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『東京独身男子』のトレンディ感に見る「おっさんのバカ騒ぎを愛でる」現代女性的目線

 高橋一生×斎藤工×滝藤賢一が「あえて結婚しない男子=AK男子」を演じる、テレビ朝日土曜ナイトドラマ『東京独身男子』が何かと話題になっている。「話題」の中身は、芳しいものばかりではなく、賛否両論あるようだ。

高橋一生、斎藤工、滝藤賢一がAK男子を演じる『東京独身男子』(C)テレビ朝日

高橋一生、斎藤工、滝藤賢一がAK男子を演じる『東京独身男子』(C)テレビ朝日

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■「らしくない」役柄に挑戦しているメインキャスト

 ネット上では以下のようなコメントも散見される。「トレンディドラマは飽きた」「カッコいいのか、カッコ悪いのか、軸足がどっちかわからず、ふらふらしてる感じが共感できない」。なぜこうした反応が出るのか。それは、キャストとコンセプトから想像する中身と、実際の作品とが乖離していることが大きな要因だろう。

 メインの高橋一生、斎藤工、滝藤賢一に加え、仲里依紗や桜井ユキ、高橋メアリージュンという女性陣に至るまで、演技派、旬の役者を集めた豪華さから、深い内容やリアルな描写を期待した人は多かったはずだ。しかし、フタを開けてみると、メイン3人の華やかな暮らしぶりもやりとりも、限りなくバブル臭プンプンのトレンディドラマ的。

 メガバンクに勤務する高橋一生、審美歯科クリニック院長の斎藤工、法律事務所のボス弁・滝藤賢一は、それぞれに「らしくない」役柄に挑戦している。ミステリアスな役も淡々とした有能な役もお手の物の高橋一生が「何を考えているかわからない元カノ(高橋メアリージュン)」のことで右往左往したり、セクシーお得意・斎藤工がEDに悩んでいたり、ショボくれて疲れた役が上手い滝藤賢一がバブリーに気取っていたり……。そのあたりのギャップも「AK(あえて考えてやっている)男子」なのだろう。

■「あえて」中身のないトレンディ感を“男性同士”で打ち出す

 しかし、大方の視聴者は、予想していたものや観たいと思った内容とあまりにかけ離れていることで混乱し、「どういう目で観たら良いのかわからない」状態のまま第2話まできたのではないだろうか。しかし、この中身のないトレンディ感は、彼らがインタビューなどで語っているように、もちろん「あえての」もの。

 そもそも「ハイスペック」なはずの3人が集まってすることといえば、「女は本質をSNSアイコンに隠している」など一昔前から散々こすられてきているような内容を、「新発見」的に興奮気味に語り合い、そうした情報を整理し、課題としてピックアップして「アジェンダ化」することだ。冷静に見ると「何をいまさら?」「あれ? この人たちって有能なはずなのに、バカなの」と思ってしまいそうだが、それこそが制作側の狙いのはず。

 バブリーな生活や恋バナを中心とした会話、同性同士のケンカやじゃれ合い、ワチャワチャ感を見ていると、かつてのトレンディドラマをけん引していたW浅野(浅野温子、浅野ゆう子)の『抱きしめたい!』(フジテレビ系)あたりを思い出す。しかし、本作の特筆すべきところは、そうしたかつて女性同士で描かれてきた世界観を、そのまま「男性同士」でやってみせるところだ。

■女性の作り手たちが男性を愛おしく描く

 経済格差が広がる現代では、相変わらずそこそこ豊かな暮らしをしている人たちもいるはずなのに、3人には富裕層のリアリティがない。男性3人は全員恋愛のことに悩み、浮かれて、とにかくよく喋る。しかも、互いのリアクションについて「昭和的」とツッコんだりもする。平成が終わるこのタイミングに、「あえてバブル」の物語を描きながら、昭和をイジるという、幾重にも重なる目線がある。

 そして、注目すべきは、『抱きしめたい!』は脚本の松原敏治氏、演出の河毛俊作氏など、主に男性たちの手で作られていたのに対して、本作の場合は脚本を『ナースのお仕事』(フジテレビ系)や『中学聖日記』(TBS系)などの金子ありさ氏、『昭和元禄落語心中』(NHK)で落語家の世界を美しく儚くBL感漂わせて描いた映画畑のタナダユキ氏が手がけるなど、女性たちの手で作られていること。

 かつて男性の作り手たちが女性をバカっぽく愛おしく描いたのに対し、今は女性の作り手たちが男性をバカっぽく愛おしく描いている。だからこそ、「ハイスペック」なはずの3人はカッコいいとは到底言い難く、哀愁が漂っていて、その姿にクスリとしたり、呆れたり、苦笑したり、うっかり可愛いと思ってしまったりするのだろう。

 思えば、社会現象となったドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)も、脚本を手がけたのは男性だが、ヒットの要因は若手女性プロデューサー・貴島彩里氏のプロデュースによるところが大きいと言われる。平成の終わりと、遠ざかる昭和を回顧しつつ、女性たちが「おっさんのバカ騒ぎを愛でる」目線に、現代を感じずにはいられない。
(文/田幸和歌子)

関連写真

  • 高橋一生、斎藤工、滝藤賢一がAK男子を演じる『東京独身男子』(C)テレビ朝日
  • 三好玲也(斎藤工)と日比野透子(桜井ユキ)
  • 石橋太郎(高橋一生)と三好かずな(仲里依紗)
  • 石橋太郎(高橋一生)と三好かずな(仲里依紗)
  • 高橋一生、斎藤工、滝藤賢一がAK男子を演じる『東京独身男子』(C)テレビ朝日

提供元:CONFIDENCE

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