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国内で拡大の一途を辿るハロウィン 問われるモラル

 ここ数年、日本でもすっかり定着したハロウィン。この時期になると、様々なハロウィンに関するニュースを目にするようになった。今年はAKB48やきゃりーぱみゅぱみゅがハロウィンソングを発売するなど、さらに盛り上がりそうな気配だ。クリスマスなどに次ぐイベントとして、経済効果も期待される一方、ゴミを放置する、器物を破損する、大声を出す等々の問題も起こし、昨年は渋谷で200人の機動隊員が出動、逮捕者も出る事態となった。果たして日本人にとってハロウィンとは何なのか。盛り上がっている今だからこそ、モラルについて今一度考えてみる必要がありそうだ。

ハロウィンにコスプレした人たちでにぎわう六本木の街(2014年10月31日撮影) (C)oricon ME inc.

ハロウィンにコスプレした人たちでにぎわう六本木の街(2014年10月31日撮影) (C)oricon ME inc.

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■1000億円を超える巨大市場となりつつあるハロウィン

 そもそもハロウィンとは、毎年10月31日に行なわれるケルト人のお祭りで、秋の“収穫祭”の意味合いがある。カボチャの中身を切り抜く「ジャック・オー・ランタン」を作って飾ったり、子どもが仮装して近くの家を「トリック・オア・トリート」と言って訪問してお菓子をもらったりして歩く、といったものだった。日本では1970年代頃から一部で紹介され、1980年代もニュースなどで報じられていたが、せいぜい“くりぬいたカボチャを飾るイベント”くらいにしか思われておらず、男子の間ではハロウィン=ドイツのへヴィメタルバンドと認識している人もいたほどだ。

 そんな国内での状況が変わり始めたのは、1997年、東京ディズニーランドがハロウィンイベントを始めてからと言われる(この期間だけは大人がコスプレしての入場も可能)。以後、現在も開催されている川崎市のハロウィンパレードなど、自治体も積極的にハロウィン関連イベントを実施し、メールやインターネット、さらにはSNSなどの普及によって拡散。六本木や渋谷、原宿、新宿など、都心を中心に各繁華街で毎年のようにイベントが行われるようになった。その盛り上がりは海外からも注目されており、本来のハロウィンとは少し違うが、「面白そう」「参加してみたい」と好意的に捉えている人が多いようだ。

 現在、日本国内のハロウィン市場は1100億円を超えると言われ(日本記念日協会2014年発表)、もはやバレンタインデーを超えている。ハロウィンパーティを開催する東京近郊の飲食店では、「自分は全然興味ないけど、最近お客さんも減ってるし、集客イベントとしてやっている」(バー経営者)、「普段あまり来ない20代のお客さんも来る。ウチは酒造メーカーがくれた仮装グッズを配るだけだけど」(レストラン経営者)など、各業界が経済効果を狙ってハロウィンを盛り上げようとする一面も見える。

■AKB48、きゃりーが“ハロウィン・ソング対決” エンタメ界も盛り上がり

 その傾向はエンタメ業界も同じだ。今年になって、AKB48が「ハロウィン・ナイト」、きゃりーぱみゅぱみゅが「Crazy Party Night〜ぱんぷきんの逆襲〜」を発表し、はからずも“ハロウィン・ソング対決”の様相を呈している。そのうち、国生さゆり「バレンタイン・キッス」やPerfume「チョコレイト・ディスコ」、山下達郎「クリスマス・イブ」、ワム!「ラスト・クリスマス」といったような、ハロウィン定番のシーズンソングが登場しそうな勢い。スタンダードソングの誕生は、日本にハロウィン文化が根付いた証拠と言えるだろう。

 なぜ、ここまで急速にハロウィンが流行したのか。その背景には、オタク文化の一般社会への浸透と、コスプレへの憧憬というものがあるだろう。かつては、一部のマニアックな人々は敬遠されがちな存在だったが、2000年代に入ってからオタク文化が一般にも浸透し始めた。同時に「コミックマーケット」などでコスプレしている人たちの模様がメディアで報じられるようになった。これまで一部の人たちに限られていたコスプレへの抵抗感も薄れ、“私もコスプレしてみたい”といった潜在的な願望に火をつけた。コミケやコスプレパーティに参加するほどではない人々が、忘年会やクリスマスパーティのノリでハロウィンイベントでコスプレを楽しみ、さらに街中を練り歩くことで仲間意識や連帯感が醸成されて、10月末の繁華街には一時的な“非日常空間”が現出されるようになったのである。

■全員が楽しめるルール作りが急務

 もちろん、コミケなどのコスプレイベントであれば、限られた空間で同好の士たちがルールを守って行なわれるため、誰にも迷惑をかけない。しかしハロウィンに関しては明確なルールもないため、中にはハロウィンイベントで盛り上がり、そのコスプレの高揚感のまま公共の交通機関を利用したり、路上に出たり、他の通行人の迷惑もかえりみず騒いで渋滞などを起こす事例も。せっかく新たな文化として定着しても、一部のマナーの問題で全員が気持ちよく楽しめるイベントではなくなってきているのだ。

 こうした中、一部の自治体では敢えてハロウィンイベントを開催することで、秩序を守ろうという動きも出てきている。大々的にイベントを開催して、誰もが楽しめる範囲でルール作りをしてしまえば、街にとっても参加者にとってもプラスになる。例えば国内では老舗と言える川崎市のハロウィン・パレードもそうだが、昨年からドワンゴ、アニメイトが豊島区全面バックアップのもと開催している「池袋ハロウィン」は、参加者や地元の商店街の意見なども組んだうえでのルール作りをしている。池袋のハロウィンに関しては、何と豊島区長もコスプレして参加。ガチガチに規制するのではなく、ルールの中で自由に楽しめる仕組みを作れば、自ずと秩序を保ったイベントにもなるはずだ。

 今後のハロウィンは、そうした企業、自治体を巻き込んだかたちでのルール作りが最重要課題となっていくかもしれない。いずれにしろ、“シケた”不景気な顔をしているよりは、華やかにコスプレして楽しんでいるほうが明るくていい。今年のハロウィンに参加しようと考えている人は、今一度、マナーについて考えてみてはいかがだろうか。

(文/五目舎)

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