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コロナ禍の人々を楽しませた2つの音楽業界ドラマ Side『M』

 新型コロナ禍の影響でドラマの放送予定が狂いまくりの4月クール。その中で話題を集めたのが、2つの音楽業界ドラマだった。

ドラマ『M 愛すべき人がいて』アユ(安斉かれん)をアーティストとして売り出すマサ(三浦翔平)=第4話(6月13日放送)より(C)テレビ朝日/AbemaTV,Inc.

ドラマ『M 愛すべき人がいて』アユ(安斉かれん)をアーティストとして売り出すマサ(三浦翔平)=第4話(6月13日放送)より(C)テレビ朝日/AbemaTV,Inc.

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 90年代を舞台に平成の歌姫が誕生秘話を描くテレビ朝日・ABEMA共同制作のドラマ『M 愛すべき人がいて』(13日より第4話から放送再開)。そして、NHKの連続テレビ小説『エール』(29日以降放送一時休止)は、昭和初期に多くの流行歌を生み出したレコード会社の専属作曲家が主人公だ。劇中に時代を映す歌があふれているところなど共通点もある両作。

 今回は『M』の服部宣之プロデューサー(テレビ朝日)に話を聞いた。

■90年代のヒットナンバーと共に音楽業界の光と影を描く

――『M』は音楽業界ドラマとしてくくって、問題ないですよね(笑)

【服部P】もちろんです! 小松成美さんの小説『M 愛すべき人がいて』(幻冬舎)をドラマ化する際、僕たちがテーマとして掲げたのが、ジュークボックスドラマでした。大ヒットした『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)でQueenの曲が次々と流れてきたように、『M』では90年代のヒットナンバーをふんだんに使用しようと決めました。それが、このドラマの面白さの一つになると思いましたし、当時の歌が聴こえてくると、当時の記憶もよみがえってくるじゃないですか。時代性を表現する装置というか。そういった力が音楽にはあると思いますね。

――ジュークボックスドラマを目指すということで、実在するアーティストをオマージュした架空のキャラクターに、若手アーティストを起用して、90年代を彩ったヒット曲をリバイバルさせるという凝ったこともしていますよね。

【服部P】ライブシーンを意図的に多用しようと思い、ドラマの中では、TRFをモデルにした5人組ダンス&ヴォーカル・グループ 「USG」をlol-エルオーエル-、Every Little Thingがモデルの3人組女性ヴォーカル・ユニット「OTF」をFAKYHinaDa-iCE和田颯相川七瀬さんをモデルにした女性ロックシンガー「冴木真希」をYup’inが演じています。マサ行きつけのバーのマスター・佐山尚樹(水江建太)は、その当時はやっていた歌を弾き語りするのが“仕事”(笑)。ジェットコースターのようにスピーディーに展開していく中で、彼の歌を聴くと、「あ、今、あの頃の話をやっているのか」というのが確認できる、そういう役目も兼ねています。

――ドラマ内で流れた90年代のヒットソングのプレイリストが定額制音楽配信サービス「AWA」上に公開されていて、初めて聴いたという人から、「懐かしい」と感じる人まで、幅広い世代でから反響があるようですが、90年代の音楽業界の特徴的なところというのは、どういうところなのでしょうか?

【服部P】日本のバブル経済が終わった1992年頃から膨らんでいくのが音楽・エンタメ業界バブル。その旗手となったのがエイベックスでした。今では当たり前のように見かける、アーティストのTVスポットを始めたのも彼ら。それまでは、一部を除いて有名になるきっかけは、ほとんどがラジオかテレビの音楽番組で紹介されて人気に火がつき、そのゴールが年末の賞レースだったり、大みそかの『NHK紅白歌合戦』だったりしたと思うんですが、TVスポットで認知度を高めるとか、クラブでライブをするとか、東京ドームをディスコにしちゃうとか、新しいプロモーションの仕方をどんどん生み出して、CDを買う客層を広げたんだと思います。

 その仕掛け人が、三浦翔平さんが演じているマサのモデル、松浦勝人さんでした。浜崎あゆみさんがオールナイトニッポンのパーソナリティーを1回だけやったことがあるんですが、それも当時としては画期的なことで、ラジオ番組のPRスポットをテレビで打って、大々的に宣伝したんです。業界の非常識と言われようが、新しい野心的な挑戦をしていったのが松浦さん。歌姫の誕生の裏側で、マサがのし上がっていく姿というのも、ドラマ『M』では丁寧に描いていこうと思いました。アユの深夜ラジオ挑戦は、ドラマ『M』でも第5話でしっかり描きますので、楽しみにしていてください。

■みんなで語り合える中心にあるエンタメの尊さ

――『M』と『エール』、時代は60年くらい離れていますけど、たまたま同時期に音楽業界を描いたドラマをそれぞれ楽しんで、先行き不透明な日々の不安が少しいやされた視聴者は多かったと思います。

【服部P】僕も『エール』は拝見しています。改めて、音楽が持つ力はすごいな、と感じているところです。野田洋次郎さん(作曲家の木枯正人役で出演中)がちょっと歌っているだけで、朝からいいもの見られたな、ってうれしくなる(笑)。音楽が人をひきつける力は不変だから、そこにストーリー性が乗っかっていくと人はどんどん引き込まれていくんだな、音楽があるだけで、人の心への届き方が変わってくるんだな、と思いました。

――ドラマの企画段階では、新型コロナウイルスで世界が一変するとは、想像もつかなかったと思いますが…。

【服部P】どちらかといえば、東京オリンピックに向けて、いろんなことが盛り上がっているはずでしたからね。こういう状況になったからこそ、逆に感じられたことかもしれないんですが、まさしく今、記者さんとテレビ電話でつながって話していますけれど、家に一人、あるいは家族だけでいると、ほかの誰かと話をしたり、誰かと一緒に何かしたりすることの大切さが身にしみるし、人として欲するものなんだな、ということを改めて感じました。

 その時にこの『M』というドラマが、よくも悪くも他人に伝えたくなる、「あのシーンなんなの?」って語り合いたくなる、そういうものになったことがすごくうれしかったですし、僕らのテレビの原体験として、翌日、学校に行って、「きのうあの番組、見た?」という会話が、今はSNSで即時にできる時代になったんだな、というのを感じました。

 離れていても、みんなが同時にリアルタイムで同じものを見て楽しめて、つながれるのは、“放送”というテレビドラマの特権。90年代に比べて、どんどんエンタメ業界がシュリンクしていく中で、まだまだテレビドラマも捨てたもんじゃない。みんなで語り合える中心にあるエンタメって、すごく尊い。そういう作品を今後も作っていきたいと思いましたし、そのことに改めて気づかせてくれた『M』のファンの方々に、ものすごく感謝しています。

■2つの音楽業界ドラマ Side『エール』
http://www.oricon.co.jp/news/2164404/

■放送情報

土曜ナイトドラマ『M 愛すべき人がいて』
テレビ朝日系 毎週土曜 後11:15〜深0:05
※6月13日より第4話から放送再開
ABEMA 毎週土曜 深0:05〜最新話を配信、全話独占配信

連続テレビ小説『エール』
NHK総合 月〜土 前8:00〜/BSプレミアム 月〜土 前7:30
※毎日再放送あり、土曜は1週間の振り返り、6月29日以降放送一時休止

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