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多才ぶり発揮する“天才”バカリズム 『下町ロケット』での演技にも注目

 ドラマ『下町ロケット』(TBS系)の「後半の鍵を握る」(本人談)、ライバル企業・サヤマ製作所の社員・横田信生役として29日より出演しているお笑い芸人・バカリズム(升野英知)。“天才”とまで言われるお笑いのセンスは松本人志など同業からもお墨付きだが、最近は演技のほか、ナレーションやドラマの脚本、小説執筆も行うなど、マルチな才能を発揮している。とはいえ、芸人が本業以外のジャンルに挑戦することが珍しくなくなっているなかで、決して驕ることはなく、真面目にお笑いと向き合っている姿は好感をもって受け入れられているようだ。

『下町ロケット』(TBS系)出演も話題のバカリズム (C)ORICON NewS inc.

『下町ロケット』(TBS系)出演も話題のバカリズム (C)ORICON NewS inc.

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■先輩芸人から一目置かれるも、いたって謙虚な姿勢

 バカリズムはもともと升野と松下敏宏によるお笑いコンビとして約10年間活動したが、2005年、松下が脱退したことにより、「バカリズム」名義を単独で継承したピン芸人としてのキャリアをスタートする。約3ヶ月後に初出場したピン芸人が競う「R-1ぐらんぷり」で披露した「トツギーノ」という、イラストにテンポのいいキャッチをつけたフリップネタで4位を記録したことで、「トツギーノ」ネタでの仕事が急増。一躍人気芸人の仲間入りを果たした。

 芸風はごく普通の日常から要素を切り取りつつも、それをバカリズム独自の視点でシュールな非日常へと昇華していくというもので、例えば前述の「トツギーノ」であれば、イラストとともに展開される「朝起き〜の」「トイレ行き〜の」…といった何気ない日常の最後に唐突に「嫁ぎ〜の」という結婚している男女のカットが差し込まれる。そのお笑いの才能は先輩芸人からも一目置かれており、2009年に放送された『しゃべくり007』(日本テレビ系)で今田耕司が「今1番面白い芸人」としてバカリズムの名を挙げている。『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)では並み居る先輩芸人を抑え、3度にわたる優勝を飾っており、過去にORICON STYLEが実施した「最も面白いと思うピン芸人」でも1位を獲得しているが、本人は「まさか僕のようなゴミクズ芸人が1位に選ばれるなんて…」。と至って謙虚だ。

 最近ではお笑い以外の分野でも活躍が目立っているが、一つひとつの仕事をピックアップしていくと、芸人として培ってきた経験をうまく活かしていることがわかる。例えば、バカリズムが「OL」になりきって書いていたブログを文庫化した『架空OL日記』には、世の女性なら思わず頷いてしまうOLの“あるある”な日常が満ち溢れている。また、脚本を手がけた昨年放送のドラマ『素敵な選TAXI』(関西テレビ・フジテレビ系)は、主演の竹野内豊扮するタクシー運転手が「選TAXI」に乗って過去にさかのぼり、人生の選択肢を選び直す人々の悲喜こもごもを1話完結で描き、“日常をテーマにしたファンタジー”が「面白い」「泣ける」と話題になった。

■天然? 計算? 副業芸人が増えるなかでマイペースに“芸”を磨く

 もともとドラマの脚本家としては、2012年に『世にも奇妙な物語 2012年 秋の特別編』(フジテレビ系)の「来世不動産」を手掛けた時点で、一部では注目を集めていた。品川庄司・品川祐やキングコング・西野亮廣など本業以外のジャンルに挑戦する芸人が増える中で、その流れに乗ったようにも見受けられるが、本人にとっては“ネタ作り”の一環らしく、あくまでも本業は芸人。とはいえ、『素敵な選TAXI』の脚本を引き受けた理由について「(多才ぶりをアピールすれば)いろんな女性タレントさんにちやほやされるのかなと思った」とあっけらかんと発言するなど、肩にまったく力が入ってないところがまた、天然なのか、したたかなのかよくわからない、天才・バカリズムたるゆえんでもあるのだろう。

 『下町ロケット』では、サヤマ製作所でかつては開発部員として活躍していたが、今は閑職に追いやられているという役どころを演じている。佃製作所を裏切ってサヤマ製作所に転職してきた技術者・中里(高橋光臣)に対し、上司が「お前も成果を出せないと、ああいう風(バカリズム)になるぞ」とイヤミを言う場面があるのだが、そのときのバカリズムの後ろ姿からは、まさに“ザ・閑職”という哀愁が漂い、背中だけでここまで演技ができるのかと驚かせられた。また、この中里から人工弁の設計について相談を受けると、サッと検証試験に参加し、いかにも元・腕利きの技術者らしい片鱗を見せる演技も秀逸だった。今後は俳優としても需要が高まっていくかもしれない。

 天才と言われながらも、気張らない、純粋なままのノリが、バカリズムの魅力であるとも言えそうだ。これからもお笑いの独自路線を追求し、そのほか役者、脚本家、小説の執筆など、各方面で奇才・多才ぶりを“淡々と”発揮しながら、視聴者を楽しませていただきたいものである。

(文/五目舎)

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