5月29日に老衰のため100歳で亡くなった日本最高齢の映画監督・新藤兼人さんの次男で映画プロデューサーの新藤次郎氏が、著しい活躍をした映画製作者に贈られる『第31回藤本賞』大賞を受賞し15日、都内で行われた授賞式に出席した。兼人さんの遺作となった映画『一枚のハガキ』のプロデュース功績を讃えられた次郎氏は「（生前に）父に報告したときは『ああ、そうか』という感じだったんですけど、『俺の作品のおかげでお前がもらえたんだろう』って言われた気がします」と、亡き父とのやり取りを振り返り「授賞式が生前に間に合わなかったのが残念ではありますけど、後でじっくり報告したいと思います」と思いを馳せた。

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　賞状と賞金を受け取った次郎氏は「これまで人様に褒めていただいた経験がないので、とても恥ずかしい」と照れ笑いしながら「歴代受賞作品はどれも大ヒット作ばかりなので、『一枚のハガキ』がここに載っていいものか」と恐縮。同作プロデュースのほか、映画プロダクション『近代映画協会』の社長として、兼人さんを陰で支え続けたことも評価されての受賞に「熱く心に受け止めている。インディペンデント映画をこうして評価していただけたのは本当に感激。これ以上の上はないので、後は下がるだけかな」とユーモアたっぷりに笑顔をみせた。

　父親の最期の日々を娘が記録したドキュメンタリー映画『エンディングノート』（砂田麻美監督）の制作が評価され奨励賞を受け取った映画監督の是枝裕和氏は「本当に光栄ではあるんですけど、僕は映画監督でもあるので、正直、ここに居心地の悪さを感じています」と素直な心情を吐露。「砂田監督としても癪（しゃく）に障る感じでしょう」と笑いを誘いながら「次は自分の監督作品をヒットさせて、プロデューサーを連れてきてやろうと思います」と決意を新たにした。

　同映画賞は、数多くの作品を世に送り出した映画プロデューサー・藤本真澄の功績を讃え1981年に設立。この日はほかに『ヒミズ』で特別賞を受賞した依田巽氏、梅川治男氏、『探偵はBARにいる』で新人賞を受賞した須藤泰司氏が登壇した。