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【おちょやん】作者・八津弘幸氏、杉咲花の「明るい魅力」大いに期待

 NHKで放送中の連続テレビ小説『おちょやん』(月〜土 前8:00 総合/前 7:30 BS4K・BSプレミアム※土曜日は1週間の振り返り)。本作の作者・八津弘幸(やつ・ひろゆき)氏が、実在した女優・浪花千栄子さんをモデルに、どのような物語を展開していくのか、この作品に込めた思いを語った。

連続テレビ小説『おちょやん』オリジナル脚本を手掛ける八津弘幸氏(C)NHK

連続テレビ小説『おちょやん』オリジナル脚本を手掛ける八津弘幸氏(C)NHK

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 八津氏は、1999年に脚本家としてデビュー。大胆な構成力とエンターテインメント性をベースにした重厚な人間ドラマだけでなく、笑って、泣ける人情ドラマも数多く手がける。主な作品に、『半沢直樹』『陸王』『下町ロケット』『ルーズヴェルト・ゲーム』といった池井戸潤氏原作のTBSドラマ、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)など。NHKでは、土曜ドラマスペシャル『1942 年のプレイボール』、ドラマ10『ミス・ジコチョー〜天才・天ノ教授の調査ファイル〜』(NHK)、連続テレビ小説は初。

 本作のモデルとなった浪花千栄子さんは、大正から昭和にかけて映画やドラマで活躍し「大阪のお母さん」と親しまれた上方喜劇(かみがたきげき)女優の草分け。オロナイン(大塚製薬)のホーロー看板でも知られる。

■千代がスターになることがこの物語の中心ではない

――初めて“朝ドラ”を手がけられることになった、今のお気持ちをお聞かせください。

【八津】率直にうれしかったです。私がまだ新人の頃、どんな作品を書きたいかと聞かれ、「日本で脚本を書くからには、やっぱり“朝ドラ”か“大河”ですね」なんて言っていたんです。それが実現でき、感無量といったところです。ただ話が本格的に進むにつれ、少しずつ喜びが恐怖に変わっていきました。よくよく考えてみると、あの“朝ドラ”だよなと(笑)。半年間ちゃんと走り切らなければと、不安でいっぱいです。

 書き始める前、周りの人たちから「八津さん、11話15分のペースは本当に難しいですよ。それを毎週5話続けるのは大変ですよ」とすごく言われて、自分でもそうだよなと思っていたんです。でも、実際に書き始めてみたら、そんなことはありませんでした。実は僕は以前、週刊誌で漫画の原作の仕事などもやっていたのですが、そのペースに近い感覚があるんです。15 分の中に毎回ちょっとした山を作っていくのは楽しいですね。毎日盛り上げすぎるのは“朝ドラ”に合わない気もしたのですが、結果的には良い方向にはたらいている気がしています。どうせ書かせていただくのですから、習慣で見ていただくのではなく、毎日本当に面白くて、どうしても見たくて見てもらえるような作品にしたいんです。そう思いながら、書いています。

――浪花千栄子さんをモデルに、どのような物語が展開されていくのでしょうか?

【八津】自叙伝を読んで、浪花さんは若い頃から相当ご苦労をされていて、さまざまな出来事を経験された方だとわかりました。ですから、半年という長いスパンを使って、浪花さんをモデルにした竹井千代という女性のキャラクターをしっかり描くことが、大前提だと思っています。

 ただ、浪花さんの人生をベースに考えたとき、僕はつい、一人の少女が日本一の女優を目指してスターへの階段を駆け上がっていくような作品を書きがちなんですが、今回はそれとは少し違います。もちろん、劇中劇もたくさんありますし、千代が厳しい師匠と出会ってみっちりしごかれるとか、劇団同士の競り合いが展開するといった話が出てきますが、彼女がスターになることがこの物語の中心ではありません。

 というのも、千代が芝居をしたいと思う理由は、ただただまわりの人々を喜ばせたい、元気にしたいからです。そしてそれは、彼女が家族に恵まれない日々を送ってきたという、それまでの生い立ちに絡んで生まれてきた願いだと考えているからです。だから、芝居や演劇の周辺でも、いつもさまざまなことが起きていて、千代は芝居を続けていく中で、芝居以外の問題も乗り越えて成長していく。そんな物語になっています。

■優しい気持ちになれる、それが喜劇

――主人公・竹井千代のキャラクターをどのように描いていますか?

【八津】浪花さんが書かれた自叙伝以外、資料は思ったより少なかったので、想像を膨らませながら竹井千代を描いています。浪花さんの人生は、喜劇女優にたどり着くまでに、いろいろな人に裏切られたり、孤独な部分もあったため、最初、心の中にそういうものを抱えている女性として千代を描いていました。

 でも、暗い部分を描き出そうとすると、かえってうそくさくなるというか、わざとらしくなる気がしたんです。そう感じてからは、どんな困難にぶち当たっても前を向いて生きていく、とにかく明るい千代を描くようにしています。

 たとえば、どうしようもない親父のテルヲは、何度も千代のことを裏切ります。千代はそのたびにどこかで父親が今度こそちゃんとしてくれるんじゃないかと期待してしまう。そんな彼女の葛藤をきちんと踏まえた上で、前を向いて生きていく
千代の姿を、うそのないように描いていきたいですね。

――千代役で主演する杉咲花さんに対する印象や期待感などをお聞かせください。

【八津】杉咲さんに決まったのは、脚本を書き始めてしばらくしてからでしたが、すごくラッキーだと思いました。杉咲さんのお芝居がめちゃくちゃうまいのは、改めて言うまでもないでしょう。でも、今まで彼女が演じてきた役は、ちょっと陰のある、何かを背負っている役が意外と多かった気がします。杉咲さんはお芝居がうまいので、作り手はつい、そうした深いところまで演じて欲しくなってしまうのだと思います。

 それはそれで確かに彼女の魅力なのですが、今回は、根っから明るい杉咲さんをできるだけ見せてもらえたらと僕は思っています。もちろん泣いたり苦しんだりするシーンはたくさんありますが、それをはねのけていく、杉咲さんの明るい魅力を出してもらえることを、大いに期待しています。

――千代と夫婦になる、天海一平というキャラクターをどのように描かれていますか?

【八津】浪花千栄子さんが結婚された渋谷天外さんがモデルです。天外さんについては、浪花さん以上に記録がたくさん残っていましたね。ハチャメチャなエピソードなどもいろいろありましたが、それを参考にしつつ、新たにキャラクターを作り上げていきました。

 実在の浪花さんと天外さんもそうなのですが、千代と一平は、境遇や心に抱えているものなど、似た部分がいろいろあるんです。そういう意味で、一平は唯一千代のことを本当に理解できるキャラクターという位置づけで存在しています。

 普通の人は千代の本当の根っこにある部分を理解できないのですが、 一平だけはわかる。普通の人はきれい事で片付けてしまうようなところも、一平だけは本質のところで千代と関わってくる。そんな存在です。一平は自分の夢に向かって頑張るのですが、ちょっと人間として破綻している部分もあるので、そこを逆に魅力的に見せられるといいなと思っています。

――改めて、この作品に込めた思いをお聞かせください。

【八津】この作品には、喜劇というファクターがどうしても外せません。「喜劇って何なんですか?」と問われると、人間のダメさ加減、滑稽さを描き、最後はほろっと泣けて、優しい気持ちになれる、それが喜劇かなと思っています。だからこそ千代も、自分が喜劇をやることでお芝居を見た人が元気になってくれたらと思っているわけです。ですから、この作品でも、喜劇のそういうところが見ている方に伝わるといいなと思っています。

 最近、世の中はSNSでもすぐに批判が起きたりして、とげとげしい時代になっていますよね。それが僕はすごく嫌なんです。人間はそんな完璧な人ばかりではないですし、ダメな人もいる、それでもみんな頑張って生きている。そういう人に対して許してあげられる優しさみたいなものを、みんなで持てたらいいなと思っているんです。

 この作品に出てくる役者たちはみんな本当にダメダメなキャラクターばっかりです(笑)。役者だけでなく、千代の家族も、千代が道頓堀で出会う人々も、みんなちょっとひと癖あるキャラクターばかり。でもどのキャラクターも、みんなどこかに必ずいい部分も持っている。そんな登場人物たちを見て、皆さん、笑ったり泣いたりしながら、ちょっとでも優しい気持ちになってもらえたらいいなと思っています。

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