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華原朋美、紆余曲折の20年「あきらめきれなかった」

 デビュー20周年を迎える歌手の華原朋美が、ベスト盤『ALL TIME SELECTION BEST』と『ALL TIME SINGLES BEST』を発売した。「I’m proud」など大ヒット曲を送り出した90年代から、活動休止期間を経て、奇跡の復活を果たした華原が、ORICON STYLEのインタビューに応じた。決して平坦ではなかったこれまでの道のりを振り返り、紆余曲折経ての今だからこそ思う“歌手・華原朋美”について語った。

デビュー20周年を迎える歌手の華原朋美(写真:西田周平)

デビュー20周年を迎える歌手の華原朋美(写真:西田周平)

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◆デビュー当時は、歌よりも愛に対する想いのほう大きかった

――今作は、“華原朋美”の20年間の歴史と変遷をじっくりと感じられるラインナップ。なかでも一気にスターダムへと昇りつめた初期の楽曲群は、いま聴いても鮮烈ですが、華原さん自身は当時の状況をどんな風に感じていましたか?
【華原】 あのときはアーティストとしての自分がどうかというより、とにかく恋と愛がすべてでした。あと私の場合、デビューする前から別の名前で芸能活動をしていたけど目が出ない時期が何年もあって。そこからあるとき突然“華原朋美”として急にテレビに出たり、曲が売れて、現実離れしちゃったというか。自分でもわけがわからないうちに築き上げられていたっていう感覚でした。

――リスナーも、現代のシンデレラストーリーを見るような感覚はありましたよね。
【華原】 そうかもしれないですね。私自身は当時まだ21歳、22歳で、とにかく好きな人と一緒にいたいっていう時期だったから、歌に対する想いよりも愛に対する想いのほうが大きくて。その気持ちがまた歌に反映されるって感じだったので、それはそれで楽しい時間でした。観ている人たちもたぶん、そんな2人が好きだったというか。すごく幸せそうで、絵に描いたような2人だと思っていたのかなと。私もネットなどであの頃の映像を観ると、そう思います(笑)。

――当時の映像とか観るんですか?
【華原】 “こんなときもあったなぁ”みたいな感じで、ときどき観ますよ(笑)。あんな2人が「LOVE BRACE」や「I BELIEVE」、「I’m proud」とか歌うことで、女の子の憧れるような世界を作り、それが曲のヒットや“華原朋美”の人気に繋がったのかなって。

◆「I’m proud」を歌うことも聴くこともできなかった時期も

――でも「I’m proud」は華原さんのなかでも大きな曲ですよね。
【華原】 もちろん、というか大きすぎた。存在感が強すぎて、歌うことも聴くこともできなかった時期もありました。

――2012年の『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)では、その「I’m proud」を堂々と歌い上げ、見事5年半ぶりの復活を果たしましたが、あのときはどんな気持ちでした?
【華原】 精神的に裸の状態でした。5年半も普通の生活をしていると、芸能人オーラとかもなくなっていますし、しかも私はその間、“死んでしまいたい”と思った時間のほうが長くて。そのなかで、いろんな人の救いがあり、人間らしくなっていったんですが、隠すとこはなくなっちゃっていましたからね。その上で復帰するなら、もう自分を全てさらけ出すしかないわけで。それはすごく恥ずかしいし、勇気も必要で、“これが今の私です”って想いだけで、あのステージに立っていました。

――華原さんの場合、復帰しないという選択肢もあったと思います、当時の状況だと、むしろそのほうが楽だったかもしれないのに、なぜ復帰の道を選んだんですか?
【華原】 やっぱり、あきらめきれなかったというか。私は歌を歌って生活することしか経験がなかったし、何より歌が大好きだったからでしょうね。バカにされることも多くて、それがまた自分を奮起させた。バカにされるってものすごく悔しいことだし、それで“死にたい”と思ったりもしたけど、それを超えると逆に糧になる。踏み台にしちゃうと、そのあとの成長が早いって、自分の体験から実感しましたね。

◆この20年間で、新曲をまた小室さんに書いてもらったことが一番嬉しかった

――この20年間の中で、一番嬉しかったことは?
【華原】 たくさんあります。やっぱり新曲をまた小室さんに書いてもらったことが一番嬉しかったんじゃないかな。この20年は、輝く自分を取り戻そうと思っては崩れ、立ち上がってはまた崩れっていう砂のお城を作るような年月でした。でも、そのなかでまた新たに曲を作り上げることができたのは本当に嬉しいことだなと。

――これまでの20年間の“華原朋美”に言ってあげたいことはあります?
【華原】 “よくあきらめずに生きてこられたね”って褒めてあげたい。そして、新しい夢を持って進んでいってもらいたいです。実は私、最近、自分と華原朋美を切り離すようにしているんです。私だったらできないことばっかりやっているので、自分とはかけ離れた人だなって、やっと思えるようになったというか。

――“華原朋美”を俯瞰(ふかん)して見ることが、今の華原さんにとって生きやすいスタンスなんですね。
【華原】 本当にそのとおりで、“華原朋美”にはもうなれない。私と華原朋美が一緒になっちゃうと辛くなってしまうので。そもそもこれまで一緒だと思っていたからダメになっちゃったわけで、今もそのままだったらこんなにいろんなことをしゃべれないですよ。だから、別世界の人だと思って、遠くから見るっていうのが今の私のスタイル。その上でネットとかを見ると、悪いことしか書いてないけど、いいこともちょっとは書いてあって、それが華原朋美の現実であり、そのなかでこの人は生きているんだなと。そういうことを家に帰って“私”に戻ったとき考えています。

――“私”と“華原朋美”の二人三脚で、その現実を生きていると。
【華原】 そうですね。私の役目は“華原朋美”を輝かせるために努力することですから。そのためにもまずは20周年ツアーを完走できるようにがんばろうと思っているし、そのなかでリアルに歌を伝える作業を続けていきたい。あとはひとりの女性としても、いろんな夢を描いていきたいですね。

(文:若松正子)

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