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岡田惠和×井浦新『にじいろカルテ』対談 脚本と演出と役者がプラスに作用した幸せなドラマ

 脚本家・岡田惠和氏が描く、スーパードクターじゃない3人の、笑って泣けるヒューマンドラマ、テレビ朝日系木曜ドラマ『にじいろカルテ』(毎週木曜 後9:00)。このたび、岡田氏とツナギでグラサン姿のヘンテコ外科医・浅黄朔を演じる井浦新の対談が実現した。

テレビ朝日系で放送中の木曜ドラマ『にじいろカルテ』外科医・浅黄朔を演じる井浦新(左)と脚本家の岡田惠和 (C)ORICON NewS inc.

テレビ朝日系で放送中の木曜ドラマ『にじいろカルテ』外科医・浅黄朔を演じる井浦新(左)と脚本家の岡田惠和 (C)ORICON NewS inc.

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【井浦】初めまして、お目にかかれて光栄です。

【岡田】こちらこそ、初めまして。今回、主演の高畑充希さんと少しおはなしした以外、誰とも顔合わせできずに撮影が始まって、現場を訪問することもなく、クランクアップした後の打ち上げもできなかったからですからね。

【井浦】そうですね。僕が『にじいろカルテ』のお話をいただいたのは、昨年の1月頃で、プロットを読んだだけでこれはすてきなドラマになるな、と直感しました。岡田さんの作品に参加できるのもうれしかったですし、高畑充希さん、北村匠海くんとは初共演なので、すごく楽しみにしていたんです。それから日増しに新型コロナウイルスの感染が拡大して、状況が日々代わっていく中で、どうなるんだろうと思っていました。

【岡田】今回の企画が立ち上がったのは、実は3、4年前。当初から『にじいろカルテ』というタイトルで、医療もののお話を考えていました。キャスティングも決まって、いよいよというところで新型コロナウイルスが流行してしまって、どう向き合っていったらいいのか、ドラマの制作者は悩んだと思うんですけど、『にじいろカルテ』はコロナには言及せずに作るということになりました。

【井浦】決定稿の台本をいただいた時にはとにかくうれしかったです。昨年の夏から暮れにかけて無事撮影できて、本当によかったと思っています。

【岡田】テレ朝の木曜9時で“医療ドラマ”を依頼された時は、ちょっとプレッシャーだったんですよ(笑)。なぜ自分に依頼が来たのか、から考えました。自分にしかできない、ほかとは違うアプローチの医療ドラマが書けたらいいなと思った時に、医者も普通の人間であること、人間であるからには強さも弱さもあること、医者であっても人に頼るとか、甘えるとか、助け合うといったことを肯定的に描けたら、自分らしい医療ドラマになるのではないかと思いました。そこはブレずにできたと思います。

■僕が書いた脚本よりも虹ノ村はファンタジック

【井浦】放送をご覧になっていかがですか?

【岡田】すっかり、ただの視聴者として見ていますけど、面白い! 今回、僕の仕事としては脚本を脱稿したところで終了していて、後は、お芝居をする役者の皆さんと演出の深川栄洋さんにお任せしていたので、放送を見てびっくりすることが多くて楽しいです。僕が書いた脚本よりも深川さんが演出した虹ノ村はファンタジックでしたね。まさか(第1話で)神戸浩さんがバスに乗っているとは思わなかった(笑)。神戸さんのバスおじさんが異世界に連れて行ってくれましたよね。今回、全話を深川さんが映画みたいに撮っているので、至るところに深川マジックがかかっている。何するかわからない演出家なので、俳優さんたちは面白かったんじゃないかな。

【井浦】深川マジック、ありましたね。僕が演じている朔先生も、演出のままやっていったら、今、皆さんがご覧になっている朔先生になりました(笑)。僕の場合、撮影初日に演じてみるまで、どんな人間になるのか、自分でもわからないんです。朔はどんな声でしゃべるのか、どう動くのか、話しながら身振り手振りが多い人なのか、少ない人なのか、カメラの前でやってみるまでわからない。だから、自分自身すごくクランクインを楽しみにしているんです。

【岡田】なるほど。朔先生を井浦さんが演じると聞いた時、視聴者は『アンナチュラル』のイメージと比較したり、重ねたりするんじゃないかといったことが頭をよぎったんですが、畑にいるシーンを書いているうちに払拭されました。朔先生は傷ついても引きずらずに前に進める人だと思えてきて、年上の朔先生がそういう人だからこそ、真空(高畑)も太陽(北村)も居心地よくシェアハウスできるんだろうな、こんなボスがいたらいいな、と思いながら書いていたんですよ。

【井浦】ボス感はゼロだったと思いますが(笑)、朔が日常的に畑仕事をしているというのは大事にしたいな、と思いました。自然の恵みから元気をもらっている生命感あふれる人でいたいな、と思っていました。

■やりやすいところが一つもない、全てが新鮮でした

【岡田】放送を見ていて、そんなこと脚本に書いたっけな?と思うシーンもあるけどね(笑)。

【井浦】それは深川監督がまったく想像していなかったような演出をつけたからです。撮影初日に言われたのは、「この人は突然、怒ってもいいんです」。そうか、怒っていいんだ、と思ったらどんどん声が出て、なんなら叫んだりもして、何やってもいい人なんだな、と思ったらすごく気持ちが楽になって、自由に動けるようになっていきました。自分の頭の中だけで演じていたら、もう少し過去を背負った物静かな朔先生になっていたと思います。

【岡田】僕は登場人物たちがわりとどうでもいいことをグダグダ言っているシーンを書くのが好きなんだけど、これまで携わったドラマの中で最も怒鳴り合っている会話劇になっていますね(笑)。脚本に「怒鳴り合う」と書いた覚えがないので、演出でそうなったわけだけど、結果的にダイナミズムが生まれるんだな、というのは僕にとっても発見でした。

【井浦】さっき、岡田さんは思った以上に虹ノ村はファンタジックだとおっしゃいましたが、ドラマの中の人として言わせてもらうと、真逆。虹ノ村の人たちはものすごく人間くさくて生々しい。岡田さんが書かれたせりふと、深川監督の演出によるものなんですが、すべての感情と身体の機能を使って生きている人たちばかりなんです。だから、演じる僕らはヘトヘト。すごくカロリーを使いました。声が枯れてしまうとか、マラソンを走ったみたいにフラフラになるとか、そんな撮影が続きました。特に診療所の3人の朝食のシーンは大変でした。

【岡田】本当は一番のんびりできそうなシーンなんだけど(笑)。

【井浦】大げさではなく、本当に3人で息切れしてました(笑)。これだけエネルギーを使って演じたものがどう伝わっていくんだろう、ちょっとやりすぎたんじゃないか、と思っていたんですが、オンエアを見るとちょうど良いんですよね。

【岡田】それは僕も想いました。脚本の文字面より、皆さんのお芝居の熱量が高いんですよ。朝食のシーンもさらっと見せることもできたと思うんですが、深川監督はそういうところでも熱い芝居をさせる。そうすることで感情がくっきり見えるし、躍動感も出る。脚本だけで作品が完成するわけではないんだなということを改めて思って、見てて楽しいです。

【井浦】岡田さんの脚本を読んで、なんてあたたかいんだろう、なんて優しいんだろう、と感じたところを、見ている人にも感じてもらうためには、物語の中の人たちがいろんな感情を吐き出して、ぶつけ合って、一生懸命に生きる姿を見せないとダメなんだな、と思いました。そういう全力の姿をすこし離れたところから見ると、元気をもらえたり、癒やされたりするんだな、って。僕にとってはやりやすいところが一つもないドラマでしたけど、全てが新鮮でした。

【岡田】『にじいろカルテ』は、脚本と演出と役者のバランスが絶妙で、いろんなプラス効果が生まれている気がしますね。いろんなことが結果的にうまい方向にいった、そういう幸せなドラマだと感じます。

■あと2話! 第8話あらすじ

(3月11日 後9:00〜9:54)

 夜中にトイレから出てきた太陽(北村匠海)。リビングから何やら声が聞こえ、そちらに向かおうとしたところ、なんと真空(高畑充希)と朔(井浦新)が恋仲であると発覚・・・!?あまりの衝撃に声を出すこともできず、思わず診療所を飛び出してしまう。

 パジャマのまま、朝靄の山奥を1人歩き続ける太陽。2人のことを思い出しながら、自らの過去の嫌な記憶もよみがえり…。飲み物を買ってベンチに座った太陽は、何もかも忘れるべく、イヤホンで大音量の音楽を聴いているうちに、眠りに落ちてしまう。しばらくして目覚めると、ベンチの隣には、冷たくなり心肺停止になった見知らぬ男性が…!?

 現場に駆け付ける真空と朔だが、応急処置も空しく死亡が確認される。連絡をもらった霧ケ谷(光石研)も立ち合い、診療所では警察が太陽の事情聴取など行い、亡くなった身元不明の男性が「自分の失踪した夫では…?」と勘繰る嵐(水野美紀)や、雪乃(安達祐実)と氷月(西田尚美)もやってくる。一方、霧ケ谷は“身元不明の男”の腕にあった痣に、自らの過去を思い出し…?

 そんな中、「自分がもう少し早く気づいていれば、彼を救えたのではないか」と自らを責め、ひとり涙する太陽。真空と朔にも自分が抱えるモヤモヤを伝えられず、虹ノ村の仲間への違和感も募って行き…。

 少しずつ狂い始める3人の距離。この関係が永遠に続くと思っていたのに――。果たして、身元不明の“彼”は誰だったのか…? そして、ついに訪れた虹ノ村診療所の危機。真空、太陽、朔の絆は壊れてしまうのか!?

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  • 第8話(3月11日放送)より (C)ORICON NewS inc.
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