瀬戸内を拠点として活動し、この3月に結成5周年を迎えたアイドルグループ STU48。4月13日に発売されるニューシングル「花は誰のもの？」では、選抜メンバー全員による初のドラマミュージックビデオに挑戦。コロナ禍にみまわれた高校生たちが、学生生活を通して心の葛藤を乗り越えていく様子をさわやかに描き出している。このドラマミュージックビデオ『光は君に、あの日々に。』で監督・脚本を手掛けた金井純一氏と、主人公の一人を演じたSTU48・瀧野由美子に、作品について話を聞いた。

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■ドラマミュージックビデオ『光は君に、あの日々に。』は、学生時代の心の葛藤を描く青春群像劇

　ドラマミュージックビデオを作るにあたって、制作サイドから金井監督への要望は「学園もの、学校ものにしたい」ということだけだった。その要請を受け、約30分のドラマの中で金井監督が描いたのは、とある学生たちの高校3年間。同じ中学から同じ高校へと進んだ石田、瀧野、中村演じる親友3人組が、1人が別の部活を選んだことで決裂、友情にもヒビが入ってしまう。そんな彼女たちの高校生活を通して起こる苦悩や葛藤を、監督は瑞々しい青春群像劇として描き出している。

　制作にあたり、金井監督が最初に描いたテーマは「合唱部」。「ドラマを構成するうえで、何かしらの葛藤が物語の核となるのですが、その核を『歌えない』という設定にしようと思ったんです」と語る。実際にコロナのために中止になった合唱の大会があり、それもこの作品のモチーフになっているという。

　一方、ある事情から親友たちとは異なる道を進むことを決意する瀧野演じる由美子には、「写真部」を設定。このキャスティングは金井監督が決めたという。「メンバーのプロフィールを見ていて、瀧野さんが一番写真部っぽいなと思ったんです。また、この時は彼女が撮り鉄だとは知らなかったのですが、電車の写真などを撮っていると後から聞いて、ピッタリだと思いました」。監督から「写真部っぽい」と言われた瀧野は、「正直、意外な感じがしました。私は学生時代に吹奏楽をやっていたので、音楽のイメージを持たれることが多いんです。今回の設定には、こういうふうに見てくださる方もいるんだなあと新鮮な気持ちでした」と、監督の鋭い指摘に驚いたようだ。

　この作品では、コロナ禍の学生の様子も描かれる。メンバーの顔がマスクで隠れてしまうことには若干の不安もあったというが、リアリティを追求するため、撮影はあえてマスク着用のままで進めた。「アイドルの子を僕が撮るのであれば自分なりのやり方で進めたいと思ったし、コロナ禍というドラマの設定に基づいて、マスクを付けた状態の方が、彼女たちも感情を作りやすいだろうと思ったんです」と、作品作りへのこだわりを滲ませた。

　監督にとって青春時代とは「高校3年間という“始まりと終わり”があるからこそ、勢いがあって切ないと感じる」という。その瞬間にしか得られないこと、感じられないことがあるからこそ、今作でもその一部分を切り取りたかったそうだ。「男女問わず、高校時代はみんな顔が大人へと変わるし、STU48 のメンバーもきっと、1年後には一段と成長していくと思うんです。今回この作品に関わって、今しか撮れない一瞬を収められたこと、この作品に携わることができてよかったなって思います」。

　また、ぎりぎりまで決まらず、追い詰められた中で生まれたというタイトル『光は君に、あの日々に。』についても「コロナの苦しい状況は続いていますが、そんな時だからこそ何かを得られる、プラスになるものがあるんじゃないか、誰かに“希望の光”を当てるような作品になったらいいな、そんな思いで付けました」と特別な思いを寄せる。作品では、コロナ後の世界も少しだけ映し出されているが、早くマスクを外して自由に行動できる日々が戻ってきてほしい、そんな願いも込められているようだ。

■ドラマ主題歌の新曲「花は誰のもの？」、「チャレンジングな歌詞をしっかりと歌い上げてくれたメンバーに感謝」

　ドラマのクライマックスでは、STU48の新曲で今作の主題歌でもある「花は誰のもの？」の歌唱シーンが登場する。今の時代を切り取ったような鋭い歌詞に、監督は「秋元先生の作品でもあまり見たことのない歌詞で、初めて見たときは衝撃的でしたが、そんな歌詞だからこそ、歌っている子たちの感情と化学反応を起こすような気がしました」と語る。また、難しい歌詞だけにメンバーからは「どういう気持ちで歌えばいいのでしょう？」との相談もあったそうで、「歌詞の背景に描かれている出来事を思いつつも、ドラマの中では「歌を歌えた」という喜びもあるから、最後は笑って歌おう」と話したという。結果、「素晴らしい歌唱シーンになりました」と手応えを隠さない。「楽曲もドラマミュージックビデオも、観た人の心に深く刻まれる作品になるんじゃないかと思います。チャレンジングな歌詞をしっかりと歌い上げてくれたメンバーに感謝します」とメンバーを絶賛した。

　今作については瀧野も「この曲を通じて、私たちの幸せへの願いを伝えられたらと思いますし、多くの人がこの曲を通じて前に進むことができたり、幸せな気持ちになっていただければいいなと思います」と語ってくれた。

■困難を乗り越えた5年間。5月には念願の広島アリーナコンサート開催

　先月3月31日にSTU48は結成5周年を迎えた。1期生の瀧野は、デビュー時を「『暗闇』の詞と曲をいただいた時に、『私たちはこの曲でデビューするんだ』と思ったことを覚えています。また、初ステージでファンの人たちを見たときは、『私やSTU48を応援してくれる人ってこんなにいるんだ』と感動しました」と振り返る。

　だが、STU48の活動は決して順風満帆ではなかった。メジャーデビューシングルの発売延期、船上劇場「STU48号」での公演終了など、この5年間には幾多の困難も待ち受けていたのだ。それでも瀧野は「ファンの皆さんに支えられてここまで来ることができました。これから先に襲いくる困難にも、自分たちで乗り越えられるグループでありたいと思います」と力強く宣言した。

　5月3日には、結成5周年コンサートを広島グリーンアリーナで開催。瀧野は「グリーンアリーナは、私がSTU48に入った当初から『いつかこのステージに立ちたい』と目標にしていた憧れの場所。5周年の節目にメンバー全員でステージに立てるのをとてもうれしく思いますし、このコンサートを成功させて、次のステージに向かっていけるよう頑張ります」と意気込む。STU48の今後にも期待が高まる。
文：ちはらみどり

■金井純一プロフィール：
　1983年生まれ 埼玉県出身。監督・脚本。大学在学中よりドキュメンタリー作品をはじめとした映像作品を製作。2007年、「伊参スタジオ映画祭」で『求愛』がシナリオ大賞を受賞。2011年にはVIPO（映像産業振興機構）で選出され短編映画『ペダルの行方』の監督を務める。2012年、短編映画『転校生』が「第7回札幌国際短編映画祭」で最優秀監督賞、最優秀国内作品賞の2冠を達成。2013年には「ゆるせない、逢いたい」で劇場長編映画デビュー。以降、映画を始め、ドラマ、CM、MVなど多方面で活躍の場を広げている。

　2020年、DISH//の「猫」を原案としたTVドラマ「猫」（テレビ東京）の監督・脚本を務め反響を呼んだほか、2021年には「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」で2016年準グランプリ受賞したオリジナル企画『ファインディング･ダディ』が、『マイ・ダディ』のタイトルで、人気俳優・ムロツヨシ主演で映画公開。

■STU48プロフィール：
　2017年3月31日、国内6番目のAKB48姉妹グループとして誕生。「瀬戸内」エリアを本拠地とし、「1つの海、7つの県」を中心に活動するAKB48グループ初の広域アイドルグループとして、瀬戸内7県を巡業公演しながら、全国に「瀬戸内の声」を届ける活動とパフォーマンスを展開。2018年、シングル「暗闇」でCDデビュー以降、これまでに7作のシングルを発売。

　2022年3月31日で結成5周年を迎え、4月13日には8thシングル「花は誰のもの？」をリリース。5月3日には、デビューからの目標としていた広島県・広島グリーンアリーナで5周年コンサートを開催する。

■作品情報
STU48
8thシングル「花は誰のもの？」
2022年4月13日（水）発売
価格：Type A〜B各￥1,591（税込）

Type A 初回限定盤　KIZM-90721〜2
Type A 通常盤　KIZM-721〜2　
Type B 初回限定盤　KIZM-90723〜4　
Type B 通常盤　KIZM-723〜4
■選抜メンバー
★石田千穂、石田みなみ、今村美月、岩田陽菜、沖侑果、甲斐心愛、★瀧野由美子、★中村舞、福田朱里、峯吉愛梨沙（初）、川又あん奈（初）、小島愛子、高雄さやか、吉崎凜子（初）、吉田彩良（初）、立仙百佳
※★：トライアングルセンター／(初)：初選抜メンバー

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