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小田和正×明治安田生命CM20周年 担当者が明かす絆「小田さんに見守っていただいた」

 名前も知らない誰かが親しい人たちと笑みを交わす、そんな写真が淡々と巡っていく。生命保険会社・明治安田生命の企業CMはとても簡潔だが、誰かと生きる愛おしさを思い知らされ、“泣けるCM”としてあまりに有名だ。そしてこのCMの感動を語る上で欠かせない存在が、写真とともに流れるシンガー・ソングライター、小田和正(70)の楽曲。今年、小田の曲を使用したこのCMシリーズが始まってから、ちょうど20年目を迎えた。企業が一人のアーティストを20年間もCM起用し続けるのは極めて異例だが、同社広報部の担当者に改めてこのCMの魅力や、小田と築いてきた20年の絆を振り返ってもらった。

明治安田生命 広報部・ブランド戦略推進部長の田口寛さん(左)、同広報部・五十嵐玲奈さん (C)ORICON NewS inc.

明治安田生命 広報部・ブランド戦略推進部長の田口寛さん(左)、同広報部・五十嵐玲奈さん (C)ORICON NewS inc.

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■写真と歌だけ シンプルなCM演出に込めた思い

 同CMは1999年に第1弾を放送後(当時は明治生命CMとして放送)、「あなたがいる しあわせ。」をテーマにCMに使う写真を視聴者から募集し続け、シリーズ化されてきた。応募された写真は2008年に50万点、15年には100万点を突破し、昨年時点では累計112万2672点を数える。厳選された写真で制作されたCMにはこれまで、小田の楽曲「言葉にできない」(99〜03年)、「たしかなこと」(04年〜13年)、「愛になる」(14年〜)、「今日もどこかで」(15年〜)の4曲が20年にわたり、彩りを添えてきた。

 このシリーズが始まるまで同社と小田に特別な関係性はなかったそうだが、99年当時、すでに発表から15年以上が経過していた「言葉にできない」をCM起用するに至った経緯をまずは聞いてみた。

 最初のコンセプトとしては「生命保険というのは形がない商品ですので、CMでは人と人の助け合いや、特に家族愛を目に見える形で表現したかった」という狙いがあったという。その上で「候補となる曲はいくつかあったのですが、この曲の歌詞『あなたに会えて ほんとうによかった 嬉しくて 嬉しくて 言葉にできない』という表現が、まさに訴えたかったコンセプトにピッタリ合致していまして、起用することを決めたということです」と当時を振り返る。

 そもそも、このCM自体が動画を一切用いず、静止画のみで構成するという異色の演出だ。最終的にこの形に行き着いた理由は何だったのか。「最初は普通に動画で撮る案もありましたが、人と人がつながる幸せを視聴者が自分と重ね合わせて感じてもらうには、その“瞬間”をとらえた写真の方が効果的だと思いました。あとは小田さんの歌声だけ、余計な要素を何も加えないのが最も心に訴えかけるという結論になりました。お子さんや友人、その一瞬を写した写真だからこそ自分を投影できるというのはあると思います」。

 特に2年目から放送されたCMでは、ダウン症の男の子・秋雪くんとその家族の写真に大きな反響が寄せられた。「その後、秋雪くんのご両親にご協力もいただいて特別編のCMを作らせていただいたりもして、感銘を受けたと多くのお声をいただきました。この頃から弊社のCMとして一気に認識されるようになりましたね」。20年目を迎えた現在でも、全国の学校などからCMを「教材として使いたい」という依頼が寄せられるといい、時代の変遷を経ても普遍的な“愛情”を伝えるCMとして、多くの視聴者の心をとらえてきた。

■時間をかけ築いた信頼関係 苦境に届いた小田の激励

 20年の歩みをひも解くと、同社と小田との関係にはいくつかの転機があったという。最初は明治生命と安田生命が04年に合併し現在の社名になった時。一般的に企業が対等合併した場合、CMやイメージキャラクターなど宣伝戦略は一新されるものだが、同社は合併後も小田のCM起用継続を決定した。「小田さんの方では、合併するそれぞれの会社の立場を考慮されて、先にご辞退しようと考えられていたようですが、我々が今後もよろしくお願いします、と伝えにうかがったら、大変感激してくださった」。

 ここで生まれた信頼関係はその後の「たしかなこと」「愛になる」など、CMのための書き下ろし曲として結実する。小田本人も、CM20周年に同社へ宛てたコメントで「彼らの期待に応えられるように頑張りました」と当時を振り返りながら、「たしかなこと」を書き下ろした経緯について次のように明かしている。

「この曲は、明治安田生命からの依頼がなければ生まれませんでした。それまで企業CMに使われていたのが、『言葉にできない』。
あの曲が、長い時間をかけて使用され、多くの人に愛されていたからこそ、次の依頼があったわけで、その『言葉にできない』を越える新しい楽曲を作って欲しい、という難題に向き合うことになりました。」

 また、翌05年に同社が保険金未払いなど不祥事で行政処分を受けた際には、逆に会社側が小田の心意気に救われた。「その時は小田さんがこんな会社のCMを今後もサポートしてくださるなんてとても思えなかったんですが、小田さんからは『企業広告に関わらせてもらっている以上、自分の立ち位置は明治安田側の人間なんです。前を向いて一緒に頑張って行きましょう』と言ってもらいました。このような経緯もあって、お互いの絆がさらに深まっていったんだと思います」。

■「小田さんに見守っていただいた」20年…ブランドイメージは変えず

 こうして両者の関係は年輪を重ね、今や「写真と小田和正の歌」という広告の形は互いを象徴し合うような、誰もが知るCMになった。「私たちは『人に一番やさしい生命保険会社』を企業ビジョンとして掲げていますが、言葉では伝わりづらいそのメッセージも、“やさしさそのもの”である写真と小田さんの歌声だけで伝えることができる。我々としても、この形を変えるのではなく、いつしかブランドイメージとしてずっと続けていきたいという考えに自然となっていきました。今後もやらせていただける限り小田さんとの関係は深く続けていきたいです」と、両者のタッグはこれからも揺らがない。「明治安田生命と小田さんを重ねていただけるのが我々にとっては最高の喜びですし、“小田さんの明治安田生命”というのが最高のブランド戦略なんです」。

 小田は現在、70歳にしてアリーナを含む大規模な全国ツアーを同社と共に展開している。数々の“国内最高齢”記録に挑み続ける小田へ最後にメッセージを求めると「本当にいつまでもお元気でステージに立ってほしいという思いだけです。この20年間、本当に小田さんに見守っていただいたという思いですね」と笑顔でエールと感謝を伝えた。

 CMタレントとクライアントという皮相の関係では語れない20年の絆。同社と小田の間柄もまたCMにつづられる一葉の写真のようで、互いに寄り添う温かさがあった。

 同社では現在、過去のCM動画や小田のツアー映像の掲載、自分の写真で「明治安田生命CM」風のオリジナルCMを作成できるツールなど、20周年特設サイトを公開している。


●20周年特設サイト
http://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/ld/kindness/index.html

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関連写真

  • 明治安田生命 広報部・ブランド戦略推進部長の田口寛さん(左)、同広報部・五十嵐玲奈さん (C)ORICON NewS inc.
  • 明治安田生命CM『やさしい時間』篇、場面カット
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