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『キャプテン翼』高橋陽一氏、ゲームに託す原案 黄金世代の今後と「描ききれるか」の葛藤

 世界中にファンを抱えるサッカー漫画の金字塔『キャプテン翼』。現在連載中の『キャプテン翼 ライジングサン』はオリンピックで金メダルを目指す大空翼たち黄金世代の活躍が描かれている。そのオリンピックの先の物語が、KLabが提供する対戦型サッカーシミュレーションゲーム『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』で今秋から配信されることが決まった。新たなストーリーは原作の高橋陽一氏(61)が原案を手がけるストーリーで、大空翼たち黄金世代による欧州チャンピオンズリーグ(CL)での戦いも描かれる。大空翼の新たな物語はなぜゲームに託されたのか。高橋氏と、ゲームの大木啓彰プロデューサーに聞いた。
(取材・文/徳重龍徳)

『キャプテン翼』作者の高橋陽一氏 (C)ORICON NewS inc.

『キャプテン翼』作者の高橋陽一氏 (C)ORICON NewS inc.

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――『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』の新たな物語の原案を、なぜ高橋陽一先生が展開することになったのでしょうか。

大木:2020年に高橋先生監修のオリジナルキャラクターがゲーム内に登場しましたが、ユーザーからの反響も大きく、今年も同じような取り組みができないかと相談をしたところ、先生から「新ストーリーをやりませんか」と提案をいただきました。

高橋:前回は、僕以外の人が作ったシナリオやキャラクターを監修しましたが、この後もオリジナル要素が増えてきたとき、他人が作ったものだと、『キャプテン翼』の世界観としてOKかダメかの線引きが難しくなるのではと感じました。そうであれば、自分で生み出したストーリーをKLabさん側に渡し、後は料理してもらった方がスッキリすると思いました。

――今回新ストーリーでCLが描かれることはファンとしては非常に楽しみな点です。いつ頃から大空翼や岬太郎、松山光など黄金世代が欧州サッカーで活躍するストーリーを考えていたのでしょうか。

高橋:CLの構想は2000年ごろからありました。もともと『キャプテン翼 ROAD TO 2002』(2001〜2004年連載)では、翼がバルセロナに入団し、クラシコで戦うところまでしか描けませんでしたが、翼が欧州に挑戦したのならば、黄金世代の岬や石崎了、三杉淳といったメンバーも、彼の後を追って欧州クラブに移籍するだろうとは想像していました。2014年から『キャプテン翼 ライジングサン』でオリンピックの話を描き始め、その後に欧州での黄金世代を描こうと考えていたのですが、なかなかオリンピックが終わらず、漫画で描くとなるとだいぶ先になってしまう。僕の年齢からしても、すべて描き切るのは難しいという思いもあり、だったらゲームの中で展開していくのがいいんじゃないかと考えました。

――高橋先生原案となると、ゲーム側の責任は重大ですね。

大木:お話もらったとき、とてもうれしかったですけど、それよりも先生やファンに満足してもらえるものにできるかという不安も襲ってきました(笑)。

――『キャプテン翼』はファミコン時代から何度もゲーム化されている作品で、中には原作から離れ、オリジナルストーリーが展開したものもありました。高橋先生はゲーム化についてどう考えていますか。

高橋:ゲームは漫画とは違う楽しみ方ができます。ただゲームオリジナルの部分が増えると、世界観が崩れてきてしまう。ですので、今回は自分から新ストーリーを提案した面もあります。長い期間ゲームをやっていただいて、KLabさんが一番、翼の世界観をわかってくれている。そういう信頼関係があるからこそ、今回お願いできました。

――大空翼や日向小次郎たちはすでに欧州に渡っていますが、新たな選手たちがどのヨーロッパのクラブに移籍するかはファンにとって気になるポイントです。たとえば、石崎了はどこのクラブに入るのでしょうか。

高橋:石崎はイタリアのインテルに行きます。

――えっ! 驚きですね、どうして石崎はインテルだったんですか。

高橋:長友(佑都)選手っぽいなと思って(笑)。たとえインテルで通用しなくても、どこかのクラブにレンタルで出すという方法もあるじゃないですか。そういう経緯だったらインテルに入ってもおかしくないかなと考えました。

――なるほど(笑)。レンタルでいうと原作で翼のライバル日向は、イタリアの強豪ユベントスに移籍するも、そこで通用せずセリエCのレッジアーナへとレンタル移籍します。

高橋:やはり連載が長くなると、どんどん強い相手を倒していくので、どうしてもキャラクターが強くなりすぎてしまい、最後は神様みたいになってしまいます。なので、日向をセリエCのクラブに落としたり、翼にしても最初はバルセロナBへ落とし、神様から人間に一回戻してあげるんです。

――『キャプテン翼』は日本だけでなく、世界中で人気がある作品です。大空翼のバルセロナ入団がわかったとき、ライバルのレアル・マドリードが「なぜうちのクラブではないのか」と嘆いたという逸話もあります。そもそも、なぜ大空翼が所属したのはバルセロナだったのでしょうか。

高橋:実は偶然からなんです。1998年のフランスワールドカップに行った際、どうしてもフランス国内で宿が取れず、たまたまお隣スペインのバルセロナに泊まったんです。訪れたバルセロナの街を見た時「あっ、ここはいいな」と感じ、翼が入団するクラブをバルセロナに決めました。葵新伍が最初レンタルに出されるアルベーゼというクラブはイタリアのアルバという街にあるのですが、これも最初ミラノに泊まるつもりだったんですが、ホテルがとれず、ミラノから少し離れたアルバに泊まり「こんな小さな街にもクラブがあるんだ」と知ったことがきっかけです。

――この話を知ったら世界中のクラブが、高橋先生に地元に泊まってくれとお願いしそうですね(笑)。日本だけでなく世界中でアニメが放送された『キャプテン翼』は、ジネディーヌ・ジダン、ティエリ・アンリやフランチェスコ・トッティなど数々のスター選手がその影響を受けています。若い世代でもフランスのキリアン・エムバペは作品のファンだそうですね。

高橋:日本にプロモーションで来日したときに、向こうから会いたいと言われました。ヨーロッパではアニメがよく再放送され、ワールドカップとEUROがある年には『キャプテン翼』が放送されるみたいなんです。なので世代関係なく『キャプテン翼』見ているんだと思います。

――大空翼は海外でもやはり人気だと思うのですが、海外で意外な人気が出たキャラクターはいますか。

大木:浦辺君はヨーロッパの方で人気ですね。海外では漫画・アニメとも全話配信されているわけでないので、中学からずっと成長してきているキャラが基本的に人気で、浦辺君の場合はさらに性格的にも個性があるのが受けているようです。あと井沢も髪が長いからなのか、女子人気が高いです。ゲームも日本よりも海外の方が若いユーザーが多いです。

――先生の中には『キャプテン翼』をどのように終わらせるのかという構想はすでにあるのでしょうか。

高橋:『キャプテン翼 ライジングサン』の終わり方については、こういう感じになるだろうなというのはあります。ただ、オリンピックを描き終わった後は、漫画は続かないかもしれません。漫画を描く体力がないと思うんです。もちろん短い漫画は描けるとは思いますが、今回ゲームで展開するストーリーは膨大で、各キャラクターがクラブに行く話を描くだけでも漫画では1年以上連載が続いてしまう。各国の選手の試合を描くだけでどのくらいかかるのか。自分でやっても終わらないなと思います(笑)。翼の引退については今は何も考えていません。まずオリンピックまでは頑張って描きたいなと思っています。

――最後に『キャプテン翼』のファン、ゲームユーザーに向けメッセージをお願いします。

大木:『キャプテン翼』の新しいストーリーをゲームで描かせてもらうことに、僕らもすごいワクワクしています。これをきっかけに新しいユーザーさんにも遊んでいただけると思うので、その期待に応えられるものにできるよう頑張ります。

高橋:ゲームではオリンピックが終わった後の、翼の欧州での2シーズン目の戦いが描かれます。翼は国内のリーグ、CL、そして日本代表のワールドカップ予選も入ってくる。その三刀流の話を、ゲームの中で楽しんでもらえればと思います。

『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』公式サイト
https://www.tsubasa-dreamteam.com/

関連写真

  • 『キャプテン翼』作者の高橋陽一氏 (C)ORICON NewS inc.
  • (左から)高橋陽一氏、KLab・大木啓彰プロデューサー (C)ORICON NewS inc.
  • 『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』より、インテルに移籍した石崎了
  • 『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』プレイ画面
  • 『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』プレイ画面
  • 『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』プレイ画面

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