• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
ORICON NEWS

世界80ヶ国以上で導入、美術的著作物の権利を守る「追求権」とは

 視覚美術品などの原作品を守るための仕組みとして、欧州をはじめ世界80ヶ国以上で導入されている「追求権」。世界でも有数なアートマーケットがある日本での追求権の導入を求めるべく4月、CISAC(著作権協会国際連合)事務局長のガディ・オロン氏とCISACアジア・太平洋地域代表のベンジャミン・グー氏が来日、CISACの理事団体として活動を支援しているJASRACが主催する形で13日、記者会見が行われた。彼らが日本での導入を促す意義とは。

日本での追求権導入を日本政府に呼びかけるべく来日した、CISAC事務局長のガディ・オロン氏(右)とCISACアジア・太平洋地域代表のベンジャミン・グー氏 (C)oricon ME inc.

日本での追求権導入を日本政府に呼びかけるべく来日した、CISAC事務局長のガディ・オロン氏(右)とCISACアジア・太平洋地域代表のベンジャミン・グー氏 (C)oricon ME inc.

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


◆日本で導入された場合、クリエイターの没後50年間その権利が有効になる

 追求権は、絵画や金属工芸品等の美術作品、写真のオリジナルプリント、アニメーションのセル画といった視覚美術品の著作権をサポートするもの。各作品が売買される度、手がけたクリエイターに対価が還元されるという仕組みだ。文学的、美術的著作物の保護に関する「ベルヌ条約(14条の3)」にも規定のある権利で、EU諸国をはじめ、イギリス、ドイツ、ロシア、メキシコなど、現在88ヶ国で導入されている。徴収は、各国の追求権管理団体が行う。(日本で導入された場合は、日本美術著作権協会・JASPARになる見込み)

 そもそも同権利の誕生は、1920年にフランスで起こった出来事が関連している。ある美術コレクターが、フランスの画家・ミレーの作品『晩鐘』をオークションで売却することで大金を得た。しかし、その一方でミレーの遺族は困窮した生活を送っていたという(ミレーの作品の価格が高騰したのは彼の没後)。この出来事が発端となり、クリエイターはもちろんその家族を守る権利としてシステムが構築されていった。

 追求権のルールは国によって異なるが、対象となるのはヨーロッパではオリジナル(一品物)、または同等の複製物が基本。原作者の手元に入る対価は、売買(レンタルも含む)された金額の3%、5%など、こちらも国による。有効期限は著作権と同じ期間という考えが一般的で、ヨーロッパではクリエイター(著作者)の生前〜没後70年間、もしも日本で導入された場合は生前〜没後50年間その権利が有効となる。なお、これらは同権利が導入されている国出身のクリエイターにしか認められず、例えば、すでに追求権が認められている外国で行われたオークションで日本人の作品が売買されても、その作者である日本人クリエイターは対価を受け取ることができない。

◆伝統技術の保護と振興にも役立つ可能性が

 会見に出席したCISAC事務局長のオロン氏は、「現在、音楽や美術品など、いろいろな作品に関する著作権料が徴収されています。追求権による徴収額は、導入されていない国が約2%なのに対し、すでに導入されている国では約25%。このことから、追求権が美術家・作家の皆さんにとって非常に重要な収益源であることがわかると思います。また、多くのアーティストは、駆け出しの頃は経済的に苦しい状況にあります。どうしても初期の作品は安価で販売されますが、その後作品の価値が上がっても、原作者がその分の対価を得られないのはあまりにも不公平です」と追求権の重要性について熱弁。報道陣に向け「日本の視覚芸術家の皆さまにも、世界中の芸術家の皆さまと同様のサポートが受けられることを切に願っています」と語った。

 CISACアジア・太平洋地域代表のグー氏は、日本や中国、韓国等のアジア・太平洋地域が、伝統芸術など豊富なアート作品を有する地域でありながら、「現在、導入されている88ヶ国のリストの中に、(アジア・太平洋地域は)アゼルバイジャン、ラオス、インドなど、わずか5ヶ国しか導入されていません。対価がアーティストの皆さんに還元されれば、さらなる創作活動の一助となります。また、伝統技術が豊かな国においては、伝統技術の保護と振興にも大いに役立てることができると思います」とコメント。昨今は、ネットでの売買、オンライン取引が一段と活発化してきていることもあって、「一刻も早く国際的な枠組みの中でこの追求権が市民権を得て、世界的に認められるようになってほしいと思います」と熱を込めた。

 会見に同席した、APG-Japan(日本美術著作権機構)会長で日本画家の中島千波氏は、「一般的に追求権、“追求する”という言葉がキツいような感じがして、最初はどうなんだろうと思っていましたが、細かいことを理解するとその重要性がわかってきた」と語っていた。ちなみに、追求権を英語では「Resale Right」、フランス語では「Droit de Suite」と記す。日本でのスムーズな導入には、もしかするとネイミングの再考も必要になってくるのかもしれない。

関連写真

  • 日本での追求権導入を日本政府に呼びかけるべく来日した、CISAC事務局長のガディ・オロン氏(右)とCISACアジア・太平洋地域代表のベンジャミン・グー氏 (C)oricon ME inc.
  • 追求権が導入されるとどうなる? 原作品創作後の販売例

提供元:CONFIDENCE

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

 を検索