舞台、ドラマ、映画と出演作は枚挙にいとまがない俳優のムロツヨシが、映画『マイ・ダディ』で実写映画初主演を務めた。演じたのは、愛を信じ、一人娘の命を救うために奔走する父親・一男。「こんなにもまっすぐな愛の話はいまどき珍しい」と語ったムロは、愛に溢れた父親を演じたことで、自身の心境にも変化があったという。
■台本を読んで涙 オファーは即答で快諾
ムロが演じる一男は、8年前に妻に先立たれ、一人娘のひかり(中田乃愛)を男手ひとつで育てた男性。小さな教会で牧師をしつつ、生活のためにアルバイトをしながら、愛を説くハートフルな人物だ。
「プロデューサーさんから台本をいただき、自分がやるかどうかではなく、読み物として読んだのですが、いまどきには珍しい、ものすごくまっすぐな愛の物語で、感動して泣いてしまったんです。読んだ2時間後には、この物語のなかで生きさせてもらえるのならば、そうしたいと即答しました」。
とにかく一男はまっすぐでピュアな男。これまで経験してきた技術で芝居を組み立てるやり方は選択しなかった。
「普段はこれまでの成功、失敗体験から、しっかりと芝居を準備して、役について考えた上で、お芝居やせりふ、立ち姿や、仕草を組み立てていくのですが、今回はとにかく現場で生まれ出たものを切り取ってもらおうというアプローチ方法を試みました。僕にとってこういうやり方は初めてだったんです」。
■いま「寂しい」ってすぐに言ってしまいます
ムロの言葉通り、劇中娘のひかりとのやり取りは、非常に生々しく、琴線に触れるシーンが多数登場する。特にひかりが病におかされ、大きな決断を迫られる場面の、一男とひかりのやり取りは、父から娘への愛、娘から父への愛が溢れ出る、非常にエモーショナルなシーンだ。
近年、本作のように父親役を演じる機会は増えてきたムロ。特に『マイ・ダディ』では、ある意味で娘に無償の愛を施す役柄であり、家族というものの大切さを痛感させられる。自身の気持ちにも変化はあったのだろうか――。
「それはあると思います。『父親になりたい』なんて簡単には言ってはいけない重みはあると思いますが、自分が父親になったら、誰かと一緒に生活をすることになったら、どんな感じになるんだろうということを想像することは増えました。特にいまのこの時代、簡単に友だちとお酒を飲んだり、家に呼んだりできないので、より一人でいることの厳しさを感じています。僕は簡単に『寂しい』なんて言葉を吐く人間ではなかったのですが、いま『寂しい』ってすぐに言ってしまいますから(笑)」。
また、芝居をするという意味にも、厚みが増してきたという。
「これまで自分の夢のために頑張ってきましたし、いまもそれは変わらないのですが、同時に自分のためだけに頑張るのには、限界があるなというのも感じてきているんです。自分の娘に格好つけたいとか、結婚相手となる人の人生を背負って面白くしていきたいとか、いろいろな頑張り方を増やしていく時期なのかなって思いますね」。
■「愛を信じますか」という問いにムロは……
これまで数々の作品に出演してきたムロだが、意外にも本作は実写映画初主演となる。舞台やドラマの主演とは違う趣があったのか。
「正直、そこまでドラマや舞台と役割が違うかというと、変わらなかったのですが、やっぱり映画って劇場の大きなスクリーンで観賞する楽しさってあると思うので、その世界観のなかで、物語を背負わせていただけるというのは、大きな喜びでした。映画館に何度足を運ぶか分からないです(笑)」。
深い愛を描いた物語。ムロに「愛を信じますか」と問いかけてみた。
「即答で『信じます』と言えるほど、僕は愛について語れる人間ではないんですよね。僕はこれまでちゃんと『愛している』って言った記憶がないんです。だから、『愛を信じますか』という質問に対して『信じています』と言ってはいけないと思う。でも、愛を信じられるような人間になりたいし、この物語の世界を生きて、一男という男を演じた人間としては、『愛を信じています』と言いたいですね」。(取材・文:磯部正和)
■台本を読んで涙 オファーは即答で快諾
ムロが演じる一男は、8年前に妻に先立たれ、一人娘のひかり(中田乃愛)を男手ひとつで育てた男性。小さな教会で牧師をしつつ、生活のためにアルバイトをしながら、愛を説くハートフルな人物だ。
「プロデューサーさんから台本をいただき、自分がやるかどうかではなく、読み物として読んだのですが、いまどきには珍しい、ものすごくまっすぐな愛の物語で、感動して泣いてしまったんです。読んだ2時間後には、この物語のなかで生きさせてもらえるのならば、そうしたいと即答しました」。
とにかく一男はまっすぐでピュアな男。これまで経験してきた技術で芝居を組み立てるやり方は選択しなかった。
「普段はこれまでの成功、失敗体験から、しっかりと芝居を準備して、役について考えた上で、お芝居やせりふ、立ち姿や、仕草を組み立てていくのですが、今回はとにかく現場で生まれ出たものを切り取ってもらおうというアプローチ方法を試みました。僕にとってこういうやり方は初めてだったんです」。
■いま「寂しい」ってすぐに言ってしまいます
ムロの言葉通り、劇中娘のひかりとのやり取りは、非常に生々しく、琴線に触れるシーンが多数登場する。特にひかりが病におかされ、大きな決断を迫られる場面の、一男とひかりのやり取りは、父から娘への愛、娘から父への愛が溢れ出る、非常にエモーショナルなシーンだ。
近年、本作のように父親役を演じる機会は増えてきたムロ。特に『マイ・ダディ』では、ある意味で娘に無償の愛を施す役柄であり、家族というものの大切さを痛感させられる。自身の気持ちにも変化はあったのだろうか――。
「それはあると思います。『父親になりたい』なんて簡単には言ってはいけない重みはあると思いますが、自分が父親になったら、誰かと一緒に生活をすることになったら、どんな感じになるんだろうということを想像することは増えました。特にいまのこの時代、簡単に友だちとお酒を飲んだり、家に呼んだりできないので、より一人でいることの厳しさを感じています。僕は簡単に『寂しい』なんて言葉を吐く人間ではなかったのですが、いま『寂しい』ってすぐに言ってしまいますから(笑)」。
また、芝居をするという意味にも、厚みが増してきたという。
「これまで自分の夢のために頑張ってきましたし、いまもそれは変わらないのですが、同時に自分のためだけに頑張るのには、限界があるなというのも感じてきているんです。自分の娘に格好つけたいとか、結婚相手となる人の人生を背負って面白くしていきたいとか、いろいろな頑張り方を増やしていく時期なのかなって思いますね」。
■「愛を信じますか」という問いにムロは……
これまで数々の作品に出演してきたムロだが、意外にも本作は実写映画初主演となる。舞台やドラマの主演とは違う趣があったのか。
「正直、そこまでドラマや舞台と役割が違うかというと、変わらなかったのですが、やっぱり映画って劇場の大きなスクリーンで観賞する楽しさってあると思うので、その世界観のなかで、物語を背負わせていただけるというのは、大きな喜びでした。映画館に何度足を運ぶか分からないです(笑)」。
深い愛を描いた物語。ムロに「愛を信じますか」と問いかけてみた。
「即答で『信じます』と言えるほど、僕は愛について語れる人間ではないんですよね。僕はこれまでちゃんと『愛している』って言った記憶がないんです。だから、『愛を信じますか』という質問に対して『信じています』と言ってはいけないと思う。でも、愛を信じられるような人間になりたいし、この物語の世界を生きて、一男という男を演じた人間としては、『愛を信じています』と言いたいですね」。(取材・文:磯部正和)
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2021/09/25