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【Fate/stay night [HF]インタビュー】中田譲治、“破綻者”を演じる流儀「隙のない佇まいで」

 人気アニメ「Fate/stay night」シリーズの劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』(以下、『HF』)三部作の第二章「lost butterfly」が、来年1月12日に公開される。公開を記念し、ORICON NEWSでは主要キャストたちへのインタビューを実施。初回は言峰綺礼(ことみね きれい)を演じる声優・中田譲治に、10年以上にわたって向き合い続けた役への思いや、強烈な印象を残す“破綻者”を演じる上での覚悟・心構えについて語ってもらった。

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■因縁の系譜…言峰綺礼が主人公・士郎に抱く心情とは

 「Fate」シリーズの舞台は、あらゆる願いをかなえると言われる「万能の願望機=聖杯」の獲得を争う「聖杯戦争」。『HF』三部作は原作ゲームのいわゆる“桜ルート”をアニメ化するもので、間桐桜をヒロインに描かれる。綺礼は戦いの監督役を務める「冬木教会」の神父でありながら、自らも聖杯戦争の渦中で暗躍する。他人の不幸や精神的に追い詰められる姿を目の当たりにすることにしか生きる糧を見いだせず、「Fate」に登場するくせ者ぞろいの大人のなかでも“破綻者”として描かれる男だ。

――前日譚的な『Fate/Zero』(2011, 12年)から『stay night』シリーズに至る長い物語のなかで、改めて綺礼をどんな人物と捉えていらっしゃいますか。

【中田】やっぱり「外道」ですよね。生きるためのポジティブな目的を見つけられず、ギリギリのところに置かれた人のきらめく命を見ることでしか生の実感を得られない。演じる時には一切思わないようにしていますが、一個人として見た時は、どうしてこうなってしまったのか、やるせなさを感じる部分はありますよ。

――“外道”の綺礼ですが、『HF』第一章では主人公・衛宮士郎に語りかけるように過去の話をするシーンも印象的でした。気持ち的に歩み寄るような面もあるのでしょうか。

【中田】難しいですね。『Zero』の綺礼はもっと自分への迷いや悩みを抱えていたのですが、最後にギルガメッシュ(CV:関智一)と一緒に聖杯に触れたことによって精神的にも肉体的にも少し悟って、『stay night』では自分の性癖に沿った生き方をし始めている。そういう前提があるから、衛宮切嗣(『Zero』で綺礼と死闘を演じた)の養子である士郎に対しても気持ちの余裕があるし、友好的な振る舞いに一見感じられるかもしれないですね。

ただ、彼の性格ですから、自分の愉(たの)しみを成就させるための戦略があり、そのために今のところは士郎や桜が必要というだけのことだと思います。自分の愉悦のため、という行動原理は前よりはっきり、強くなっていると思います。

――切嗣から士郎に受け継がれた「正義の味方」像は綺礼にはどう映っているのでしょうか。この言葉は士郎の原動力であり、一方で士郎を縛る観念でもあるのかと。

【中田】綺礼は、『Zero』の時は切嗣という人物にある程度興味があったはずで、とても気になる存在ではあったでしょうね。もしかしたら自分が持っていない“答え”を持っているのかもしれないという思い。でも、今の綺礼にとって、切嗣は客観視できる対象になっているんだと思います。

なので「正義の味方」についても士郎がどんな考えを持ってそれになろうとしているのか、見守るくらいの余裕を持っている気がします。「お前は切嗣の遺言に縛られて“正義の味方”を掲げているが、今のうちに言っておけばいいさ」ぐらいのね。

■「悟る直前」こそ魅力的 ギリギリであがく人間と向き合う芝居

――綺礼という人物の演じ方についてもお聞きしたいのですが、静かで圧倒的な存在感の一方、自分の性癖に向き合う情念もある。そこの表現のバランスはとても難しいのではないでしょうか。

【中田】そうですね。圧倒的な存在感といっても過剰になってはいけないですし、淡々としすぎて気持ちが伝わらないのもよくない。そのさじ加減はギルガメッシュとの対話も士郎と接する時もとても難しいです。親切すぎるように見えるのも、興味が全く無いようにみえるのも違ってきてしまいますから。モノローグ(独白)に聴こえてもいけないし。

――破綻した人間を演じるのは、役者冥利に尽きる一方で精神的な負担も大きいのでは。どんな心構えで芝居に臨まれているのですか。

【中田】やはり、気持ち的に大変な部分もありますよ。例えば本当の武道の達人って、静謐(せいひつ)で起伏のない感じがあると思うんですが、そういう突き抜けてしまった静謐さというのは黙っていれば表現できるものではないんですよね。結局は自分自身が達人のような緊張感をもって臨まないといけない。

綺礼に関しては、マイクの前にただダラッと立つのではなく、丹田(たんでん)に力を入れて背筋を伸ばし、一瞬の隙もない佇まいでいるっていう心構えが基本です。そうすると、しゃべり方も一見すると穏やかだけど圧倒される説得力がにじみ出てくると思うし、そういう部分を感じ取ってもらえたらな、と思っています。

――これまでも中田さんは、人生一周して達観してしまったような人物を演じられることが多かった気がしますが。

【中田】なるほど。でも、人間として本当に魅力的なのはやっぱり「悟り切る直前」じゃないでしょうか。ギリギリのところで物事に不満や憤りを感じ、(『巌窟王』の)モンテ・クリスト伯なら復讐だったり、綺礼なら自身の性癖を極め愉悦を得ることへの静かな炎だったり。彼らが本当に達観してしまっているとしたら、人物としては面白くないですよ。その境地に至る過程であがいているから、一見静かに見えてもチラチラとみえる人間的なきらめきがキャラを魅力的にしているのではないでしょうか。

芝居の勉強を始めた頃、先生に言われたのは「人の声や言葉っていうのはその人が生きてきた歴史である」ということ。それは教養かもしれないですし、そういうものが声や発する言葉に表れるわけなので、まずは自分史みたいなものを振り返って、どういう考え方で、どう生きてきたか把握しろと言われたんですよ。

僕も普段冷静で淡々としている方だと思いますが、それでも自分の中で懐疑や怒り、正義感とかさまざまなものを感じてきているわけです。そういう部分があることが人間らしいと思いますし、それを大事にしながらキャラクターに共感し演じていきたいですね。

――そういった中田さんの人生観が綺礼という人物をさらに魅力的にしているのでしょうね。改めて“綺礼から”見た第二章の見どころをお願いします。

【中田】第一章では士郎と桜を見守り、ある意味手助けをしながら聖杯戦争を監督していましたが、今回はもっと物語が緊迫し、マスターとサーヴァントの生々しく人間臭いドラマもあり、なかなか綺礼の思惑通りに進まない部分もあり、そのなかでも綺礼は聖杯を望む人に手に入れてもらうべく暗躍していきます。また、第三章につながるラストシーンがどうなるか、ぜひ楽しみにしていてください。僕も台本渡されて、おお、ここまでやるのか、と(笑)。一気に物語が流れ出します。

関連写真

  • 中田譲治
  • 中田譲治が演じる言峰綺礼 (C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 中田譲治が演じる言峰綺礼 (C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第二章の予告映像の場面カット(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第二章の予告映像の場面カット(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第二章の予告映像の場面カット(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第二章の予告映像の場面カット(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第二章の予告映像の場面カット(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 第一週目来場者特典のイラストボードの絵柄 (C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
  • 劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第二章キービジュアル(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

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