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内野聖陽、『きのう何食べた?』細部までいき届いた繊細な演技に絶賛の声

 弁護士・シロさんこと筧史朗(西島秀俊)と、美容師・ケンジこと矢吹賢二(内野聖陽)の男2人が、2LDKのアパートに月2万5000円の食費で暮らす生活を描くドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)。よしながふみの同名人気コミックをドラマ化した同作は、再現度の高さなどにより、原作ファンからも高い評価を得ている。

自然な“ながら動作”から伝える心情が心に響く内野聖陽の演技(C)「きのう何食べた?」製作委員会

自然な“ながら動作”から伝える心情が心に響く内野聖陽の演技(C)「きのう何食べた?」製作委員会

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 メインから脇に至るまで演技派が揃うなかで、とくに絶賛の声が多いのは内野聖陽の演技力だ。週刊エンタテインメントビジネス誌「コンフィデンス」の満足度調査ドラマバリューのアンケートでも以下のようなコメントが多数見られる。
「内野さんが本物に見える」(男性40代/千葉)「内野聖陽さんの演技がすばららしかった。今までとまったく異なる役柄だったが違和感なく見ていられた」(女性30代/東京)「内野さんの演技が自然で、『ゲイカップルの幸せな食卓』がほっこりと心に沁みる物語に昇華していることに感心する」(女性50代/東京)

 これまでは硬派な役柄が多い印象だった内野聖陽の意外なまでのハマり具合。ビジュアル的な原作とのソックリさもさることながら、注目すべきは、なんといっても細部までいき届いた内野の演技の繊細さである。

■さりげなく足し引きされている女性っぽさの表現

 ゲイであることを隠して生きている史朗に対して、職場などでもカミングアウトしている賢二。スタンスの違いから、賢二は仕草や口調、表情にやわらかな女性っぽさがしばしば出る。その表現のさじ加減は重要で、極端になるとコント的になったり、下品になったりするが、実にさりげなく良い塩梅で足し引きされている。

 また、おおらかな性格で、「美味しい」「幸せ」といった愛情表現や嫉妬心などは、はっきりとわかりやすくストレートにあらわす賢二。これは「相手にちゃんと伝えたい」という思いがあるからだが、その一方で、実は非常にデリケートで、目配りができて、「敏い人」であるということも、内野のさりげない「目の表情」から伝わってくる。

 例えば、親が注いでくれる愛情に対して素っ気ない態度の史朗に対して怒っているときや、史朗の親の病状を心配しているとき。落ち込んだときや、気まずそうなとき。史朗が何か隠していそうなとき。セリフはない場面でも、目の演技だけで気持ちがジワジワと伝わってくる。

 帰省時に親から史朗が持たされた餅が食卓に並び続けるシーンでは、言葉では「美味しい」「好き」と喜び、口角を上げて笑顔は作り続けているにもかかわらず、テンションが少しずつ下がり、表情が曇っていく変化が目から感じられた。そのグラデーションがあってこそ、「パン食べさせて! パン!」の懇願に視聴者は爆笑させられるのだ。

■内野の表現の変化で見える、賢二と史朗の距離感

 内野の表現の変化により、賢二と史朗の距離感の変化なども見えてくる。日頃はテーブルに体を持たせかけたり、肘をついたり、猫背になったり、箸を指先でいじったりしながら、のびのびと食事する賢二。おおらかで優しいが、テーブルマナー的にはNGなことも多く、あまりお行儀が良くないと感じた視聴者も少なからずいたのではないだろうか。

 しかし、2人の出会いから付き合うまでの過去を描いた第4話を観ると、驚かされる。史朗に家に来ないかと言ってもらい、越してきて初めて2人で過ごすクリスマス。そのシーンでの賢二は、体がテーブルからずいぶん離れていて、自分の腕をわき腹に巻き付けたり、所在なさげに耳や顎を触ったりしながら、キョロキョロして小さくなっていた。

 このときは史朗に好意をもっていても、相手のパーソナルスペースに踏み込んではいけないと感じていたのだろうし、アウェイの場所で緊張した様子でもあったのだろう。しかし、一緒に暮らすうちにそこが「ホーム」となり、2人の距離がグンと近づき、子どものようなリラックス具合が自然と表出している様子がよくわかる。

■繊細さに唸らされるポイントは「ながら動作」

 さらに内野の演技の繊細さに唸らされるポイントは、「ながら動作」のナチュラルさである。例えば、店長との会話のなかで考え事をしながら、手持無沙汰な感じにモップをかける。ひとりで過ごす年越しには、袋めんを自分好みに作って食べようと、食材の入ったビニール袋をブラブラさせながらスキップして帰る。そんなさりげない「ながら動作」に、賢二の性格や心情がよく見える。

 また、家のなかでの「ながら動作」には、別の意味も込められているように思う。ケータイで星占いをチェックし、それを史朗に伝えながら、マグカップを流しに運ぶ。洗濯ものを取り込みながら、たたみながら、史朗の話に耳を傾ける。コーヒーをテーブルに運びながら、カップの取っ手を相手の利き腕のほうにさりげなく回して置く。牛乳を温める史朗の傍らで、食パンを取り出す。食材を取り出す史朗の傍らで、鍋を運び、まな板を出すなどなど……。

 それらの動作には、手術する史朗の父へのお見舞いではなく、付き添う母のほうに「病院っていっぱい手洗うし」とミニタオルをプレゼントするような賢二の「よく気がつく」(by史朗の母)性質が見てとれる。と同時に、史朗と賢二がどのように日々を暮らしているか、家庭における役割分担や連携プレーの様子が、ナチュラルすぎる「ながら動作」に現れているのだ。

 これは、単に「気がきく人」というだけではなく、相手をよく見ているから、見続けているからこそ、できること。恋人であれ夫婦であれ、友人であれ、「毎日一緒に暮らしている特別な人」との日常の積み重ねによって作られた安定のルーティンなのだ。

 特別に大きな出来事が起こるわけではなく、普通の日常を描くドラマ『きのう何食べた?』にとって、この「2人の日頃のルーティン」がリアルに描かれていることは何より重要なことに思える。映像になることの意味を考え、原作での一コマ一コマの間、台本での行間を埋める作業、想像力で補完していく作業を丁寧に行う内野聖陽の細やかな演技。観れば観るほど「発見」が多く、何度も観たくなってしまう味わいがある。
(文/田幸和歌子)

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提供元:CONFIDENCE

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