作りたくないですよ、終わっちゃうじゃないすか(笑)。
ありがたいことに、子どもの頃に『ジュブナイル』を観て、映画に興味を持ってこの業界入りました、みたいなことを言ってくれる人がいて、公開当時、主人公たちと同じ年頃だった人たちのマイルストーンになっているんだな、ということを知るたびに、喜びと責任の重さを感じてきました。またいつか、子ども時代を象徴する映画、子どもの頃を思い出した時に、一つの座標になるような映画を作りたいな、と思っていたので、本当に久々にこういう子どもたちメインの作品をつくれて、すごくうれしいです。
――新垣さんにとって『ゴーストブック おばけずかん』は何か節目の作品になりそうですか?
【新垣】作品一つひとつの積み重ねで今があると思っているので、振り返れば全部の作品に節目を感じます。そしてここ数年は、また新たな役割を経験して学びたいという思いがあって、傍で作品を支えるような役どころにも少しずつ挑戦させてもらえるようになり、今回もまさにそういった役どころだったので、自分にできることを模索しながら、勉強の日々でした。また一つ貴重な経験をさせていただいてとても有り難かったです。
本作は、『ALWAYS 三丁目の夕日』でなつかしい昭和の風景を、『DESTINY 鎌倉ものがたり』で妖しくも美しい黄泉の国を圧倒的なVFXで映像化した山崎貴監督の最新作。映画『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年)以来、2度目のタッグで再発見した魅力を互いに話し合った。
■コメディエンヌとして輝く新垣結衣に大満足!?
── まずお伺いしたいのは、13年ぶりの山崎監督作品への出演。いかがでしたか?
【新垣】台本を読んで本当にワクワクしました。異世界に迷い込んで冒険する物語の中に、「でも、大丈夫!」というポジティブなメッセージが込められていて、すごく好きだな、と思いました。そして、13年ぶりにまた山崎監督とご一緒できる喜びがありましたが、プレッシャーもありました。
【山崎】成長しているかどうか、比べられてしまうから?
【新垣】そうですね(笑)。
【山崎】大丈夫、大丈夫! 『BALLAD 名もなき恋のうた』に出てもらった時にも、すてきな方だと思っていましたが、その後、古沢良太さん脚本の『リーガル・ハイ』を見て、すごくくやしい思いをしたんですよね。新垣さんのコメディエンヌぶりが面白くて、その魅力、僕が引き出したかった!と、忸怩(じくじ)たる思いがあって。何かチャンスがあったら…、とずっと思っていました。
なので今回の作品で「子どもたち」と行動をともにする大人を入れたいな、と思った時に、「巻き込まれた先生」をやっていただくなら新垣さんしかいない、と思いました。新垣さんに演じてもらった臨時の新米教師・瑤子先生は、ちょっとネガティブなことを言ったりするんだけど、それを全部かわいらしくしてくれるんじゃないか、という期待を持ってダメもとでオファーしたら、引き受けてくださって、本当によかったです。
新垣さんのコメディエンヌのセンスは、僕の想像を超えてきましたね。モニターを観ながら、うわって(笑)。すごく的確なタイミングでボケてくれるし、ツッコミを入れてくれるし、ふくれっ面さえもかわいいって、なんなの!(笑) ものすごく作品が膨らんで、底上げしてくださったと思います。
【新垣】今、直接お聞きして心底安心しました(笑)。
【山崎】なかなか面と向かっては言えない(笑)。こういう取材の場じゃないと(笑)。
■新垣結衣の「無理をしない」スタンス
――子どもたちと対等に接して、一緒に冒険できる瑤子先生がとてもすてきだと思いました。
【新垣】教師としては新米ですが、大人だからこその弱さをさらけ出して、子どもたちに助けてもらうところもありながら、子どもたちがちゃんと頼れる存在という、とても魅力的な役をいただいたと思っています。
主人公の少年少女たちを演じる子役たちは本当に気遣い屋さんばかりだったので、“新垣結衣”がいる、というだけで緊張させてしまった部分もあったと思うのですが、私が気負って仲良くなろうとすると、ますます気を遣わせてしまいそうだったので、そこは無理をせず。一樹役の城桧吏くんが子どもたちのグループと大人たちのパイプ役になってくれたので、桧吏くんに頼れるところは頼って、私を頼ってくれることがあったら全力で応えるから、いつでもどうぞ、と両手を広げているような気持ちでいようと心がけていました。
【山崎】湊役の吉村文香(よしむら・あやか)さんは、映画初出演で、演技も初めてだったんだけど、なかなか僕の要求に応えられなくて落ち込んじゃったことがあったんですね。その時に、新垣さんが「外の空気を吸いに行こうか」と彼女に声をかけて、「私の最初の頃は、もっとひどかったよ」って励ましてくれたのは、本当にありがたかったです。
【新垣】本当に私の方がひどかったから(笑)。
【山崎】新垣さんと外でしばらく話した後、戻ってきた時の湊の顔つきが明らかに変わっていました。デビューして、初めてお芝居した時はどんなだったか、そこから始まって、今がある。先に通ってきた人が言うことには、絶対的な説得力があると思うんです。新垣さんが、初めて演技をする子に寄り添っている姿、なんていいもの見れたんだ、と感激していました。
【新垣】子どもたちをリラックスさせることに関しては、山崎さんの方が何枚も上手だと思います。現場では、よく虫を捕まえていたり、他愛もないおふざけをしたり、積極的にコミュニケーションを取ってらっしゃって。どのキャストより子どもらしく感じられる瞬間もありました。そういう少年性みたいなものを持っている方ですよね。
【山崎】少年性と言うとすごくいい感じに聞こえますけど、ただ精神年齢が低いだけです(笑)。
【新垣】『BALLAD』でご一緒した時は、私も20歳前後でまだまだ子どもみたいなものだったので、30歳を過ぎて、今回の現場で改めて気づくことがたくさんありました。山崎監督の作品には、童心が沸き立つようなものがどの作品にもあって、少年少女が主人公の『ゴーストブック おばけずかん』はそれがストレートに出ていますけど、大人向けのシリアスな作品にも、これからの日本や世界で生きていく若い世代の人たちへのメッセージが込められている。『BALLAD』もそうだった…、と新しい発見、気づきがありました。
――「これからの日本や世界で生きていく世代の人たちへのメッセージ」というのは意識されているのですか?
【山崎】そうですね、作品ごとにいろいろあるのですが、『ゴーストブック おばけずかん』では、原作を読んだ時に、日常に潜むおばけと出会ってしまった時に「でも、大丈夫!」と思える対処法を教えてくれるところにひかれて、僕も「でも、大丈夫!」という言葉を今の子どもたちに言ってあげたい!と素直に思ったんです。情報が足りなくても、多すぎても、不安になることだらけの現代社会で、たいした根拠はないけれど、「でも、大丈夫!」って言ってもらえるだけで、ちょっと安心できると思うんですよね。それだけは、伝えたいと思って、新垣さん演じる瑤子先生に代弁していただきました。「でも、大丈夫! 何とかなってきたんだから」って。
■久々に子どもたちメインの作品を作れてすごくうれしい
――「何とかなってきた」レベルだけど、「大丈夫」っていいですよね。無理していない感じも。新垣さんは普段から、無理しないタイプですか?
【新垣】無理しないように心がけるタイプです。私の場合、無理をすると失敗するので。
【山崎】それはこれまでの経験で得た教訓ですか?
【新垣】はい。気合入れると、ろくなことがない(笑)。気負っちゃダメなんです。
【山崎】肩の力を抜くことの大切さもありますよ。
【新垣】そうですよね。私は、ここ絶対外せない、みたいなところで、ビシッと決められるスター性みたいなものはないので、「できなかったら、できなかったで、しょうがない」と思ってるくらいの方が、少しリラックスできてむしろうまくいったりするんです。
【山崎】「しょうがない」って、簡単にあきらめちゃっているような否定的なイメージに聞こえることもあるんだけど、新垣さんが言うとなんだか前向きに聞こえるんですよね。今回の映画でも瑤子先生がネガティブな発言をしてても、失敗してても、いい感じに見える。そう見せてしまう、真似のできない技を新垣さんは持っているんですよ。それも一種のスター性じゃないかと思いますね。
――少年少女を主人公にしたデビュー作『ジュブナイル』(2000年)から約20年を経て、山崎監督にとっては原点回帰。集大成といったら大げさですか?
【山崎】大げさです(笑)。いろんなジャンルの映画を作ってきましたが、これもラインナップの一つですね。集大成の作品なんて、作りたくないですよ、終わっちゃうじゃないすか(笑)。
ありがたいことに、子どもの頃に『ジュブナイル』を観て、映画に興味を持ってこの業界入りました、みたいなことを言ってくれる人がいて、公開当時、主人公たちと同じ年頃だった人たちのマイルストーンになっているんだな、ということを知るたびに、喜びと責任の重さを感じてきました。またいつか、子ども時代を象徴する映画、子どもの頃を思い出した時に、一つの座標になるような映画を作りたいな、と思っていたので、本当に久々にこういう子どもたちメインの作品をつくれて、すごくうれしいです。
――新垣さんにとって『ゴーストブック おばけずかん』は何か節目の作品になりそうですか?
【新垣】作品一つひとつの積み重ねで今があると思っているので、振り返れば全部の作品に節目を感じます。そしてここ数年は、また新たな役割を経験して学びたいという思いがあって、傍で作品を支えるような役どころにも少しずつ挑戦させてもらえるようになり、今回もまさにそういった役どころだったので、自分にできることを模索しながら、勉強の日々でした。また一つ貴重な経験をさせていただいてとても有り難かったです。
このニュースの流れをチェック
コメントする・見る
2022/07/27