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中村獅童、下積み時代に渥美清さんを「一方的に見ていた」思い出語る

 女優の満島ひかり黒柳徹子の半生を演じるNHKの土曜ドラマ『トットてれび』(毎週土曜 後8:15)も残すところあと2回。11日放送の第6回は、『男はつらいよ』シリーズの寅さんで国民的人気を博した渥美清さんと徹子の出会いから別れまでを描く。このドラマで渥美清を演じるのは、歌舞伎俳優の中村獅童だ。渥美さんにまつわる、とっておきの思い出があるという。その話をしながら獅童の右目から一筋、涙が流れたが、その表情はとてもすがすがしいものだった。

NHKのドラマ『トットてれび』で渥美清役を演じる中村獅童(C)NHK

NHKのドラマ『トットてれび』で渥美清役を演じる中村獅童(C)NHK

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■渥美さんのことを思うと、泣けてくる

 渥美さんのことを思うと、泣けてくるんだよね。僕ね、自分で言うのも変だけどけっこう歌上手いと思っているんですよ、でも撮影の時、全然歌えなかった。中村獅童の個人的な思い入れが強すぎて、こみあげてきちゃって。ダメだったね。

 まずね、「渥美清さんの役で出てください」ってオファーをいただいた時に、なんで俺?って思ったからね。外見的にも似ていないし、共通点は目が細いところだけ。ましてや、大好きな渥美さんですし。僕にはできない、「無理です」ってお断りしようとしたら、プロデューサーに「あなたにしかできない芝居があるはずです」と言われて、腹を決めました。

 満島さんも、向田邦子役のミムラさんも、森繁久彌役の吉田鋼太郎さんも皆、同じだったんじゃないかな。ただ、引き受けたからには「ものまねショーみたいになるのだけは避けよう」という思いも一緒だった。それにしても、徹子さんを演じている満島さんは本当にすごい。ほんとにすごい女優。彼女の真似もできないよ(笑)。

 渥美さんといえば、子どもの時から好きでした。うちの母親(小川陽子さん)は4歳の僕をいろんなところに連れて行った。歌舞伎だけじゃない、唐十郎さんの紅テントにも行ったし、ストリップから劇団四季まで、いろんなもの見せてくれた。その中に、映画もあって、『男はつらいよ』を毎年のように観ていました。子ども心に「マッチ(近藤真彦)が好き」というのとはまた違った感じで、渥美さんのことが好きでしたね。それに、叔父の萬屋錦之介は映画『沓掛時次郎 遊侠一匹』(66年)で渥美さんと共演していたし、勘三郎兄さん(中村勘三郎)からも渥美さんの話を聞いていたので、すごく親近感を抱いていました。

■白シャツにチノパン姿の渥美さんが忘れられない

 渥美さんと直接、お話をすることはなかったんだけれど、会ったというか、僕が一方的に渥美さんを見たことがあって。忘れもしない、それは「娘道成寺」という演目だった。その頃の僕は全然、役が付かなくて、この時もただ並んで座っているだけの役だった。ある日、幕が上がったら、ちょうど目線の先に渥美さんが座ってらして。その時の渥美さんは、パリッとした白いシャツにチノパン姿で、寅さんのイメージとは全然違っていました。

 渥美さんには渥美さんなりのこだわりがあって、ああいう格好をしているんだろうな、おしゃれだな、と思いながら見ていた。薄暗い客席の中で、渥美さんだけがスポットライトが当たっているようでした。その時、一度きり、僕が一方的に渥美さんを見ていただけなんですけど、寅さんでも誰でもない、誰も知らない渥美さんの顔を見ちゃったなっていう思い出、あの時の渥美さんの姿がずっと心に焼き付いているんです。

 ただ、渥美さんの話になると、叔父や勘三郎兄さん、母のことも思い出して、こみ上げてくるんだよね。それが何なのか、饒舌に語ることができたら役者をやめて、コメンテーターになっているよ(笑)。理屈で片付けられないことを表現するのが役者だし、何が正解なのかもわからない怖さもある。だから、このドラマで「渥美清」を演じるのは怖かった。

 だけど、「渥美さんってもしかしてこういう人だったのかな?」「渥美さんて、面白い人だったんだな」と、渥美さんについて視聴者がいろいろ想像して、楽しんでもらえているならうれしいですね。芝居は役者の想像の産物だし、そうやって観客に楽しんでもらうのが役者の仕事だと思うし、そこに生きがいを感じるし、それこそ役者の醍醐味だよね。すべての撮影が終わったところで役者が満たされることはないけれど、満たされたら終わりだと思うけど、プレッシャーからは解放されてすっきりしています。

■NHK総合『トットてれび』第6回(6月11日放送)

 徹子と渥美は顔を合わせればケンカを繰り返していた。しかし、浅草育ちの渥美が慣れないテレビの世界で悪戦苦闘する姿を見て、徹子は次第に親しみを覚える。『夢であいましょう』で息の合ったコントを演じる2人の仲は噂になり、マスコミにも書きたてられる。渥美が「寅さん」で大スターになってからも2人の交流は変わらなかった。「兄ちゃん」「お嬢さん」と呼び合った徹子と渥美の出会いから別れまでを描く。

関連写真

  • NHKのドラマ『トットてれび』で渥美清役を演じる中村獅童(C)NHK
  • 『男はつらいよ』で国民的スターとなった渥美清(C)NHK
  • 6月11日放送の第6回は黒柳徹子と渥美清さんの交流を描く
  • NHKのドラマ『トットてれび』6月11日放送の第6回は黒柳徹子と渥美清さんの交流を描く(C)NHK
  • NHKのドラマ『トットてれび』6月11日放送の第6回は黒柳徹子と渥美清さんの交流を描く(C)NHK
  • NHKのドラマ『トットてれび』6月11日放送の第6回は黒柳徹子と渥美清さんの交流を描く(C)NHK
  • NHKのドラマ『トットてれび』6月11日放送の第6回は黒柳徹子と渥美清さんの交流を描く(C)NHK

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