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福岡発、ホラーアニメが海外バイヤーから注目

 政府の「地方創生×クールジャパン」戦略を追い風に、海外展開に取り組むローカル局が増えている。KBC九州朝日放送もその1つ。世界を見据えて「ジャパンホラー」コンテンツプロジェクトを立ち上げると、アニメ作品『こわぼん』で早くも実績を作っている。

KBC九州朝日放送が15年10月に放送開始したホラーアニメ『こわぼん』は、イタリア語、中国語字幕入りで日本での放送と同時期に配信された

KBC九州朝日放送が15年10月に放送開始したホラーアニメ『こわぼん』は、イタリア語、中国語字幕入りで日本での放送と同時期に配信された

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■海外展開も見据えたビジネスモデル

 福岡のテレビ朝日系列局であるKBC九州朝日放送のコンテンツプロジェクトは、当初からメディアや国境を越えて計画されていた。

 東京にあるCGアニメスタジオのILCA(イルカ)とタッグを組んだアニメ作品を共同制作することを昨年6月に発表し、第1弾に1960年代を彷彿とさせる白黒アニメ『暗闇三太(くらやみさんた)』、第2弾にロトスコープ(※)と呼ばれるCG技術を用いたホラー作品『こわぼん』を揃えた。九州を舞台にした、3分尺のショートアニメ作品だ。自社での放送はもちろん、他局への番組販売も行うのは、これまでローカル局が行っていた自社制作コンテンツの通常の展開だが、同プロジェクトは配信や商品化、イベント展開などいわゆる2次利用を当初から見据えた点が異なる。権利処理などを円滑に進め、2次利用を含めて全体でリクープを目指すビジネスモデルを描いたのだ。

 そのため、放送直後から公式HP上をはじめGYAO!やU-NEXTなどでも配信され、非独占で複数の配信先に積極的なアプローチが行われた。国際展開もその動きの1つだった。CG技術が売りの『こわぼん』は本放送前から海外バイヤーから注目を集めることになり、『進撃の巨人』のDVDサブライセンスなどを扱うイタリアのDYNITと、中国本土、香港、台湾、マカオをカバーする中国のビリビリ動画と早々に契約を結び、イタリア語、中国語字幕入りで日本での放送と同時期に配信された。

■配信サイトに日本コンテンツのニーズあり?!

 九州朝日放送はフランス・カンヌのテレビ見本市MIPCOMなど、コンテンツ流通マーケットなどにも積極的に参加し、商談を進め、ラテンアメリカ地域における配信契約も成立させた。また、今年前半にはアメリカやカナダの有料チャンネルで放送や配信も予定。影響力が大きい北米エリアへも進出するなど、取引するエリアは今や全世界規模に広がる。

 九州朝日放送国際事業部の永吉真実氏は「制作手法に興味を持ってもらっています。“ロトスコープで作られたジャパンホラー”という説明だけで、作品を観る前から買いたいと言われることもあるほどです。3分間という手軽な尺が動画配信サイトではニーズがあるようで、制作発表以降、いろいろな国から引き合いを受けている状況です」と説明する。

 このほかにも『こわぼん』の成功にはいくつかの理由が考えられる。

 その1つとして考えられるのは、こだわりと妥協のバランスの良さだ。こだわりは、福岡を拠点に活動するご当地アイドルLinQのメンバーらを起用し、彼女たちを実写で撮影したものをアニメーション映像に作り上げたこと。それが独特な表現演出になって「ジャパンホラー」を打ち出した。一方で、制作コストを優先して尺は3分という最大限のショートサイズに収めた。また出口も地上波にこだわらず、レベニューシェアが基本取引条件になる配信サイトを中心に振り切ったことも功を奏した。

 映像マーケットの世界では、配信事業者との付き合いがここのところ急速に増している。日本国内でもNetflixやHulu、AmazonといったSVODと呼ばれる定額制の配信サービスが台頭していることもその一因だ。彼らからはテレビ放送とは差別化したコンテンツを扱おうと必死な様子も見られる。そうしたニーズにも『こわぼん』は応えていると言える。同作の成功にはジャパン・コンテンツの可能性も示されている。(文/長谷川朋子)

(コンフィデンス 16年1月18日号掲載)

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  • KBC九州朝日放送が15年10月に放送開始したホラーアニメ『こわぼん』は、イタリア語、中国語字幕入りで日本での放送と同時期に配信された
  • “ロトスコープで作られたジャパンホラー”と注目。第4話には、九州発のアイドル・LinQの木悠未が出演した

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