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<連載>吉本百年物語 ほんとうのエピソード(5)惚れて惚れられ ワカナ・一郎

■惚れて惚れられ ワカナ・一郎

 かつて、男女コンビの漫才では、女性はかんたんな相づちをうつか、三味線を伴奏するなどの脇役でした。それがやがて、女性が男性を言い負かして笑いを取るようになります。現在の宮川大助・花子のような漫才です。このようなスタイルを作り上げたのがミスワカナ・玉松一郎でした。ワカナは自分のことを「えぇ女や」と持ち上げ、反対に「目はちっちゃいし、鼻を開いてパクパクさせて」と一郎の顔をこき下ろして笑わせました。

「吉本百年物語」8月公演〜わらわし隊、大陸を行く〜制作発表より (写真左より)松尾貴史=石田一松役、水野真紀=ミスワカナ役、木村祐一=玉松一郎役

「吉本百年物語」8月公演〜わらわし隊、大陸を行く〜制作発表より (写真左より)松尾貴史=石田一松役、水野真紀=ミスワカナ役、木村祐一=玉松一郎役

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 舞台ではそんな二人でしたが、最初に惚れ込んだのはワカナでした。先夫との間に子どもまでいたのに、劇場の楽団員だった一郎と駆け落ちをします。一郎は楽器は弾けましたが漫才は素人。当時の漫才界は師弟関係で結ばれた一派があり、どこにも属さない一郎は、漫才師として名乗る名前がありません。そこでつけたのが“玉松”。ワカナと一郎が初めて出逢ったのが玉造(大阪市天王寺区)の朝日座、二人が隠れ住んだワカナの家が松ヶ枝町(大阪市北区)、そこで玉松と名付けたそうです。

 そんな二人も、やがては離婚、そしてワカナの早逝。一郎が二代目ワカナに選んだのはしゃべり方がそっくりだったのちのミヤコ蝶々。しかし長くは続かず、ワカナの面影が残る先夫との娘に三代目ワカナを名乗らせて舞台に立ちました。ワカナに惚れられた一郎は、生涯、ワカナの姿を舞台で追い続けたのでした。

 「吉本百年物語」8月公演〜わらわし隊、大陸を行く〜より
 (次回掲載は8月28日)文・前田憲司

 「吉本百年物語」(1)吉本発祥のナゾ
 「吉本百年物語」(2)漫才と落語
 「吉本百年物語」(3)東京の吉本
 「吉本百年物語」(4)慰問演芸団で中間搾取?

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