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『美しい顔』作者・北条裕子氏が謝罪 参考文献未掲載「とても悔いております」

 第159回芥川賞の候補作になった北条裕子氏の小説『美しい顔』作中に、石井光太氏のノンフィクション『遺体 震災、津波の果てに』内の表現と酷似する部分があると問題となった件で、北条氏は9日、『美しい顔』を掲載した『群像』出版元の講談社を通じ文書で謝罪した。

文芸誌『群像』6月号

文芸誌『群像』6月号

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 第61回群像新人文学賞を受賞した『美しい顔』は講談社の文芸誌『群像』6月号に掲載。その後、『遺体 震災〜』からの“盗用”疑惑が問題となったことを受け、今月3日に講談社が声明を発表。参考文献として掲載しなかった点について謝罪したが、盗作・剽窃(ひょうせつ)といった指摘については抗議する姿勢を示した。今月6日に発売された『群像』8月号でも、『遺体 震災〜』を参考文献として未掲載だった点については謝罪している。

 北条氏はコメントのなかで、参考文献としての記載がなされなかったことについて「(『遺体 震災〜』で取材対象となった)その関係者の方々の思いや労力に対して抱いている敬意を表するために、参考文献一覧を小説の末尾に載せたいと考えていました。しかし、この作品がもし新人賞を受賞し、単行本を刊行できるようであれば、その時にそれをすれば良いと思い込んでしまっていたのは私の過失であり甘えでした」と述懐。

 続けて「なぜ新人賞応募時に参考文献を明示しなかったのか、今とても悔いております。結果的に参考文献の著者・編者、さらには現地の取材対象者の方々に、敬意と感謝の気持ちを伝えるどころか、とても不快な思いをさせてしまうことにもなりました。たいへん至らなかったと反省しております」と謝罪している。

 また、「参考文献の扱いへも配慮を欠いたことも猛省しております」とし、「いくつかの場面においては客観的事実から離れず忠実であるべきだろう、想像の力でもって被災地の嘘になるようなことを書いてはいけないと考えました。その未熟な判断が、関係者の方々に不快な思いをさせる結果となりました」と振り返り、「私は自身の目で被災地を見たわけでもなく、実際の被災者に寄り添いこの小説を書いたわけでもありません。そういう私が、フィクションという形で震災をテーマにした小説を世に出したということはそれ自体、罪深いことだと自覚しております」とつづった。

 一方で、それでも被災地をテーマに小説を執筆した理由については「震災が起こってからというもの常に違和感があり、またその違和感が何年経ってもぬぐえなかった」とし、「小説の主人公を作り上げることでしか理解しえない、理解しようと試みることさえできない人間があると信じてました。そしてその理解への過程、試みが、人の痛みに寄りそうことにもなると信じました。それが『美しい顔』という小説になりました」と説明。

 最後は「しかしこのようにして自分が表現したかったことを表現するならば、同時に、他者への想像力と心配りも持たなければなりませんでした。大きな傷の残る被災地に思いを馳せ、参考文献の著者・編者を始めとした関係者の方々のお気持ちへも想像を及ぼすことが必要でした。私の物書きとしての未熟さゆえに、関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまったことを、改めて深くお詫び申し上げます」と重ねて謝罪している。

 この問題をめぐっては、『遺体 震災〜』出版元の新潮社が6日、講談社と北条氏に対し「参考文献掲載のみならず、特に酷似した箇所の修正」「『遺体』で描かれた被災者の方々への引き続きの誠意ある対応」などを文書を通じ求めていた。

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