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ヒット作を続々生み出す女性プロデューサーたち 女性活躍が進むテレビ界?

 女性の登用や女性が活躍できる社会づくりがテーマに上がることも多い昨今、すでに「女性活躍」を実現しているように見えるのがテレビドラマの制作現場だ。

貴島彩理プロデューサーが手がける金曜ナイトドラマ『私のおじさん〜WATAOJI〜』(C)テレビ朝日

貴島彩理プロデューサーが手がける金曜ナイトドラマ『私のおじさん〜WATAOJI〜』(C)テレビ朝日

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■話題作に目立つ、女性プロデューサーが手がけるドラマ

 テレビドラマが元気を吹き返して久しく、近年はコンフィデンスアワード・ドラマ賞も受賞している『民王』(テレビ朝日・15年7月期)、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS・16年10月期)、『カルテット』(TBS・17年1月き)、『アンナチュラル』(TBS・18年1月期)、『おっさんずラブ』(テレビ朝日・18年4月期)といった社会現象的なヒット作が続々と生まれている。

 とくに昨年は豊作で、前述した作品のほかにも『今日から俺は!!』(日本テレビ)、『大恋愛〜僕を忘れる君と』、『中学聖日記』(ともにTBS)などがドラマシーンの話題を牽引した。

 これらヒットドラマには共通点がある。それは、どの作品も女性プロデューサーが手がけていること。今期もその流れは続いており、『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ)、『メゾン・ド・ポリス』(TBS)もそう。話題作、人気作には、女性プロデューサーによるドラマが目立っているのだ。

■“若者のテレビ離れ”を同世代の現実として捉えている世代

 またその多くが中堅から若手と、仕事としてテレビドラマの黄金期を経験していない世代であることも特徴だ。いわばネット動画をはじめとするメディアの多様化による“若者のテレビ離れ”を、同世代の現実として捉えている世代とも言える。その世代には、テレビを変えていかなければいけないという危機意識があるためか、従来のようなテレビ側の一方的な視点ではなく、社会や時代の空気を繊細に読み、視聴者に寄り添ったものづくりの姿勢が感じられる作品が多い。

 たとえば『家売るオンナの逆襲』の第7話では、育児のために時短勤務をするワーキングマザーが登場した。コメディドラマだけにやや誇張して描かれていたものの、育児を盾に仕事を疎かにするその態度は「うちの会社にもこんなワーママいるいる」と苦々しく観ていた視聴者もいただろう。また主人公・三軒屋万智も「育児を持ち出せば周りがひれ伏すと思っているのか」と、そんな視聴者を代弁するような厳しい言葉をかます。

 しかし(家を売るためには)ここでは終わらない。三軒屋万智は「これからは男性も仕事に家庭に輝くべき」と託児所を併設した夫の職場に近い物件を紹介する。さらに、仕事と育児の両立に奔走してきたワーママを「あなたは十分に輝いています」と讃える。致し方のない時短勤務に肩身の狭い思いを感じているワーママ視聴者にとっては、涙が出るほどうれしいひと言だったに違いない。

 くしくも第7話のテーマは「輝く女性社員活躍プロジェクト」だった。しかしその中身は、家事と仕事の両立を想像もできないオジサンたちが、なんのフォロー体制も整えないまま流行語に乗っただけで推進しようとしたプロジェクトだった。

■視聴層が全世代を通して多い女性の共感がヒットを左右する

 実際、本来の「女性が活躍できる社会づくり」を誤読した取り組みに、かえって大変な思いをさせられている女性も多いだろう。それだけに「男性は輝こうが輝くまいが普通に仕事を続けられます。一方、女性は輝くことを要求される。これはどういうことでしょう」とバッサリ切った三軒屋万智に胸のすく思いをした女性視聴者は多かったはずだ。「女性活躍」をことさら声高に叫ぶこと自体が歪みを生んでしまうこともあるだろう。

 今年の映画化やテレビドラマ続編も話題の『おっさんずラブ』を企画から手がけ、現在放送中の『私のおじさん〜WATAOJI〜』を担当するテレビ朝日の貴島彩理プロデューサーは、12年に入社。まさに現在のテレビドラマ界の「女性活躍」を象徴するような存在だが、「どの業界においてもすでに女性は登用されているし、活躍もしているのでは……と個人的には思うので、『女性云々』というキーワードや課題そのものが古いようにも感じます。テレビ朝日に関して言えば、性別関係なくチャンスをもらえています」と語っている。

 ただ、テレビ業界が長らく男性優位社会であったことも事実である。貴島プロデューサーも「テレビ朝日のドラマ部は、内山聖子エグゼクティブプロデューサー(『ドクターX〜外科医・大門未知子』シリーズほか)、三輪祐見子ゼネラルプロデューサー(『遺留捜査』シリーズほか)といったスタープロデューサーの存在があるおかげで、『私たちも頑張ろう!』と女性がとても元気だと思います。ただ私が知らないだけで、先輩方がドラマ部で“初の女性プロデューサー”として道を開拓しはじめた頃は、人知れぬ苦労があったかもしれません」と、現在の環境が一朝一夕にできたものではないことに思いを巡らせている。

 そもそもテレビドラマの視聴層は全世代を通して女性が多く、女性の共感がヒットを左右するところも大きい。局側がそうした感性を持った女性スタッフを育ててきた結実が、現在の次世代女性プロデューサーの活躍にも繋がっているようだ。いや、もはやテレビ界では職種の前に「男性」「女性」とつけること自体がナンセンスなのかもしれない。いずれにせよ、ドラマシーンをおもしろくしてくれる時代の感性を持つプロデューサー陣の活躍を期待したい。
(文:児玉澄子)

提供元:CONFIDENCE

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