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働き方を改革し、自己成長のカギを握る転職 家族のコネより「友人の友人」〜海外の日本人論から学ぶ

 外国人が日本を賞賛する、いわゆる“日本すごい”系番組が数年にわたり、長く人気を博している。実際、『世界が驚いたニッポン! スゴ〜イデスネ!!視察団』(テレビ朝日系)といった番組のほか、日本のアニメーションの海外での盛り上がりを伝えるニュースなども頻繁に目にする。こうした“日本すごい”系番組の根強い人気の背景にあるのは、「日本人の『日本人論』好き」という傾向だ。では実際、海外で日本人はどのように見られ、どう分析・研究されているのか。書評家・印南敦史氏による、『ハーバードの日本人論』(佐藤智恵著)の解説を通じて見えてきたのは、日本人の「場」を重んじる傾向と、日本における転職のリスクや難しさだった。

■米ハーバード大学で研究される『日本人論』から学ぶ成長のヒント

 ここ数年、「日本人すごい!」と、日本人のポテンシャルを持ち上げるテレビ番組が増えた。私自身もたまにダラダラと見てしまうのだが(たいてい後悔する)、なぜ、こうした番組が増えたのだろう?

 そのことについて考えていくと、「外国人からどう見られているか」ということを気にしすぎる日本人ならではの傾向に行き着くような気がする。

『ハーバードの日本人論』(佐藤智恵著、中公新書ラクレ)が注目しているのも、このような問題だ。著者は、NHK、ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局等を経て独立したという経緯を持つ作家・コンサルタントである。

「こうした「日本人のなぜ」についてハーバードの教授陣の視点から解説してもらおうと思ったのが本書を執筆したきっかけである。もちろん主たる目的は「ハーバード大学の教員や学生は日本から何を学んでいるのか」についてお伝えすることであるが、根底には「日本人とは何者なのか」を少しでも解き明かしたいという思いがある。」(「はじめに」より)

 そこで本書ではハーバード大学の10人の教授のインタビューを通し、日本人も(日本人だからこそ、かもしれない)気づかなかった日本の魅力を分析しようとしているのである。

 しかも、その視点はそれぞれがユニークだ。たとえば「メディア論」でモチーフにされているのは、宮崎駿押井守が描く「テクノロジーと人間」。「美術史」においては、近年、国際的な評価が高まっている江戸時代の絵師、伊藤若冲の表現に焦点を当てている。

「分子細胞生物学」でクローズアップされているのは、日米の食生活の違いと、日本人が長寿である理由だ。かと思えば「比較政治学」では世襲政治家が異常に多い日本の実情に迫り、日本人が人の目を気にする理由を「日本文学」的な視点から探ろうともしている。

■日本人は「場」を重んじる国民

 このように各テーマが興味深く、インタビューの形式がとられているため親しみやすいのだ。そのわかりやすい例として、第6講義・社会学「日本人はなぜ『場』を重んじるのか タテ社会の人間関係と働き方改革」を見てみよう。

 インタビューに答えているのは、ハーバード大学教授であり、エドウィン・O・ライシャワー日本研究所所長 メアリー・C・ブリントン氏。社会学を専門とし、ジェンダーの不平等、労働市場と雇用、社会人口学、現代日本社会学などを研究しているという人物である。

 著者がこの場において注目しているのは、ブリントン氏が著書『失われた場を探して――ロストジェネレーションの社会学』で、日本人が「場」を重んじる国民であることを指摘している点だ。

 そしてブリントン氏は、日本においてこれほど「場」が重要視される理由のひとつとして、他者に対する警戒心が強いことを挙げている。

■日米の転職事情の違いから見る日本の弱点

 だが、そうした「場」を重んじる伝統が、「転職したくてもできない社員」を生み出すようになっているという批判的な意見もある。日本では、転職があまりにも大きな社会的損失を伴ってしまうためだ。

 氏は著書のなかで、転職活動で頼りになるのは「社会関係資本」だと述べているそうだが、だとすればそれをどう活用していけばよいのだろう? ちなみに「社会関係資本」とは、さまざまな目的を達成するために活用することができる人的ネットワークや個人的なつながりのこと。もちろん職探しにも利用することができるという。

「社会関係資本には、「ストロングタイズ」と「ウィークタイズ」があります。前者は、家族や親しい友人などとの強いつながり、後者は「友人の友人」のような弱いつながりを意味します。
 スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッター教授が1970年代に行った調査の結果、アメリカ人の男性が転職するとき、その多くがウィークタイズを通じて仕事を見つけていることがわかっています。面白いことに、アメリカでの職探しにおいては、家族のコネよりも、普段あまり会わない「友人の友人」のほうが有効なのです。そのため、アメリカ人は、より多くの求職情報と転職チャンスを得るために、広い人脈を築き、ウィークタイズをたくさん持とうとします。」(159〜160ページより)

 一方、ストロングタイズを築くほうが大切だと考えてきたのが日本人だ。たとえば初めて就職活動をするときにも、学校や卒業生などが持つネットワークを利用するのが定石。就職してからも会社頼み、組織頼みの傾向は変わらず、定年前の社員に対しては、子会社などへの「次の職」が斡旋されていた。

 そのため日本人は、個人で努力してウィークタイズを築き、それを使って自分で転職することになれていないわけだ。ところが現在、「場」による斡旋にも限界がきている。

■日本人は「友人の友人」の力に重きをおいてみるべき

 そして雇用のグローバル化が進むなか、日本の人事システムにはもう少し柔軟性と流動性が必要だとブリントン氏は指摘する。企業がすべての面倒を見るような制度は変えていく必要があり、労働、雇用の面においても、さらにグローバル化を推進していくべきだというのだ。

「21世紀の世界で日本が成長していくには、個人がリスクをとっても、次に進めるような社会に変えていかなくてはなりません。」(161ページより)

 少なくとも「友人の友人」の力に重きをおいてみるべきだという考え方のなかには、大きなヒントがあるように思える。もちろんここでご紹介しているのは、全体の一部分にすぎない。しかし、ここからも推測できるように、次の時代をよりよく生きるために活用できそうな考え方を、ハーバードの教授陣はそれぞれの立場から提示してくれている。

 自分に活用できそうなところだけをピックアップしてみるだけでも、未来へ向けた毎日をブラッシュアップできそうだ。
(文/印南敦史)

関連写真

  • 『ハーバードの日本人論』(佐藤智恵著、中公新書ラクレ)
  • 『ハーバードの日本人論』(佐藤智恵著、中公新書ラクレ)

提供元:CONFIDENCE

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