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『MIU404』インスタ注目世界一の背景にコロナ禍のテレビ利用の変化

 綾野剛星野源主演の新作ドラマ『MIU404』(TBS)がアメリカや韓国らの新作テレビ番組を抑えて、インスタグラム上において世界で最もフォロワー数を獲得した番組であったことがわかった。この快挙の背景には、コロナ禍に伴うテレビ利用の変化も影響したのではないか。日本および世界のテレビ視聴状況を示した調査結果からその答えを探る。

金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)

金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)

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■星野源をはじめとする出演者のフォロワー数が原動力に

 米テレビ業界誌大手のWorldScreenがスイスのテレビ調査会社The WITの協力によりソーシャルメディアで話題を集めたテレビ番組を毎月報告する「Social Wit List」において、現在放送中のTBSドラマ『MIU404』が6月に公開された世界のテレビ番組の中で最もインスタグラム上で注目を集めた作品に輝いた。『MIU404』は警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」を舞台に、綾野剛と星野源がバディを組み、24時間のタイムリミットの中で事件解決に向けて捜査を行うストーリー。『逃げるは恥だが役に立つ』(16年)、『アンナチュラル』(18年)を手掛けた人気脚本家・野木亜紀子のオリジナル脚本ドラマである。

 今回「Social Wit List - June 2020」で発表された6月度のトップ10の番組には、人気ボーイズグループBTSが所属するBig Hitエンターテインメントと韓国最大のエンターテインメント企業CJグループのCJ ENMがタッグを組んだオーディション番組『I-LAND』や、米青春映画『Love, サイモン 17歳の告白』のスピンオフドラマ『Love, Victor(原題)』(Hulu)、世界ヒットしたリアリティ番組『ビッグ・ブラザー』のオーストラリア版のほか、メキシコ、スペイン、トルコの人気番組が並ぶ。そんななか、ドラマ『MIU404』はインスタグラム上で23万7000人(6月末時点のフォロワー数30.1万人)のフォロワーを獲得し、世界トップに躍り出た。報告書には出演者陣のフォロワー数も紹介され、星野源(140万人)、綾野剛(120万人)、岡田健史(76.2万人)のフォロワー数が、番組フォロワー数を押し上げた原動力になっていると解説している。

 ドラマ『MIU404』は初回放送時早々にツイッターのトレンド世界1位を獲得したことでも話題になった。こうしたSNS上で話題を集める理由には、今年4月に無料公開された楽曲「うちで踊ろう」のバトン企画の盛り上がりに象徴されるような星野源の注目度の高さが大きく作用している。加えて、コロナ禍でドラマ撮影が休止したため、ドラマ枠が再放送ドラマに入れ替わってしまった時期を経たことにより、新作が待ち望まれていたという、時宜にかなうものでもあった。さらにはこの期間に、生活者のテレビとの向き合い方にも変化が表れたことも要因の1つに挙げられる。

■テレビデバイス接触時間は2020年2月以降増加傾向に

 では、具体的にテレビ利用にどのような変化があったのか。インテージ社が6月に公表した調査『コロナ禍におけるテレビ利用の分析レポート』の「コロナ禍(2020年1〜5月)におけるテレビ接触ログの動向」によると、テレビデバイスへの接触時間は今年2月以降、増加したことが報告されている。同調査は全国の約199万台のテレビ機器から集まる接触ログデータとWEB調査によるアンケート回答をベースに、コロナ禍のテレビ利用を探ったもので、「コロナ禍による自粛生活中は在宅率が高まり、テレビがより利用されやすくなった」と分析されている。具体的には、テレビ接触時間の過半数を占める地上波は、4月6日週にピークとして下降に転じている。一方、テレビ画面における動画配信・共有サービスやゲーム等の利用が反映されるHDMI・アプリの接触時間は、5月に入っても増加傾向にある。

 テレビ利用の実態を探った「自宅のテレビ機器による動画配信・共有サービス利用状況」では、約3割が動画配信・共有サービスを利用しており、サービス別の利用率は「YouTube」「Amazonプライム・ビデオ」の順に高かった。また、「自宅のテレビ機器によるゲーム利用状況」では3割以上がテレビ機器でゲームを利用しており、『あつまれ どうぶつの森』人気で「Nintendo Switch」の利用が急速に進んでいることもわかった。これらの結果から、コロナ禍以前(2020年1月以前)と比べて、動画配信・共有サービスおよびゲームの利用が増加傾向にあることが明らかにされている。

 このほか、「コロナ禍におけるテレビ(地デジ放送)についての気持ち」(WEB調査)では、「コロナの現状や対策などを知る上で、有効な情報源になった」と全体の64.5%が評価。男女別では女性のほうがその意識が高く、全年代で平均値を上回っている。また、「自宅にいなければいけない中で、テレビが楽しみのひとつになった」も女性層の割合が高く、とくに10代〜30代が平均値を上回っているのが目立つ。その一方で、「テレビを見る機会が増えて、テレビ番組の面白さを再認識した」は全体平均で28.6%と低いことから、コロナ禍で「テレビが再評価される」機会になったものの、「テレビ番組の面白さを再認識」には至っていないという調査結果であった。

 調査を行ったインテージ社は「生活者におけるテレビ(デバイス)の利用時間をめぐって“コンテンツ消費・戦国時代” の激化が加速し、新しい局面を迎えることになった」とし、今後、テレビ(画面上)のコンテンツ競争力の強化がさらに求められると総括している。つまりテレビの画面は、コロナ関連のニュースを伝える地上波の報道・情報系番組の放送に止まらず、国内外の幅広いジャンルの新作から旧作を豊富に揃える動画コンテンツを映し、ゲーム利用も為される「多様なコンテンツを消費する場」へと、急速に移行が進んだとみてよいだろう。

■イギリス、国家危機の際は公共放送が重要な役割と認識

 海外でもコロナ禍におけるテレビ利用についての調査結果が多数報告されている。アメリカの調査会社VABの調査レポート「#AloneTogether: Culture in the Time of COVID-19」ではアンケート協力者の7割が「ロックダウン期間中にテレビ番組や映画をより多く見た」と回答し、コロナ禍によって、「生放送」と「ソーシャルメディア」の消費量が最も増えていることがわかった。また、イギリスの無料地上デジタル放送のプラットフォームFreeviewの調査では「ロックダウンが若い視聴者の間で公共放送に対する再評価につながっている」ことを示唆する興味深い結果も出ており、回答者(16−34歳)の4分の3が「国家危機の際、公共放送が国をまとめる上で重要な役割を果たしている」と認識していると報告。特に報道・情報系のコンテンツが当てはまるが、それに限らず、ドラマやリアリティショーなどエンタテイメント系を視聴する機会も広げた、と分析している。

 これは、イギリスでは既に若者の間でNetflixやAmazonプライム・サービスなど動画配信・共有サービスの利用が高いことを前提に、コロナ禍によって公共放送のコンテンツにも目が向けられたというものになる。日本と欧米では視聴環境に違いがあるものの、総じて言えることはプラットフォーム(地上波、オンライン)に関係なく、バラエティ、ドラマやニュースなどコンテンツそのものへの接触が増えているということだ。

 ドラマ『MIU404』が、インスタグラム上において世界で最もフォロワー数を獲得した番組となった背景には、新型コロナウイルスのパンデミックにより、生活者のコンテンツ接触時間の増加も大きく関係していると考えられる。そして、テレビ画面が、ジャンルを問わずさまざまなコンテンツを映すようになった今、コンテンツ消費のニーズを捉え、競争力に耐えうる新作は『MIU404』のような結果をもたらし、支持されるはずである。コロナ禍によって新作の撮影中止が余儀なくされ、進行が遅れている状況ではあるが、安全を期して制作も再開されていると聞く。各国で今後リリースされる新作にも期待が高まる。
(文・長谷川朋子)

関連写真

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