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“オールスターキャスト”洋画と邦画の違いとは? 遊び心と配役の理由付けが重要

 ハリウッド映画では、“オールスターキャスト”ものがよくあり、そのたびに映画ファンを中心に大きな話題になる。最近で言えば、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピッドらが出演する『オーシャンズ11』(2001年〜)シリーズや、シルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリスらアクションスター総出演の『エクスペンダブルズ』(2010年〜)シリーズなど。一方、日本となると、オールスターキャスト映画といっても今ひとつピンとこない。むしろ「邦画ではオールスターキャストは成功しない」というジンクスすらあるのではないかと思わせられる。なぜ邦画ではオールスターキャスト映画は目立っていないのだろうか?

すっかりおなじみの人気作。シルベスター・スタローンほか超豪華アクションスターが名を連ねる『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(C)EX3 Productions, Inc. All Rights Reserved.

すっかりおなじみの人気作。シルベスター・スタローンほか超豪華アクションスターが名を連ねる『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(C)EX3 Productions, Inc. All Rights Reserved.

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◆サービス精神にあふれるハリウッドのオールスター映画

 ハリウッドを見ると、古くは『タワーリング・インフェルノ』『オリエント急行殺人事件』(1974年)あたりが、いわゆるオールスターキャスト映画の代表作だろう。そのあたりから脈々と受け継がれる“主役級の俳優が大量に出演する”系譜は、脇役にいたるまで主役レベルの俳優で埋め尽くされることが多い。ゴージャス感も半端ではないし、配役も絶妙でそれぞれのキャストの個性を活かしながら、ストーリー的にも無理なく作られている。

 またハリウッドの場合、『アベンジャーズ』シリーズのように、俳優陣も豪華ながら、ウルヴァリン、アイアンマン、ハルクなど、それぞれに映画が成立するマーべルヒーローズが一堂に会するというものもあり、サービス精神にあふれ、どこか遊び心とシャレが効いている。出演している俳優たちも“遊び感覚”で楽しんでいるようにも見え、観客も“お祭り気分”が味わえる作品が多いようだ。

 邦画でも、『ステキな金縛り』(2011年)、『清州会議』(2013年)、『ギャラクシー街道』(2015年)などの一連の三谷幸喜映画では、常連の主演クラス俳優(役所広司、西田敏行、佐藤浩市など)たちが名を連ねた。また昨年は、人気ドラマ『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)を手がけた古沢良太脚本の『エイプリルフールズ』も公開され、旬の俳優たち(戸田恵梨香、松坂桃李、岡田将生など)が勢揃いした。

 これらはどれもオムニバス的な展開が多く、ハリウッド映画のように、出演者たちがストーリー的にがっつり絡むという“豪華共演感”は薄かったようだ。「三谷さんの作品は基本的にコメディです。『エイプリルフールズ』もその名の通りコメディ。でも、日本人がアメリカ人のようにコメディ映画好きかと言うと、実はそうでもないんですね。実際、ヒットする作品は大河ドラマ的な、歴史エンタメ系映画が多い。どこかシリアスなもののほうが日本人には受けやすいところがあります。海外で成り立っているような、オールスターキャストを楽しめる土壌はあまりないんじゃないでしょうか」(映像制作会社スタッフ)

◆ひとつの日本の文化的特徴“両雄並び立たず”

 ちなみに2010年には、蒼井優、鈴木京香、竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、広末涼子(五十音順)などといった、一流女優たちが豪華共演した『FLOWERS』というオールスターキャスト映画もあった。主演クラスの女優ばかりというのも、それぞれの女優の個性や魅力、実力が活かしきれないのかもしれない。また、各女優の出演時間や、いわゆる“格”の上下、さらには事務所間の力関係など、さまざまな“大人の事情”も絡んでくることもあるのかもしれない。

「日本人の国民性もあるんじゃないでしょうか。あまりにもキャストが豪華だと、どこかで“やりすぎ”とか“もったいない”と思ってしまうところがある。昔から“両雄並び立たず”という言葉も日本にはあります。適材適所と言うと聞こえはいいですが、“分相応”とか、“収まりがよくない”ことを気にするメンタリティーが日本人にはあるんだと思います」(前出・スタッフ)

 しかし一方で、それぞれのキャストがその役を演じる理由がその物語のなかにしっかりと存在していれば、それがオールスターかどうかというところは問題ではなくなってくるだろう。今年はこの先、そういった“理由”がありそうなオールスター作品が邦画でも並んでいる。5月には、佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、緒形直人、窪田正孝、瑛太らが出演する『64‐ロクヨン−』の前編(後編は6月公開)、さらに9月には、渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、宮崎あおい、妻夫木聡らの『怒り』。邦画らしい社会性のある硬派な物語をベースにした、オールスターキャストの大作になる。

 この1月は、若い世代の俳優がオール出演した『信長協奏曲』がヒットしたことからも、世代交代を含め、日本人の映画を観る感覚が変わってきた気配も感じられる。先の2本の大型作品が“オールスターキャスト邦画のジンクス”を打ち破ることが期待される。

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