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映画で大フィーチャーされたB・スプリングスティーンの名曲10選

 ブルース・スプリングスティーンの音楽に影響を受けながら成長していく少年の姿を描いた映画『カセットテープ・ダイアリーズ』(公開中)。映画のストーリーの重要な要素としてスプリングスティーンの楽曲があり、要所要所でフィーチャーされている。一つの映画でこれだけスプリングスティーンの楽曲が使用されたのは、この映画が初めて。映画でも印象的なシーンで使用され、サウンドトラック盤にも収録されている「ブルース・スプリングスティーンの名曲10選」を紹介する。

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』(公開中)(C)BIF Bruce Limited 2019

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』(公開中)(C)BIF Bruce Limited 2019

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■ブルース・スプリングスティーンとは?

 ブルース・スプリングスティーンは、1949年9月23日米国ニュージャージー生まれ(現在70歳)。1973年デビュー以降、『明日なき暴走』『ボーン・イン・ザ・USA』など世紀の名盤の数々をリリース。トータルセールスは北米で6400万枚以上、全世界で1億2000万枚以上を記録する史上有数の売り上げを誇るアーティスト。グラミー賞20回、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、トニー賞をはじめ数多くの受賞歴を持ち、1999年にはソングライターの殿堂入りとロックンロールの殿堂入りの両方を果たしたロック界の重鎮であり大スーパースターだ。

 彼の歌には、どうやって苦闘と共に人生を生きるかについてのたくさんのメッセージがあり、「人生は厳しい。たくさんの不公平があるけど、そういった状況のなかでも、自分の進む道を見つけられるんだ」と教えてくれる。「友情」「絆」「信頼」など、その普遍的なメッセージは世界中の人々に勇気と希望を与え、彼の歌は国境、言語を超えて共感を呼び、心に強く響く。「We Are The World」を始め数多くのチャリティにも参加し、誠実な人柄とともにファンは親しみと敬意を込めて彼のことを「BOSS(ボス)」と呼んでいる。

■映画『カセットテープ・ダイアリーズ』について

 イギリスの町ルートンで暮らすパキスタン移民の高校生ジャベド。音楽と詩を書くことが好きな彼は、閉鎖的な街の中で受ける人種差別や、保守的な親に価値観を押し付けられる鬱屈とした生活から抜け出したくてたまらない。だがそんなある日、そのモヤモヤをすべてぶっ飛ばしてくれる、ブルース・スプリングスティーンの音楽と衝撃的に出会い彼の人生は変わり始める。

 そのきっかけになったのが友人ループスから貸してもらった『Born in the USA』と『闇に吠える街』のカセットで、初めてブルースの歌を聴き、ジャベドは大きな衝撃を受ける。「それまでの人生はかなり希望のない、ひどいものだったけど、それまで存在すると考えもしなかった新たな高みへ自分を駆り立てる可能性をもつ特別なものを発見した」のだ。

 若者が人生の意味を探す曲やその成長に伴う苦闘を描く曲の数々が、主人公ジャベドの境遇と心情に重なり合い、一つ一つの場面と、スプリングスティーンの歌とが見事にリンクし、映画をさらに感動的なものにしている。映画で使用される重要な曲に関しては歌詞字幕も付き、より一層わかりやすく観るものの心に直接訴えかけてくる。

■ブルース・スプリングスティーンの名曲10選

【1】「光で目もくらみ(Blinded By The Light)」
 73年のデビュー・アルバム『アズベリー・パークからの挨拶』収録。スプリングスティーン最初期の代表曲で、映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の原題(「Blinded By The Light」)にもなった。思春期から大人になりつつある若者たちの混沌と不安を描き、与えられた価値観や上からの指示に従順に従うのではなく、自ら一歩を踏み出すこと、そして倒れること、そのことが重要であると歌う。

【2】「明日なき暴走(Born To Run)」
 スプリングスティーンを一躍ロック界の英雄に押し上げた75年の名盤『明日なき暴走』のタイトル曲で彼の代名詞的な曲。現実の厳しさを知りながらも、夢見ることをあきらめず、まだ残り少ないチャンスに賭けようとしているこの曲の主人公は「陽の当たる場所」を目指して「愛が本物なのかどうか」知ろうとしている。

 映画では、主人公のジャベドと友人ループスが学校の放送室に忍び込み、「明日なき暴走」を全校中に響き渡らせ、外へと全力で走り出す。主役の3人がルートンの町を駆け抜け、路上で踊る楽しいミュージカル・シーンは、歌詞がジャベドの心情に重なり合りあい、誰もが高揚感を感じ心に突き刺さる、映画の感動的ハイライトの一つとなっている。

【3】「涙のサンダー・ロード(Thunder Road)」
 名盤『明日なき暴走』のオープニングを飾るスプリングスティーンの最も有名で人気曲の1つ。「勝つ」ために「負け犬でいっぱいの町」を後にする主人公は、閉塞状況を突き破り「アメリカの夢」を追い「約束の地」を目指して走り続ける。それは「逃避」ではなく、人生を直視し、厳しい現実を生きながらも、夢見ることを失わない、"夢や希望の追求"であることがわかる。なお、サントラには86年発表の『ライヴ 1975-1985』より75年のライヴ録音が収録されている。コンサートでは大合唱となる定番曲。

【4】「バッドランド(Badlands)」
 78年の『闇に吠える街』収録された、「俺は希望を信じている、いつの日かこのバッドランドから抜け出すことができるように」と希望を歌う賛歌。主人公も引用するこの曲の有名な一節、「生きることが素晴らしいと感じることは罪じゃない」は映画の中でも重要なキーワードとなっている。映画内でも非常に重要な曲として扱われ、この映画の主題歌のようでもある。また、映画の冒頭ではこの曲からの一節「夢を語るなら、それを現実にする努力をしろ」が引用されている。

【5】「プロミスト・ランド(The Promised Land)」
 78年の『闇に吠える街』収録。「約束の地を信じる」と歌うこの曲は、ジャベドがスプリングスティーンを初めて聴いた夜に、彼の心をわしづかみにした曲。自分の人生は自分で切り開いて生きなければならないという「決意」を感じる歌。サントラに収録されたヴァージョンは未発表ライヴ録音。

【6】「暗闇へ突走れ(Prove It All Night)」
 78年の『闇に吠える街』収録。「一晩かけて君への愛を証明しよう」と歌うこの曲はイライザとの初めてのキスの場面に効果的に用いられる。『闇に吠える街』から映画に使われた3曲は主人公ジャベドの人生の転機となった日々のまさにサウンドトラックともいえるもので、ボスのライヴでは今なおセットリストの骨格を成す重要曲である。

【7】「ハングリー・ハート(Hungry Heart)」
 初めて全米第1位に輝いたアルバム『ザ・リバー』(80年)収録の大ヒット曲で、スプリングスティーンの曲の中でも最もPOPな曲の一つ。日本でも大ヒットした。「誰もが満たされぬ心を持っている」と歌うこの曲はまさにジャベドの心境そのものともいえる。



【8】「ザ・リバー(The River)」
 『ザ・リバー』のタイトル・トラックで、スプリングスティーンの妹の、若くしての妊娠と結婚、彼女の夫の失業という実話をヒントに、人生の苦難を現実的に描いた歌。まさに「かなえられない夢は偽りなのか? あるいはもっと悪いものなのか?」という一節は、ジャベドにとって夢がかなわなかった場合の将来を考えさせられる歌だった。サントラには79年9月反原発を訴えたノー・ニュークス・コンサートでのライヴ録音を収録。

【9】「ダンシング・イン・ザ・ダーク(Dancing In The Dark)」
 全世界で計3000万枚を売り上げた84年の特大ヒット作『Born In The USA』からのファースト・シングルで全米最高位2位を記録した。映画ではジャベドが最初に聴くボスの曲だが、彼(と多くの若者)の抱える不満と不安を見事に表現している。「鏡に映る自分の姿を確かめ、服と髪型と顔を変えたいと思う」はまさに彼の心情そのものだ。そして彼はブルースの音楽に背中を押されて「何らかの行動」を起こしていく。

【10】「アイル・スタンド・バイ・ユー(I’ll Stand By You)」
 映画のエンドタイトルに流れるこの曲は、サントラの目玉でもある新曲。これは元々「ハリー・ポッター」シリーズの映画化第1弾『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年)のために書かれたもの。ブルースの3人の子どもたちが「ハリー・ポッター」の大ファンだったので、その依頼に喜んで応じ、監督にこの曲を送ったが、原作者のJ・K・ローリングスが有名アーティストの知名度を借りるようなことは一切やらない方針を打ち出したため、残念ながらお蔵入りしてしまった。なんと、この映画で初公開となった。

■ブルースも映画の出来に大満足

 同映画において、スプリングスティーンの歌は主人公の自己発見と成長の物語を語るガイドラインとなり、物語の中心に置かれている。ブルースがこの映画に17曲もの使用を許可したのは極めて異例なことだ。この映画のグリンダ・チャーダ監督はスプリングスティーンとのエピソードについてこう語っている。

 「楽曲の使用には彼の許可が必要だったから脚本を送ったの。その後、彼のマネージャーから、ブルースが読んだ、”僕はいいから“と言っている、とメッセージが来たの。つまりこのまま映画を作って大丈夫だよってことよ。ブルースの言葉はこの一行だけだった。でも、映画が完成して、他の人に見せる前にブルースに試写で観てもらった時に、上映中に何回か笑っていて、それには感動した。そして、終わった後に電気をつけたら彼が自分のところに来てくれてハグとキスをしてくれ、”自分の曲を大事にしてくれてありがとう”と言ってくれたの」

 サウンドトラック盤には上記10曲を含め、未発表音源3曲を含むブルース・スプリングスティーンの名曲全12曲のほか、80年代後半の時代背景を象徴するペット・ショップ・ボーイズa-ha等のヒット曲も収録。映画を見てブルース・スプリングスティーンに興味を持った人は、サントラで彼の魅力にも触れてほしい。

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