『シン・ゴジラ』を大ヒットに導いた庵野秀明と樋口真嗣がタッグを組んだ『シン・ウルトラマン』で主演を務める斎藤工(40)。2001年に俳優デビューして以来、さまざまなドラマや映画、CMなどに出演し、映画監督としても精力的に活動を続けている。20年を超える俳優人生を経て挑んだビッグプロジェクト、映画『シン・ウルトラマン』の撮影現場で感じたことや、映画業界に対する思いなどを語った。
■“ウルトラマンになる男”役は、たくさん描いた夢の中にも含まれないほど想像外のこと
――本作の主演のお話をいただいたときの心境からお聞かせいただけますか。
【斎藤工】 役者を20年近く続けていく中で、さまざまな夢を描いてきましたが、まさか自分が“ウルトラマンになる男”を演じることになるとは想像もしてなかったです。最初はただただ驚きましたが、企画書を見た瞬間に“こんなすごいプロジェクトが進んでいたんだ!”と、俳優としてというよりも、いち映画ファンとしてワクワクしました。
――“ウルトラマンになる男=神永新二”という役とどう向き合って撮影に挑まれたのでしょうか。
【斎藤工】 俳優としてのつたないキャリアの中で積み上げてきたものを神永新二という役に注ぐというよりは、このプロジェクトに関わるスタッフの1人という意識で現場に立つようにしていました。イメージとしては、台本の神永のセリフだけにマーカーを引くのではなく、自分が関わっていないシーンも含めて大きな船を作り、その船で大海原に乗り出すというような心持ちで挑んでいました。
――客観的かつ裏方としての視点を持ちながら参加されたということでしょうか。
【斎藤工】 そうですね。自分も監督として映画を撮る際に、キャスティングがひとつのゴール地点というくらいの気持ちでオファーやオーディションをしているんです。ただ、主演だからといって背負いすぎても良くないなと感じたんです。建て付け上、主演は存在するんですけど、作品はみんなで作るものですし、庵野さんや樋口監督のように企画の立ち上げから関わったわけではないですし。僕がやらなければいけないのは自分の肉体を神永という役柄と作品に捧げることなので、すごくシンプルに本作と向き合っていたように思います。
――座長として現場の雰囲気をどのように作っていかれましたか。
【斎藤工】 座長感はまったくなかったと思います。なぜなら、僕はウルトラマンに変身した時点で「禍威獣特設対策室(通称:禍特対)」の専従班メンバーの前から姿を消してしまうからです(笑)。舞台挨拶などで主演として僕が挨拶をさせていただくこともありますが、あくまでも主役は“ウルトラマン”であって、もっというと神永を除いた禍特対の専従班メンバー4人が主人公といってもいいぐらいなんです。
――確かに神永は主人公にしては少しミステリアスな存在ですよね。専従班メンバー4人それぞれのキャラクターも個性豊かでした。
【斎藤工】 クランクイン前に台本と一緒にいただいた分厚い参考資料には、神永だけじゃなく専従班メンバー4人のプロフィールなどの情報も細かく書かれていましたし、現場でも専従班メンバーを演じた西島秀俊さん、長澤まさみさん、有岡大貴さん、早見あかりさんに対する樋口監督の接し方がとっても誠実で、それぞれのキャラクターにちゃんとスポットが当てられているので、そういう意味でも神永を含む禍特対の五角形はすごくおもしろい構図になっていますよね。ウルトラマンにとって知的生命体の群れである禍特対のメンバーがどう影響するのかという点にも注目して観ていただきたいです。特に滝(有岡)の役どころは……これ以上は劇場で(笑)。
■映画を愛するからこそ、公開される作品が一筋の光になることを期待する
――今年は『シン・ウルトラマン』、配信ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』、そして秋には映画『グッバイ・クルエル・ワールド』の公開が控えているなど監督業も含め多忙なスケジュールかと思いますが、お仕事の選び方で何か意識されていることはありますか?
【斎藤工】 なに言ってるんですか(笑)、僕なんかがお仕事を選ぶようになったら終わりですよ、その気持ちは常にあります。
――今年は監督としての活動を精力的に行ってらっしゃったのでしょうか?
【斎藤工】 来年公開予定の窪田正孝さん主演の『スイート・マイホーム』という映画の準備をしている最中です。監督として現場に入ってしまうと、どうしても作品との関わり方が深くなるのでなかなか余裕がなくて…。なので俳優として今年お芝居したのはのCMの撮影だけですね。
――本当ですか? すごく意外です。
【斎藤工】 本当にです(笑)! 話は変わるんですが、CMの効果って絶大で、僕は『シネマバード』という移動映画館を地方で開催することがあるのですが、そこで会った子どもたちから「あ! バイト探しのおじさんだ!」と言われたりするんですよ(笑)。
――今後は「あ! ウルトラマンだ!」と言われそうですね。
【斎藤工】 「ウルトラマンだ!」と言ってもらえたら本当にうれしいですね。『シン・ウルトラマン』は大きな出会いだったなと感じているので。実際に本作を通して“人間の有限性”について考えさせられましたし、“あと何回桜を見られるのだろうか”と思うこともありましたね。
――なるほど。
【斎藤工】 不思議なもので、自分のこの先の人生、永遠に続くような気がしてしまうのですが、そうじゃない。本作ではウルトラマンという地球外生命体から見た“いつか終わりがくる人間の儚さ”を感じました。その儚さを感じていたほうが豊かに生きられるんじゃないかなと気づかされました。今後は出会う人たちや作品に必然性を感じながら、より丁寧に向き合って、作品を作っていきたいなと思います。
――斎藤さんの言葉からはいつも映画への深い愛が伝わってきますが、監督としても数々の作品を発表されている斎藤さんにとっていまの映画業界はどのように見えていますか。
【斎藤工】 20年間この業界にいた身としては思うことがたくさんあります。Z世代の方々がアップデートした価値観でこの業界を新たに作っていくぐらいじゃないと変わらないんじゃないかなと思います。
――難しい問題ですね。
【斎藤工】 はい。それはすごく難しいことなんですよね。なので、いまは公開される作品が一筋の光になることを期待するしかないのかなと。本作には“未来への希望や期待を育んでほしい”という円谷プロの思いが詰まっているはずなので、いまこのタイミングで公開することにすごく意味を感じますし、ぜひ劇場で楽しんでいただけたらうれしいです。
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『シン・ウルトラマン』
2022年5月13日(金)公開
出演:斎藤 工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司/西島秀俊
山本耕史、岩松 了、嶋田久作、益岡 徹、長塚圭史、山崎 一、和田聰宏
企画・脚本・総監修:庵野秀明
監督:樋口真嗣
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取材・文/奥村百恵 写真/Mitsuru Yamazaki ヘアメイク/赤塚修二(メーキャップルーム) スタイリスト/三田真一(KiKi inc.)
■“ウルトラマンになる男”役は、たくさん描いた夢の中にも含まれないほど想像外のこと
――本作の主演のお話をいただいたときの心境からお聞かせいただけますか。
【斎藤工】 役者を20年近く続けていく中で、さまざまな夢を描いてきましたが、まさか自分が“ウルトラマンになる男”を演じることになるとは想像もしてなかったです。最初はただただ驚きましたが、企画書を見た瞬間に“こんなすごいプロジェクトが進んでいたんだ!”と、俳優としてというよりも、いち映画ファンとしてワクワクしました。
――“ウルトラマンになる男=神永新二”という役とどう向き合って撮影に挑まれたのでしょうか。
【斎藤工】 俳優としてのつたないキャリアの中で積み上げてきたものを神永新二という役に注ぐというよりは、このプロジェクトに関わるスタッフの1人という意識で現場に立つようにしていました。イメージとしては、台本の神永のセリフだけにマーカーを引くのではなく、自分が関わっていないシーンも含めて大きな船を作り、その船で大海原に乗り出すというような心持ちで挑んでいました。
――客観的かつ裏方としての視点を持ちながら参加されたということでしょうか。
【斎藤工】 そうですね。自分も監督として映画を撮る際に、キャスティングがひとつのゴール地点というくらいの気持ちでオファーやオーディションをしているんです。ただ、主演だからといって背負いすぎても良くないなと感じたんです。建て付け上、主演は存在するんですけど、作品はみんなで作るものですし、庵野さんや樋口監督のように企画の立ち上げから関わったわけではないですし。僕がやらなければいけないのは自分の肉体を神永という役柄と作品に捧げることなので、すごくシンプルに本作と向き合っていたように思います。
――座長として現場の雰囲気をどのように作っていかれましたか。
【斎藤工】 座長感はまったくなかったと思います。なぜなら、僕はウルトラマンに変身した時点で「禍威獣特設対策室(通称:禍特対)」の専従班メンバーの前から姿を消してしまうからです(笑)。舞台挨拶などで主演として僕が挨拶をさせていただくこともありますが、あくまでも主役は“ウルトラマン”であって、もっというと神永を除いた禍特対の専従班メンバー4人が主人公といってもいいぐらいなんです。
――確かに神永は主人公にしては少しミステリアスな存在ですよね。専従班メンバー4人それぞれのキャラクターも個性豊かでした。
【斎藤工】 クランクイン前に台本と一緒にいただいた分厚い参考資料には、神永だけじゃなく専従班メンバー4人のプロフィールなどの情報も細かく書かれていましたし、現場でも専従班メンバーを演じた西島秀俊さん、長澤まさみさん、有岡大貴さん、早見あかりさんに対する樋口監督の接し方がとっても誠実で、それぞれのキャラクターにちゃんとスポットが当てられているので、そういう意味でも神永を含む禍特対の五角形はすごくおもしろい構図になっていますよね。ウルトラマンにとって知的生命体の群れである禍特対のメンバーがどう影響するのかという点にも注目して観ていただきたいです。特に滝(有岡)の役どころは……これ以上は劇場で(笑)。
■映画を愛するからこそ、公開される作品が一筋の光になることを期待する
――今年は『シン・ウルトラマン』、配信ドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』、そして秋には映画『グッバイ・クルエル・ワールド』の公開が控えているなど監督業も含め多忙なスケジュールかと思いますが、お仕事の選び方で何か意識されていることはありますか?
【斎藤工】 なに言ってるんですか(笑)、僕なんかがお仕事を選ぶようになったら終わりですよ、その気持ちは常にあります。
――今年は監督としての活動を精力的に行ってらっしゃったのでしょうか?
【斎藤工】 来年公開予定の窪田正孝さん主演の『スイート・マイホーム』という映画の準備をしている最中です。監督として現場に入ってしまうと、どうしても作品との関わり方が深くなるのでなかなか余裕がなくて…。なので俳優として今年お芝居したのはのCMの撮影だけですね。
――本当ですか? すごく意外です。
【斎藤工】 本当にです(笑)! 話は変わるんですが、CMの効果って絶大で、僕は『シネマバード』という移動映画館を地方で開催することがあるのですが、そこで会った子どもたちから「あ! バイト探しのおじさんだ!」と言われたりするんですよ(笑)。
――今後は「あ! ウルトラマンだ!」と言われそうですね。
【斎藤工】 「ウルトラマンだ!」と言ってもらえたら本当にうれしいですね。『シン・ウルトラマン』は大きな出会いだったなと感じているので。実際に本作を通して“人間の有限性”について考えさせられましたし、“あと何回桜を見られるのだろうか”と思うこともありましたね。
――なるほど。
【斎藤工】 不思議なもので、自分のこの先の人生、永遠に続くような気がしてしまうのですが、そうじゃない。本作ではウルトラマンという地球外生命体から見た“いつか終わりがくる人間の儚さ”を感じました。その儚さを感じていたほうが豊かに生きられるんじゃないかなと気づかされました。今後は出会う人たちや作品に必然性を感じながら、より丁寧に向き合って、作品を作っていきたいなと思います。
――斎藤さんの言葉からはいつも映画への深い愛が伝わってきますが、監督としても数々の作品を発表されている斎藤さんにとっていまの映画業界はどのように見えていますか。
【斎藤工】 20年間この業界にいた身としては思うことがたくさんあります。Z世代の方々がアップデートした価値観でこの業界を新たに作っていくぐらいじゃないと変わらないんじゃないかなと思います。
――難しい問題ですね。
【斎藤工】 はい。それはすごく難しいことなんですよね。なので、いまは公開される作品が一筋の光になることを期待するしかないのかなと。本作には“未来への希望や期待を育んでほしい”という円谷プロの思いが詰まっているはずなので、いまこのタイミングで公開することにすごく意味を感じますし、ぜひ劇場で楽しんでいただけたらうれしいです。
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『シン・ウルトラマン』
2022年5月13日(金)公開
出演:斎藤 工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司/西島秀俊
山本耕史、岩松 了、嶋田久作、益岡 徹、長塚圭史、山崎 一、和田聰宏
企画・脚本・総監修:庵野秀明
監督:樋口真嗣
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取材・文/奥村百恵 写真/Mitsuru Yamazaki ヘアメイク/赤塚修二(メーキャップルーム) スタイリスト/三田真一(KiKi inc.)
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2022/05/13