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“獣になれる”伊藤沙莉、独自のポジション築く24歳の若きバイプレーヤー

 新垣結衣松田龍平がW主演する日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』で、新垣演じる晶の会社の先輩であり、明るくもはた迷惑な営業職の松任谷夢子を演じる女優・伊藤沙莉。伊藤は“クセの強い”女性社員を好演し、出番自体はさほど多くはないものの視聴者に強烈なインパクトを残している。伊藤の民放連ドラ出演は本作で5期連続。どの作品もそれほど出演シーンが多いわけではないが、絶妙に物語に絡む“台風の目”のような役割を担いバツグンの存在感を発揮している。弱冠24歳ながら、すでに独自のポジションを築きつつある。

出演中のドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ)では、明るくもはた迷惑な女性・松任谷夢子を好演中の伊藤沙莉 (C)日本テレビ

出演中のドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ)では、明るくもはた迷惑な女性・松任谷夢子を好演中の伊藤沙莉 (C)日本テレビ

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■『女王の教室』など“いじめっ子”役で注目 子役上がりで24歳にして豊富なキャリア

 伊藤のキャリアスタートは03年、子役としてドラマ『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』(日本テレビ系)でデビューした。伊藤が演じたのは身体が少女に若返ってしまった女性研究員の役。当時わずか9歳で、かつ演技未経験ながらもこの難役を見事に演じ、注目を集めた。05年には『女王の教室』(日本テレビ系)でいじめっ子役、15年には女性の同性愛を描いた『TRANSIT GIRLS』(フジテレビ系)で主演に抜てき。16年の『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』(テレビ東京系)でも、フェイクドキュメンタリードラマという特異な作品で異彩を放った。普通この世代の若い役者は、シンプルにキラキラとした青春モノの作品や役を演じることが多く、彼女のように特殊な役柄が続くケースは珍しい。

「伊藤さんは“天才肌”で若きベテラン女優の筆頭格」と話すのは、“質の高いドラマ”を表彰する「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」の審査員も務めるライターの田幸和歌子氏。

「『女王の教室』での“いじめっ子”桃役で、女優・伊藤沙莉を最初に意識したという人が多いのではないでしょうか。桃は同じ塾に通う和美(志田未来)をいじめ抜く役どころ。ハスキーボイスとつり目が印象的で、ベテラン感のある達者な演技のため、本当に嫌なヤツに見えました(笑)。さらに『GTO』(14年/フジテレビ系)や亀梨和也さん主演の『怪盗 山猫』(16年/日本テレビ系)でもやっぱりいじめっ子を好演し、上手すぎるがゆえに視聴者から反感を。当時はいじめっ子役がハマりすぎて、若くして“悪役女優”の道まっしぐらではないかとすら思えました」(田幸氏)

■朝ドラ『ひよっこ』でコメディエンヌの力量発揮、お茶の間に愛される女優へ

 そうした印象を大きく変えたのが、17年前期のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』だ。伊藤が演じたのは、ヒロイン・みね子(有村架純)の幼なじみである三男(泉澤祐希)に想いを寄せる米屋の娘・さおり。父親とソリが合わず、米屋をつぶしてパン屋にしてしまおうと目論む強烈なキャラクターである一方、一途に三男を愛する様は実にキュートで、ユーモアにあふれる演技で老若男女、幅広い世代の人に親しまれた。

 朝ドラでコメディエンヌの力量を発揮し、女優としてのステージを1つ上げてからは、『片想いの敵』、『隣の家族は青く見える』(ともにフジテレビ系)、『いつまでも白い羽根』(東海テレビ・フジテレビ系)、『この世界の片隅に』(TBS系)、『恋のツキ』(テレビ東京系)、そして『獣になれない私たち』と、5期連続で話題作に出演。田幸氏は彼女の魅力について、「モデル出身の女優さんなど、スラリとした長身美女が多い昨今、顔や体型などが“昭和っぽい”のも他の女優さんとかぶることがなく、大きな武器の1つ。子どもの頃から上手かったのに経験値まで豊富で、重宝されるのは当然のことだと思います」と語る。

 週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』によるドラマ満足度調査「オリコン ドラマバリュー」では、各ドラマへの出演時に「伊藤さんのコミカルな演技がとても面白くて好き」(30代女性・東京/『ひよっこ』出演時)、「登場すると何かが起こりそうで、いい意味で気が置けない女優さん」(30代女性・東京/『この世界の片隅に』出演時)、「存在が新鮮で良い」(50代女性・神奈川/『いつまでも白い羽根』出演時)などの好意的な声が。その親しみやすさで同性からの支持も厚く、そのことが彼女の起用を後押しする理由の1つとも言えるだろう。

■「けもなれ」ではリアルで重々しい描写に軽妙さをプラス 作り手本来の狙いを支える存在に?

 そして現在は、「けもなれ」でも彼女らしい異彩を大いに発揮している。出演シーンは多くはないが、例えば、第6話では晶が働く「ツクモ・クリエイト・ジャパン」と、晶の恋人・京谷(田中圭)が勤務する「樫村地所」との会食シーンに出演。京谷の後輩の筧(吉村界人)が“路チュー”カップルについて「何、自分の世界に浸ってんだよ。いるんだよな、そういう女」と絡み酒をすると、「それなんで女の問題になってんの? キスは2人でするものでしょ!」と“獣”に。「大体どうして女の浮気はだらしないとか言われて、男は甲斐性みたいに言われんの?」などヒートアップして正論を放ち続け、SNSでは「松任谷、キタ!」「吠えた!」などの声で盛り上がった。

「『けもなれ』での伊藤さんの役割は、間違いなくコメディ部分。“辛い現実”の描写がリアルで重々しいために脱落していく視聴者も多いなか、伊藤さんは、ハゲ社長・九十九を演じる山内圭哉さんとともに“笑い”パートを担当。もちろん社長のパワハラはひどいですし、伊藤さん演じる要領の良い無責任な同僚もヒロイン・晶を追い詰めている原因の1つなのですが、山内さんと伊藤さんが上手く、愛嬌があるために憎めない。思わず笑ってしまう軽妙さを添えています。おそらく作り手の予想よりも重々しく辛く受け止めてしまっている視聴者が多いなか、作り手本来の狙いを支えているのが演技力に絶大な信頼を得ているこの2人だと思います」(田幸氏)

 17年公開の映画『獣道』では、ヒップホップユニット・餓鬼レンジャーとコラボレーションし、限定ユニット“餓鬼連合(がきれんごう)”として歌手デビューをしたり、今年はNHKのスペシャルコント『志村けんin探偵佐平60歳』といったコント番組に出演したりと、単なる女優業だけでなく活躍の場を拡大し続けている。彼女が劇中で巻き起こす“台風”を、芸能界でどこまで起こすことができるか。楽しみに見守りたい。

(衣輪晋一/メディア研究家)

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提供元:CONFIDENCE

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