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変わりゆくNHKのSNS戦略 ドラマ部、女性ファン開拓へ“新人”起用の狙い

 NHKでドラマといえば、「朝の連続テレビ小説」「大河ドラマ」の圧倒的な2大ブランドが存在する。では、他にどんなドラマがあるかと聞かれると、すぐ思い浮かばない人も少なくないのでは。そんな同局の「ドラマ10」枠(毎週金曜 後10:00)で10月から始まり、きょう14日に最終回を迎える『昭和元禄落語心中』は、初回放送中から3時間にわたってツイッターのトレンド1位を独走し、毎週トレンド上位に食い込むなど異例の好調ぶりを見せてきた。これまでNHKの課題だった20〜40代女性をターゲットに、作品づくりのみならずSNS(ツイッター)での宣伝手法を一新したことが功を奏しているという。公共放送という性質上、ネット宣伝のあり方も単純にはいかないNHKで今どんな変化が起きているのか。同局ドラマのツイッターアカウント「@nhk_dramas」の取り組みを取材した。

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 同作は、若者たちの間に落語ブームを巻き起こした雲田はるこ氏による同名漫画を岡田将生竜星涼ら人気の若手キャストで実写化。先述の女性層を狙うにあたり、「@nhk_dramas」ではアカウントの顔として、ドラマ部の新人AD「渋谷はな子」を誕生させた。アカウント投稿する“中の人”も新人局員が担当しているらしいが…?(詳細は非公表) 以来、はな子がお気に入りのシーンを紹介したり、噺(はなし)家に“凸撃”インタビューしてみたりと、新人らしく視聴者に近い目線からドラマをPRするスタイルに舵をきった。

 現在フォロワー数は約6万3000とまだ決して多くはないが、10月初頭にはな子が登場して以降、投稿動画の再生数が初めて15万回を突破、「いいね」が1万を突破する例も出てきた。期間と母数を考えれば十分に健闘している。同ドラマ第1話の「NHKオンデマンド」視聴数も朝ドラや大河の平均の約3倍を記録しているという。作品自体の力はもちろんあるが、閲覧・視聴を促す導線として同アカウント(=はな子)の存在感が増していることは確かだ。

 はな子をデザインしたのは、『うにっき』シリーズや『チェリーコーク』などファッションをテーマにした女子のイラストで人気のクリエイター・おおたうに氏。動画ではソーシャルアイドル・notallの渡辺ちこが声を担当している。今回は、おおた氏、そしてこれまで同局でドラマディレクターとして様々な作品を手がけ、現在デジタルプロデューサーとしてWEBプロモーションを担当している佃尚能(つくだ ひさのり)氏がインタビューに応じてくれた。

■ドラマ部新人「渋谷はな子」に託された女性若年層の開拓

――佃さんは、NHK局員でありながらショートフィルムの監督としてカンヌ、ベルリンなど名だたる映画祭にも作品を出品されていたり、異色の経歴ですね。なぜドラマのSNSなどWEBプロモーションを担当することになったのですか。

【佃】ここ4年ほど映像デザイン部という部署にいました。そこは、通常の映像・番組制作“以外”の部分、例えば4KやVFXなど昨今の新しい見せ方を番組内に取り入れていくことが目的で『真田丸』や『ひよっこ』のオープニングなども手がけてました。

そんな中で、古巣のドラマ番組部がドラマのネット宣伝を強化することになり、「デジタルプロデューサー」をやってくれと不意打ちで声をかけられまして(笑)。僕自身は普通のネットユーザーだったのですが、NHK全体でネット・SNS強化はかねてから課題にあげられていたので、やってみましょうと。ただ、一口にネットと言ってもホームページからブログ、SNSまであって、部署も多岐にわたっていたりして…。その中で最もフロントにある発信窓口として「NHKドラマ」全般を扱う @nhk_dramasのツイッターアカウントから変えていこうと。

――担当になられて、アカウントのどんな点に問題を感じましたか。

【佃】リニューアルに着手する前は、アイコンもヘッダー画像も単色のロゴで、つぶやきも「ブログ更新しました」「再放送いつです」とか、一方的な「お知らせ掲示板」状態。これじゃアカンだろうと。誰がやっているのか、アカウント自体に顔がないじゃないですか。

そこで、まずはフレッシュなドラマ部の新人をSNS担当に起用してキャラクター化しよう、アカウントの顔になってもらおうと決めました。おおたさんにはドラマ部の新人女性ADということでデザインを依頼しましたが、実際の“中の人”とはな子が似ているのかは秘密です(笑)。

――おおたさんは、佃さんからどのようなオーダーを受けたのでしょうか

【おおた】最初に「こんな感じに」って佃さんにラフデザインをいただいたんですけど、ちょっとオタクっぽい印象でしたね(笑)。ウケる人にはウケるけど、言われてた女性ターゲットかというと違うかなと思いました。

――(最初のラフを見せてもらうと、紫髪のツインテールにジト目というデザイン。)これはこれでかわいいですが、確かに女性より男性ウケしそうな印象ですね。

【おおた】ただ、「右も左もわからない新人」ということでしたし、佃さんがデザイン的なキャラ付けをしっかりしてくれていたので、意外にサラサラと現在の姿まで形にできましたね。20代の女の子ということで、最初のツインテールだと子どもっぽくなってしまうと思い、横分けのボブにしてみたり。色付けをしてくれたのも佃さんです。

――そもそも、弱点としていた若年層の女性視聴者をこのドラマで開拓しようとした背景は何だったのでしょうか。

【佃】『落語心中』の「ドラマ10」という枠のコンセプト自体が若い層に振り向いてもらおうと設置したものだったりします。作品的にも若いコアなファンがつく可能性があったので、あらゆる属性の視聴者を抱える朝ドラや大河より、この枠でまず挑戦するのが適切かなと思いました。

――最初からマス狙いではなく、しかるべきコアを先に固めると。

【佃】そうです。“幅広くいっぱい”は狙ってません。『落語心中』の場合は若い落語ファン、原作ファンの方がいらっしゃるので、まずは好きな人たちに実写に興味をもってもらいたいなと。原作ファンだけどドラマを知らない、という人がいないようにするのが目標でした。

はな子は新人なので、下手したら視聴者より知らないこともあるし、噺(はなし)家さんに「なんで落語家さんは羽織を着てるんですか?」なんて臆せず聞いちゃう子ですから(笑)。それによってはな子の目線、いち視聴者に近い目線でドラマの魅力が伝わればと。現在は私の責任下で、できるだけ制約なく自由に投稿してもらっています。

■NHKのSNS活用は“遅れて”いる?「常に一番後ろを走るべき」

――おおたさんも、自身のSNSを活用して作品を発信されていますよね。出版や画業の方たちのSNS活用の現状をどう感じていらっしゃいますか。

【おおた】私たち紙の業界だと、宣伝はまず紙媒体でやらないと、と思っている方も未だに多いです。まずは「新聞に広告打ちましょう」みたいな。それよりも今の時代、新人のアイドルさんとかに本持ってもらった写真をSNSにアップした方がよっぽど広がる、といった提案を何年も前からしてきてはいるのですが…。紙業界は今、瀬戸際なので、佃さんのような発想の人がもっと増えてくれたらって思いますよね。

――SNS対応の“遅れ”という意味では、NHKの取り組み方もやはり他局と比べて出遅れてしまったという認識なのでしょうか。

【佃】正確にいうと“慎重にならざるを得ない”ということです。SNSというのはいち企業が運営しているわけで、そこで宣伝・広告活動をするのは、受信料で成り立っている公共放送としてどこまで許されるのかという。例えば、ツイッターと同じ業態のサービスが新規で出てきた時どうするのか、とか。

こういう面に関してNHKは慎重を期さなければならないし、ある意味、常に一番後ろを走るべきなのかもしれません。とはいえ、時代の変化には逆らえないので、ネット社会にも対応させていかなければならない。そこのせめぎあいはNHKならではですね。

――慎重さも失ってはいけない中で、どんな点にNHKドラマアカウントの独自性を見出していくべきなのでしょうか

【佃】実は他局と比較して独自性、差別化というのは意識してません。ネットは『こっちの方が面白いから見よう』みたいな類のものではないと思っていて、その瞬間瞬間で、面白いと感じるものにアクセスする。なので、むしろ意識しているのは自分たちの過去・現在・未来の方。今までよりとっつきやすく、見やすくなって、堅苦しかったSNSがはな子という新人によって目線が下る、という自分たちの変化のほうが重要だと考えています。

根本精神としてはドラマディレクターなので、『見てさえくれれば良いもの作ってるんだ』っていうハートの部分があるので。面白いものは作っているけど、NHKのドラマはとかく敷居が高いと思われがち。はな子の存在は、そこの段差を埋めたいということでもあります。なんで噺家が羽織を着てるのかわからない人でも、この作品を楽しめるんだよと。見てみたら意外と面白かったっていうのがうちのドラマなので(笑)。

――今後、はな子はどんな展開をみせていくのでしょうか

【佃】『落語心中』後は、来年1月から始まる、よるドラ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(www.nhk.or.jp/drama/yoru/zombie/)を担当してもらいたいなと思ってます。あとは、次の新人が二代目を襲名するとか、5分くらいでアニメ化してみるとか…。想像はいろいろ膨らみます(笑)。

【おおた】グッズ化ぜひお願いします! あと、ゆくゆくは局員さんのピンバッジになってくれたらうれしいです(笑)。

 14日(金)に最終回を迎える『昭和元禄落語心中』では、HP・SNS特別企画としてドラマ版の主役・岡田将生とアニメ版の主役・石田彰による“ダブル八雲”対談動画を公開中。
https://www.nhk.or.jp/drama10/rakugo/html_rakugo_movie.html

関連写真

  • 渋谷はな子 (C)NHK
  • 「渋谷はな子」おおたうに氏のラフ案 (C)おおたうに
  • 佃尚能氏 (C)ORICON NewS inc.
  • 「渋谷はな子」おおたうに氏のラフ案 (C)おおたうに

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