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テレ東らしいテレビと舞台の垣根を超えた挑戦 新しさと懐かしさが混在する『サクセス荘』

 常に視聴者を驚かせる斬新な企画を生み続けているテレビ東京。そのチャレンジ精神はバラエティばかりでなく、ドラマでも大いに発揮されている。今クールでテレ東が挑んだのは、木ドラ25『テレビ演劇 サクセス荘』という異色のドラマだ。

木ドラ25『テレビ演劇 サクセス荘』(C)「テレビ演劇 サクセス荘」製作委員会

木ドラ25『テレビ演劇 サクセス荘』(C)「テレビ演劇 サクセス荘」製作委員会

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■“一発勝負”という新たな規格外ドラマへのチャレンジ

 本作は、脚本を『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)の徳尾浩司氏、原案・プロデュースを2.5次元ミュージカルのパイオニアであるネルケプランニングの松田誠氏が手掛けるドラマ。

 舞台は都会の片隅に佇むアパート「サクセス荘」で、そこに一旗あげることを夢見る若者たちが集い、共同生活をしている。演じるのは、『刀剣乱舞』ミュージカルなどで活躍する2.5次元俳優10人。

 といっても、「2.5次元俳優」たちを勢揃いさせたことだけが「チャレンジ」ではない。もっとも驚くべき(恐るべき?)点は、「稽古なし」「リハーサルは1度だけ」「NGも編集もない、撮影一発本番」という制作手法。おまけに、台本のところどころには「フリートーク」もある。一体どんなことになってしまうのか。

■『勇者ヨシヒコ』『バイプレイヤーズ』などに見るテレ東の大胆さ

 テレ東の大胆なチャレンジを振り返るとき、忘れてはいけないのが、例えば映画のようなクオリティを低予算の深夜ドラマに持ち込み、「深夜ドラマ」の質を大きく底上げした、大根仁監督の『モテキ』(2010年)だろう。

 また、下積みが長く実力あるバイプレイヤーを「主役」に据える試みが、後にひとつの定番となった『孤独のグルメ』シリーズ。さらに、名バイプレイヤーたちを本人役として勢揃いさせた『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』では、バイプレイヤーブームを巻き起こした。

 視聴者が「大丈夫なのか」とハラハラするほどに人気RPGゲーム『ドラゴンクエスト』の要素をふんだんに盛り込み(※実際には公式に協力している)、低予算ならではの遊びを繰り広げた『勇者ヨシヒコ』シリーズも斬新だった。

 演劇の街・下北沢を舞台に、小劇場で活躍する11人の劇作家が「人生で最悪な1日」をそれぞれ1話完結で描いた『下北沢ダイハード』も、非常におもしろい試みだった。

■当たり前にあるものが“ない”ことを違和感なく成立させる2.5次元役者たちの瞬発力

 さまざまなチャレンジを経て、さらにもう一歩踏み込んだ今回の新しい企画『サクセス荘』に期待と不安を抱きつつ、第1回、第2回を観てみた。結論から言うと、少々予想外なほどにちゃんと「ドラマ」になっているのだ。

 本編の終わりには役者たちによる「ミニ反省会」もあるが、その反省を聞いても視聴者的には「噛んだ? どこを?」「思いっきりとんだ? どこが?」とわからないぐらいである。編集やNGがないことから、まるで舞台のお芝居を自宅で観ているような気分になれる。

 また、セットは固定の1場面のみで、場面転換するときには照明を落とし、役者が移動したり小道具を片付けたり持って出てきたりする。しかし、普通の舞台と大きく異なるのは、舞台では通常行われる「稽古」が、『サクセス荘』にはまったくないこと。役者の立ち位置、座り位置も、おそらくほとんど決まっていない。

 おまけに、「編集」がないため、放送時間の尺を考えながら動く必要もある。そんななかでさらに「即興劇」の要素としてフリートークも挟み込まれる。映像や舞台で当たり前に行われているモノが、ことごとく「ない」「ない」尽くしだ。にもかかわらず、それを違和感なく成立させてしまうのが、2.5次元役者たちの瞬発力なのだろうか。

■ユルく繰り広げられる会話劇の新しく懐かしいチャレンジ

 非常に新しい試みなのに、醸し出す空気は、なぜかちょっと懐かしい。

 と思ったら、役者たちが繰り出す「生」のやりとりの雰囲気は、かつて人気を博した三谷幸喜脚本の深夜ドラマ『やっぱり猫が好き』(1988年)や、さらにさかのぼって、フィルムが高価だった時代に、極力カットせずにカメラを回しっぱなしにして収録した『寺内貫太郎一家』(1974年)にも似たワチャワチャ感がある。

 キャストやスタッフにとっては恐るべき緊張感と集中力を必要としながらも、「冷蔵庫のプリンを勝手に食べたのは誰か」といった小さな小さな出来事を軸に、ユルく繰り広げられる会話劇。この新しく懐かしいチャレンジは、一見の価値アリだ。
(文/田幸和歌子)

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提供元:CONFIDENCE

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