ドラマ&映画 カテゴリ

“現代のスピード感×原点回帰”ドラマ『俺の話は長い』 30分×2本のアニメ的構成が若年層にハマる

 30分×2本立ての構成で会話劇を見せる、生田斗真主演の『俺の話は長い』(日本テレビ系)。昨今のドラマの多くが、濃い脇役キャラを豊富に取り揃えたり、さまざまな伏線や小ネタを盛りこんだりと、密度がどんどん濃く、情報量過多の傾向になっているなか、本作はそんな流れと別の角度からのアプローチを試みている。YouTubeの短尺動画に慣れているスマホ世代の「1時間のドラマは長い」と感じる層にとって観やすく、今の時代のスピード感に合っている手法として、放送前から期待値が高かった。そして、実際にドラマを観ると、期待を超えるおもしろさだった。

【写真】その他の写真を見る


■「ダメなおじ×不登校の姪」という組み合わせの妙

 劇的な出来事が起こらない日常系のドラマは、何より脚本の力と、役者の演技力がモノをいう。その点、本作は達者な役者揃い。物語をメインで動かす主人公で引きこもりニートの31歳・生田斗真と、バリバリのキャリアウーマンの姉・小池栄子の会話のテンポの良さは抜群だ。脇には清原果耶安田顕原田美枝子という世代違いの演技派もそろっている。

 脚本を手がけているのは、金子茂樹氏。本作では、姉一家が家の建て替えのために3ヶ月限定で同居することになり、そこからさまざまな化学変化が起こる。面倒くさい屁理屈も、きょうだいゆえのくだらない諍いも、不快にならず笑って観られるのは、愛嬌のあるキャラと、作品全体に流れる家族愛のためだろう。

 そもそも他者が見たらどうでも良いような細かいことでケンカをしたり、つい揚げ足をとったり、相手を傷つける正論をぶつけたり、言わなければ良いことをわざわざ口にしてしまったり、話をすり替えてごまかしたり、言いすぎたと思って1人で密かに反省したりというのは、家族という距離だからこそ起こる「家族あるある」だ。そこには、誰もがどこかに共感できる部分がある。

 加えて、本作では「ダメなおじ×不登校の姪」という組み合わせの妙もある。これは『ひよっこ』の峯田和伸、『ちりとてちん』の京本政樹のように、朝ドラでもときどき登場する微笑ましい関係だ。正論をぶつけてくる母や、好かれようと必死の義父よりも、ダメなおじが居心地の良い場所になることは、意外とあるパターン。生田と清原が互いに「変わってる」「そっちのほうが変!」と遠慮なくやり合う様子を観ると、多感な時期の少年少女に一番欲しいのは、そこそこ無責任であたたかい「ダメなおじ」なのではないかと思えてくる。

■ドラマを観ない世代にフィットしそうなアニメ的キャラクター造形とテンポ

 冒頭で記した「現代のスピードに合ったドラマ」とは矛盾するようだが、本作はドラマとして原点回帰した作品でもあると思う。フィルムが高価だった時代は、限られた場所+固定の登場人物で「会話」を見せるドラマが主流だった。こうしたスタイルのドラマは、今放送すれば再び人気になるのではないかと密かに思っていたのは、昨年のこと。

 きっかけは、BS12 トゥエルビで放送されていたプロデューサー石井ふく子氏×脚本家・平岩弓枝氏の『ありがとう』シリーズなどだ。そこでは、ご近所4軒くらいの間で起こる日常のささいな出来事が描かれるだけ。しかし、平岩氏の健筆と、水前寺清子や山岡久乃など、膨大なセリフ量をテンポよく繰り出せる達者な役者たちの力量により、現代でもまったく古さを感じさせない内容となっていた。昨年のネット掲示板では「今一番おもしろいドラマ」と評するつぶやきがしばしば見られるほどだった。

 それに加えて、『俺の話は長い』の魅力は、従来ドラマを観ない世代にフィットしそうなアニメ的キャラクター造形とテンポにもある。屁理屈ばかり言う面倒くさいニートは、「日常系アニメ」にはなじみのあるキャラクター像だ。ちょっと残念なキャラの癒し力は、今の時代の救世主ともいえる。

 かく言う自分も、さまざまなドラマをリアタイ&録画でチェックしつつ、眠る前には毎日配信でアニメを観るのが習慣となっている。理由は、日常系アニメの登場人物たちが、ドラマの人たちよりもはるかにダメダメで、笑ったり癒されたり励まされたりすること。美味しいご飯が登場すること。そして「30分だけ」の気楽さから、ついおかわりして結局3〜4話観てしまうという毎日なのだ。

 同様のことを感じる視聴者もいるようで、Twitter上にはこんなコメントも見られる。「『俺の話は長い』を初めて観たんですが、ゆるい日常系アニメみたいで良い」「『俺の話は長い』、30分のドラマ×2本で1話っていうアニメみたいな構成してておもしろい」「土曜のこの時間に空気感ばっちりよね アニメみたいに観れるドラマというか」「ご飯が毎回美味しそう 日常系アニメみたいな構成で毎回ゆるーっとした感じがオタクの胃と脳にやさしい…」

 30分×2本というアニメ的構成は、スピード感を求める若年層にしっくりハマる。それに加えて、ドラマの原点回帰的な「会話劇をしっかり書ける脚本家+達者な役者」によるミニマムな日常ドラマは、今後のひとつの定番になるかもしれない。
(文/田幸和歌子)

関連写真

  • 義理の父と娘を演じる安田顕と清原果耶『俺の話は長い』(C)日本テレビ
  • 微妙な距離の母娘(小池栄子と清原果耶)『俺の話は長い』(C)日本テレビ
  • 『俺の話は長い』(C)日本テレビ
  • 『俺の話は長い』(C)日本テレビ
  • 『俺の話は長い』(C)日本テレビ
  • 『俺の話は長い』(C)日本テレビ
  • 『俺の話は長い』(C)日本テレビ
  • 『俺の話は長い』(C)日本テレビ

提供元:CONFIDENCE

【最新号】コンフィデンス 2019年11月11日号 詳細はコチラ バックナンバー 一覧

最新号コンフィデンス2019年11月11日号

<COVER STORY>
ギデオン・フェルドマン氏(Attitude is Everything プロジェクト責任者)
ロンドン五輪を契機に障がい者への意識が変化
日本も東京五輪が契機になることを期待

<SPECIAL ISSUE>
アパレル視点で考える音楽業界/災害と障がい者対策
「ORICON LIVE STUDY with ACPC」Vol.29

お問い合わせ

オリコントピックス

メニューを閉じる

 を検索