小芝風花演じる気弱な目黒澪（めぐろ・みお）が、ボロボロのどん底に陥っていたところをシェアハウスで暮らす妖怪たちに拾われ、やがて直面するトラブルや悪い奴らを妖怪たちに助けられながら成敗し、成長していく姿を描いた異色のホラーコメディー『妖怪シェアハウス』。前作から約1年半の時を経て、4月9日から続編『妖怪シェアハウス−帰ってきたん怪−』がテレビ朝日系土曜ナイトドラマ枠（毎週土曜　後11：00〜11：30※初回は１時間カッパスペシャル）にて放送、６月には映画版が公開される。今やドラマ、映画には欠かせない存在となった小芝風花だが、ここ数年の活躍ぶりの中で自身の内面的変化を感じているという。

【写真】その他の写真を見る

――ドラマの続編とともに映画化まで発表されて、『妖怪シェアハウス』のファンとしてはうれしいのはもちろんですが、正直、びっくりしてしまいました（笑）。

【小芝】私もびっくりしました（笑）。前作の現場で「続編できたらいいね」という話はしていたのですが、本当にできるとは思っていなくて。タイトルは『妖怪シェアハウス』ですけど、松本まりかさんが演じる四谷怪談のお岩さんは幽霊ですし、池谷のぶえさんが演じる座敷童子は精霊ですし、「いろんな妖怪や幽霊がまだまだいっぱいいるので続編作れますね」「The MOVIEで帰ってきたら面白そうですよね」と話していたんです。そうしたら、本当に続編が決まって、映画化も実現したので、言ってみるものだな、と思いました。すごくうれしかったです。

――前作は放送後、ギャラクシー賞（テレビ部門2020年9月度月間賞）を受賞しました。「ポップな妖怪たちによるコメディというライトな入り口でありながら、根底にはフェミニズム的な問題意識が流れた脚本が秀逸。役者陣も個性豊かな妖怪たちを生き生きと演じ、抑圧され生きづらい社会のなかで、いかに自分の思うままに生きるのかを痛快に描いていた」と、評価されましたね。

【小芝】典型的なパワハラだったり、人を騙したりする人たちが出てきて、「こういう人、身近にもいる」と共感してもらえたと思うし、妖怪さんたちがやっつけてくれるところが痛快ですっきりするし、私自身も好きだったので、「自分の思いのまま、いかに生きていくのか」を前向きに考えられるドラマとして評価していただけて、うれしかったです。

――その前作では、人の目を気にして悪目立ちすることを恐れていた澪が、妖怪たちと関わる中で、「小説を書きたい」という夢を見つけ、「自分らしく生きる！」と息巻いて“妖怪ヒラキナオリ”としてシェアハウスから羽ばたいていき、ハッピーエンドだったはずが、世知辛い世の中、現実は厳しく気持ちだけでは上手くいかなかった!?

【小芝】そうなんですよ（笑）。前作は、澪の成長物語であるとともに、妖怪よりも人間のほうがよっぽど怖い、という話でもあったと思いますが、続編では妖怪さんたちが闇落ちするという恐ろしい現象が起きるなど、また前回とは違った楽しさがいっぱい詰め込まれています。前作で澪は人間に苦しめられてきましたけど、今作では人間に苦しめられて闇落ちした妖怪に苦しめられる。“闇落ちした妖怪”というのが新たな見どころです。映画版では妖怪たちがなぜ闇堕ちしたのか、が明らかになります。澪の新たな恋も描かれますよ。

――前作から1年半くらい経っていますが、澪を演じる上で意識していることは？

【小芝】人の目を気にしたり、“普通"でいなきゃと悪目立ちすることを恐れたり、どこか怯えて窮屈に生きてきた澪ですが、一方で騙されても騙されても人を信じる純粋な心の持ち主でもある。だから、妖怪さんたちもこの子を放っておけない、と手を差し伸べる。澪の純粋さ、というのは大事にしたいと思っています。あとは、妖怪さんたちを演じる皆さんのお芝居がとにかく個性的なので、それをしっかり受けて反応する、というのは気をつけてます。

　レギュラーの松本さん、酒呑童子役の毎熊克哉さん、池谷さん、ぬらりひょん役の大倉孝二さんはもちろん、なんでそんなにバッチリなキャスティングなんだろう、と驚くぐらい、毎回、妖怪役でゲスト出演してくださる方々のお芝居が本当に面白いので、パート2も楽しんでいただけると思います。

■自分らしく、楽しく仕事をしていくために

――本作の「自分の思いのまま、いかに生きていくのか」というテーマは、小芝さん自身にも思い当たる節があったのでしょうか？

【小芝】実は、私も前作の澪と同じように子どもの頃から周りの目を気にしたり、これを言うとわがままに思われるかな、と躊躇（ちゅうちょ）して我慢することが多かったんです。でも、自分の思いを伝えることは、わがままとは違う、と思えるようになってきたんですね。それも、ここ2年ぐらいのことなんですけど（笑）。自分のわがままなのか、そうじゃないのか考えた上で、言った方がいいと思ったことはちゃんと言葉を選んで、自分の気持ちを正確に伝えようと思うようになってから、自分らしさが出始めているんじゃないかな、と思っています。

――ちょうどこの2年くらい、主演ドラマが続いて目覚ましい活躍ぶりを拝見しておりましたが、内面ではそんな変化があったんですね。

【小芝】『妖怪シェアハウス』以降、成長物語が続いたこともあって、役に影響された部分もあると思います。『妖怪シェアハウス』や『モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜』（21年1月、テレビ朝日）では「自分らしく生きる！」ということを、単発ドラマ『書類を男にしただけで』（20年10月、TBS）では、「男だから」「女だから」という固定観念に囚われず、自分のやりたいこと、好きなことにまっすぐ向き合おうとする役をやらせていただいて、自分らしく、楽しく仕事をしていくために、ただ我慢するのではなく、どうしたらいいのか、を考えるようになりました。

　自分らしく、というのも難しくて、自分とは何なんだろう、と考え出すと迷宮入りするじゃないですか。自分はこうだ、とはっきり言えるほど、まだ自分のことを理解できていないんですけど、周りから言われることを気にしすぎて息苦しさを感じるのなら、我慢する努力よりも、自分自身が生きやすい状態に変えていく努力をした方がいいな、と思って少しずつ変わろう、と頑張っているところです。

――エゴサーチをよくするとおっしゃいましたが、惑わされませんか？

【小芝】惑わされますよ（笑）。「かわいくない」とか見た目に対するネガティブ意見は、「好みがありますもんね」と流せるけど、「声がキンキンしてて、聞こえづらかった」といった意見をいただいた時は、ドラマの途中で声を変えるわけにはいかないので、次に参加する作品で声のトーンを落としてやってみるといったことをしました。一回傷ついても、次に生かせると思うことは取り入れるようにしています。

――日々、繊細に取り組まれていらっしゃるんですね。頑張りすぎに気をつけてくださいね。

【小芝】私、ちょっとだけ要領がいいところもあって（笑）。日常の中で、ちょっと力を抜いて、ストレスを逃がすこともしているので、私の中ではバランスは取れているんですよね。なので、大丈夫です。