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人気脚本家・野木亜紀子氏、『フェイクニュース』に込めたメディア不信への危機感

 「野木亜紀子の脚本だから観る」。そんなファンの期待に応え、期待を超えて、視聴者の信頼を得ている脚本家の野木亜紀子氏。10月期は日本テレビ系で『獣になれない私たち』が放送中。これに加えて、今月20日と27日(土曜 後9:00)にNHKで初めて執筆したドラマ『フェイクニュース』が前後編で連続放送される。『逃げるは恥だが役に立つ』(16年)や『アンナチュラル』(18年、どちらもTBS)など、どこか他人ごとではない共感を呼ぶ脚本の源泉はどこにあるのか。フェイク(うその)ニュースを題材にしたドラマを書くに至るまでの経緯を聞いた。

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 『フェイクニュース』は、ネットメディア編集部を舞台に、北川景子演じる主人公の記者・東雲樹がSNSでの投稿きっかけに広がった食品への青虫混入騒動の取材をはじめるが、事態は思わぬ方向へ拡大。やがてその矛先は樹自身にまで及ぶ。何が本当で何がうそかもわからない世界の中で、記者として樹がフェイクニュースにどう立ち向かっていくのかが描かれる。

■フェイクニュースを題材に選んだ理由

 「以前から、メディアを題材にしたドラマを作りたいと思っていました。2012年に設立された『日本報道検証機構』というマスコミの誤報を検証する団体の存在を知って、それからずっと興味を持っていました。まだファクトチェックということばも使われていなかった頃ですが、誤報を検証したり、情報を精査したりする取り組みは本当に必要だと思います」。

 野木氏にはドキュメンタリーを作っていた経験がある。青春時代、映画監督を目指して日本映画学校で学び、担任の先生から「向いてそう」とすすめられ、ドキュメンタリー番組などを制作する会社に就職。フリーランスを含め、約8年、制作に関わった。

 「ドキュメンタリーを作っていて、どこまでが演出で、どこからがヤラせか、その線引きがどこにあるのか、ということの難しさに向き合ってきました。そもそも、情報というものは、それがすべて合っているとは限らないですよね。ニュースもどう切り取るかで印象が変わってしまう場合もある。そういったことがずっと気になっていて。ドキュメンタリーもニュースも本質的に危うさを抱えているものだと思っていました」。

 脚本家に転向する転機は、映像業界の不況とともにやって来た。ドキュメンタリーの制作が減り、旅番組やら何やら、その他いろいろやっているうちに、「私がやりたかったことって? 映画を作りたかったはずなのに、と思い出して。でも、その頃には自分は現場に向かないことを自覚していたので、脚本で携わろうと思い、ドラマのシナリオコンクールに応募しはじめました」。

 2010年、『さよならロビンソンクルーソー』で第22回フジテレビヤングシナリオ大賞の大賞を受賞。その後、『空飛ぶ広報室』(13年、TBS)、『掟上今日子の備忘録』(15年、日本テレビ)、『重版出来!』(16年、TBS)、『逃げるは恥だが役に立つ』など多くの原作ものの脚本を手がけ、待望のオリジナル作品『アンナチュラル』も、ギャラクシー賞や放送文化基金賞などの賞を総なめにしている。

 野木氏が書くせりふには、シビアにドライに現実を見つめていながら、強いメッセージ性と温かいまなざしを感じることも多い。脚本家として着実にキャリアを築いていく中で、ドキュメンタリーでの経験が創作のベースになっているのは間違いないだろう。

■ドラマだからこそ伝えられることがある

 「メディアを題材にしたドラマを作りたい」と思っていたところ、2017年の春にNHKの北野拓プロデューサーからオリジナルドラマの執筆を打診された。

 「『逃げるは恥だが役に立つ』が放送された後だったので、恋愛ものとか夫婦ものはどうでしょう、と提案されたのですが、北野さんが報道記者出身だったと知り、だったら…と。ドラマのプロデューサーで、報道のこともわかる人ってそんなにいないんです。報道の経験や知見がない人と報道系のドラマを作るのは大変だし、リスキーなテーマだと思っていたので、私にとって北野さんは飛んで火にいる何とやらでした(笑)。ドナルド・トランプ氏が勝利した2016年11月のアメリカ大統領選以降、フェイクニュースが世間でも話題になりだした頃で、今やるならフェイクニュースなんじゃないかと雑談の中で行き着きました」。

 いざ、執筆をはじめたら「調べなければいけないことがたくさんあって、とても大変でした。取材に関しては北野さんが半分以上助けてくれて、とても助かりました。途中で何度、この題材に手を出したことを後悔したことか」と、苦笑いを浮かべた。

 SNSの普及により「報道機関が信用されなくなったら怖いな、という問題意識が、描くべきものの一つとして自分の中にありました。メディア不信がフェイクニュースのまん延を助長する。信頼が崩れるとありもしない陰謀論を信じてしまう人が増えてしまう。ネットではそれがあっという間に拡散され、シェアされる。他にも同じような不信感を抱いている人がいる、と可視化され、不信感が増幅していくデススパイラル。誰も幸せにならない。メディアの問題は数多くあるけれど、その中で正しいことを伝えようと、もがいている人もいる。そういった思いから書いたのが『フェイクニュース』でした」。

 前編から二重三重の仕掛けが施され、スリリングな展開と北川や光石研らの演技に引きつけられる。野木氏も「後編の北川さんのお芝居で泣けた」と話していたし、一つの書き込みが不特定多数の人に拡散されていくネットの世界をそのまま映像化したような演出もうまい。

 「デリケートな問題も多く、リアリティーとエンターテインメントのせめぎあいの中で、ドキュメンタリーやニュースとは違うやり方で、ドラマだからこそ伝えられることがあるんじゃないか、という思いが今回もあります。大変でしたけど、完成作品を見たらすべて吹っ飛びました。書いて良かったです」。



関連写真

  • 『逃げ恥』『アンナチュラル』の野木亜紀子氏がNHKのドラマを初執筆。北川景子主演『フェイクニュース』10月20日・27日、総合テレビで放送(C)NHK
  • 『逃げ恥』『アンナチュラル』の野木亜紀子氏がNHKのドラマを初執筆。北川景子主演『フェイクニュース』10月20日・27日、総合テレビで放送(C)NHK
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