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3DCG『ドラえもん』、『ALWAYS』『永遠の0』と同じ手法で活路

 藤子・F・不二雄原作、史上初の3DCGで作られた『STAND BY ME ドラえもん』が公開された。すでに鑑賞した人は、上映開始から5分もしないうちに3DCGアニメーションによって描かれたドラえもんたちにも目が慣れたのではないだろうか。ピクサーやドリームワークスなど、海外の3DCGアニメと比較されがちだが、目指しているのは独自のスタイル。3DCGのドラえもんはいかにして生まれたのか? 監督を務めた山崎貴氏と八木竜一氏に話を聞いた。

3DCG映画『STAND BY ME ドラえもん』を手がけた山崎貴監督と八木竜一監督 (C)ORICON NewS inc.

3DCG映画『STAND BY ME ドラえもん』を手がけた山崎貴監督と八木竜一監督 (C)ORICON NewS inc.

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――『ドラえもん』は、1970年1月号の小学館学年別学習雑誌で連載が始まり、79年よりテレビアニメが放送開始され、1980年に初映画化された。長きにわたり愛され続けている『ドラえもん』をあえて3DCGでアニメ化しようと思ったのは?

【山崎】3DCG映画作りのノウハウや技術を進化させるためには、日本でも作品を作り続けることが大切ということで、『ドラえもん』を3DCG化する企画が持ち上がりました。これは、賭けだと思いましたね。毎週、テレビアニメが放送されていて、映画シリーズも毎年公開されている。それでも、『ドラえもん』ほど、3D向きのコンテンツはないと思いました。

【八木】小さいお子さんからご年配の方まで名前を知らない人はいない素材を3DCG映画にすることができて、うれしかったですね。日本の3DCGアニメって、なんか毛嫌いされてしまうんですけど(笑)。「どこでもドア」も3Dで観ると、すり抜けて別空間へ行ける感覚がよりリアルに感じられますし、「タケコプター」で空中散歩するシーンは今作のハイライト。空を飛ぶ感覚を楽しんでもらえると思います。

――もともと漫画だったキャラクターを立体化するのは難しかったのでは?

【山崎】藤子・F・不二雄ミュージアムに行けば、ドラえもんやのび太たちのフィギュアがありますし、それを基準にすればいいなと思いました。

【八木】六本木ヒルズに66体のドラえもんが展示されていますが、触ったり、抱きついたりできる立体のドラえもんが、映画の中で動いていると思ってもらえたら。キャラクターは、できるだけ原作の雰囲気を損なわないように、漫画的な動きにリアルな質感を持たせた表現をたくさんやっています。2Dアニメを見慣れているから、最初は違和感あると思うんですが、それをいかに早い段階で気にならなくさせるかが課題でした。ちゃんとキャラクターに感情移入できるクオリティのものはできたと思っています。

――今年はディズニーの3DCGアニメ『アナと雪の女王』が大ヒットしましたが…。

【山崎】映画を観るには学習が必要だと思うんですね。映画館に行って、『アナ雪』を観て、面白かったという人たちがこれだけたくさんいるということで、CGアニメに対する垣根もずいぶん取り除かれたと思いますし、そういう意味ではありがたい現象。強いて言えば、『ドラえもん』にも歌を入れておけばよかったかな(笑)。

――今回の『STAND BY MEドラえもん』はフルCGではないんですよね。『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ(05年、07年、12年)や『永遠の0』(13年)と同じ、CGとVFXの融合。

【山崎】そうですね、「白組(※)スタイル」です! のび太の家や部屋の中などは6分の1のサイズのミニチュアを制作して撮影しています。ミニチュアを使うと、CGキャラクターと背景が違和感なくそろえないといけないので、キャラクターもよりリアルな質感をまとわせたくなって、クオリティが上がる。実在するミニチュアを撮ることで、リアリティも出すことができますし、デジタルだけのツールでは表現できない手触り感、手作り感、温かみが出せる。CGとVFX、2つの技法の間を行ったり来たり、いろいろやっているうちにいいものが出来上がる。そういう独自スタイルを押して行かないと、ピクサーフェイクなものになっちゃうので、それはやめたい。CGなのか、ミニチュアなのかということは、映画を観ている時は一切気にせずに観ていただきたい。むしろ、気づかれたら凹みます(笑)

――ドラえもんと小学生ののび太の日常には、『ALWAYS』シリーズのような懐かしい日本の風景が広がるリアリティがあったのに、大人になったのび太が暮らす21世紀は現実とのギャップが大き過ぎるのではないかと思ったのですが…。

【八木】僕らがちょうど、『ドラえもん』のてんとう虫コミックスの1巻が出たのが1974年、その時、のび太は10歳。僕と山崎も10歳でした。自分も子どもの頃に見た風景、土管がある空き地を描きたかったということもあって、1970年代半ばの設定にしています。当時、日本は高度成長期の最後のあたり。まさにこの映画で描いたような未来を子どもの頃に思い描いていたんです。現実は、全然たどり着いていないわけですが(笑)、あえて子どもの頃に思い描いていた未来をイメージした夢のあるデザインにしました。どちらにしても、子どもの頃を思い出せる作品を作れて、幸せに思います。

(※)白組は、山崎・八木両監督が所属する制作会社。CGなどのVFXからミニチュア制作まで幅広い技術を持ち、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』、『永遠の0』、『寄生獣』(2014年11月29日公開予定)など参加作品多数。

関連写真

  • 3DCG映画『STAND BY ME ドラえもん』を手がけた山崎貴監督と八木竜一監督 (C)ORICON NewS inc.
  • 映画『STAND BY ME ドラえもん』のび太の部屋はミニチュアで制作し撮影された(C)2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
  • 映画『STAND BY ME ドラえもん』21世紀のシーンの背景は夢ある明るい世界観にするためすべてCGで作り出している(C)2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
  • 映画『STAND BY ME ドラえもん』どこでもドアもリアルに表現(C)2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
  • 映画『STAND BY ME ドラえもん』3DCG化されたのび太としずかちゃん(C)2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
  • 映画『STAND BY ME ドラえもん』3DCG化されたドラえもんとのび太(C)2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会

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