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“背負わされた”視聴率男、識者が語る「木村拓哉が平成ドラマ史に与えた影響」

 間もなく終りを迎える平成。その平成ドラマ界において、“視聴率男”といえばやはり木村拓哉だろう。昨今は「さすがに木村拓哉の神通力も衰えたか」との声もあったが、主演映画『マスカレード・ホテル』は公開2週目で146万人を動員し、興行収入約19億円(1月28日現在/興行通信社調べ)。さらには、ゲストとして出演したバラエティも軒並み高視聴率。結局、日本人は木村拓哉が大好きなのではないか。ドラマ事情に詳しいコラムニストの木村隆志氏とともに、「木村拓哉」という男の功績と現在地を考える。

月9ドラマの平均視聴率トップ3は『HERO』(第1期)

月9ドラマの平均視聴率トップ3は『HERO』(第1期)

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■視聴率を背負わされた男、「結局、日本人は木村拓哉が大好き」と見直し論が

 木村拓哉について語られる時、近年では以前と比べると振るわなかった成績が取り沙汰され、「過去の人」と揶揄されることがある。だが、ここ最近の木村拓哉の活躍には、ファンではないSNS・ネットユーザーからも「やっぱ出るだけで話題になっちゃうんだな」「結局、日本人は木村拓哉が大好きなんだよ」など、“見直し論”が上がり始めている。

 昨今の視聴者は、メディアからの仕掛けや従来のマーケティングを嫌う傾向がある。ステマ(ステルスマーケティング)という言葉が代表するように、今はテレビの“嘘”が嫌われる時代であり、だからこそ今の木村拓哉のネットでの盛り上がりは、ネットユーザーも“自然発生的である”と認める部分もあるようだ。そんな木村拓哉について、コラムニストの木村隆志氏はまず、“平成の視聴率男”と言われた所以である、その功績と存在感を挙げる。

 「平成に入ってすぐはトレンディドラマの流れで高視聴率がを連発していたんですが、それ以降、『ロングバケーション』(フジテレビ系)の流れに入っていく頃には、徐々に他のドラマは数字が低下。そこで一人、視聴率を背負っていたのが木村拓哉さんでした。00年代に入り、だんだんとドラマ視聴率がヤバいんじゃないかと言われた時期でも、『HERO』(第1期/同系)が全話30%超えという大記録。彼のようなトップの数字を作る人がいないと、ドラマ全体が落ち込んでしまうという意味も含め、必要な方だったのではないか」(木村隆志氏/以下同)

■“職のコスプレ俳優”との声も…本人も悩んだ「何をやってもキムタク」

 実際、フジテレビの月9ドラマの平均視聴率トップ3は『HERO』、『ラブジェネレーション』『ロングバケーション』と、すべて木村拓哉主演作品。そんな時代の頂点を走り続ける、もしくは頂点から降りることを許されない彼を、手の届かない存在という意味で、“最後のスター”と評する業界人も多い。

 「70〜80年代にもアイコン的な人はたくさんいたんですが、唯一残った人が木村さん。そして“最後のスター”の言葉に見合う、そんな職業ばかり演じて来られた。木村さんという器に何がふさわしいか? と、TBSとフジが交互に当てはめていった印象です。話題先行の“職のコスプレ俳優”なんて言い方をされることもあったのですが、実際にドラマを観ると、どれも作りがすごくしっかりしている。逆説的に今のドラマを否定することになりますが、視聴率を獲るための安易な一話完結はない。シンプルだけど縦軸に太いストーリーがあり、ドラマ性が高い」

 演技力については議論もある。だが木村隆志氏は、「『眠れる森』(98年/フジテレビ系)を観ると、ものすごくナチュラルで、共演の中山美穂さんをうまく引き立てている。むしろ木村さんは、主役じゃない方が良さが出るのかもしれないですね」とコメント。これに関して筆者も多くの映像ディレクターに話を聞いてみたのだが、「木村さんはむしろ自然で上手い。ただ、あまりに強い色があるから、木村さんを使って仕事をするのは難しい」との声が。『ニンゲン観察バラエティ「モニタリング」』(TBS系)で木村本人が「何をやってもキムタクと言われる」などと語っていたが、その理由はこういったところに端を発するのかもしれない。だが、批判が多いのもまた、スターの証なのだ。

 木村拓哉がゲームキャラになった『JUDGE EYES:死神の遺言』もネット上で盛り上がりを見せている。「ちょ、待てよ」というドラマの名セリフが登場するほか、実際に木村拓哉を動かせるというアイディアもウケており、ネット上では「コンビニで暴れる木村拓哉(笑)。この面白さは卑怯だろ」「ゲーム自体も面白い」「名作」と若年層からも好評だ。

 「木村拓哉さんは(偏見がない)ティーンの間では“カッコいいおじさん”という印象のようです。バラエティなどで、言いたいことがあっても押さえているところもいいと聞きます。『SUITS』(18年/フジテレビ系)の織田裕二さんもそうですが、ベラベラしゃべるような若手俳優にはないカッコ良さを感じるようです。むしろ、20代後半から30代のほうが意地悪い見方をしている印象です(笑)」

 木村拓哉について、賛否があることは事実。それでも第一線に立ち続けているのは、実力や人気もさることながら、スタッフや取材陣から愛されていることも一つの要因だろう。実際、木村拓哉は「ドラマ現場に取材陣が来たら、絶対に手ぶらで帰させない。必ず記事になるようなオフショットを見せてくれる」と言われる。

 「本当の意味でのプロですよ。あと、撮れ高にすごく敏感。取材の際、急かすスタッフを止めてでも、インタビューの終わり時間ギリギリまで何か言おうとしてくれますよね。早く帰りたいのが顔に出る人は多いんですが、木村さんは逆です。そんな大きな器の持ち主だからこそ、ドラマでどんな職業が当てられても違和感がないのかもしれません」

 もちろん、批判する人たちにも理由はあるだろう。だが、改めて彼の作品をニュートラルな気持ちで見返してみると、また違う印象があるかもしれない。現在、動画配信サービス『FOD』でも、『HERO』シリーズや『プライド』、『CHANGE』など、放送当時に大きな話題をさらった作品が配信されている。再評価の兆しが見えつつある今だからこそ、現在の木村拓哉に繋がる当時の輝きを確かめてみるのも一興だ。

(文・衣輪晋一)

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