『凪のお暇』Pが明かす制作秘話 オリジナル結末の賛否に「凪はいつかまた2人と会う」
ドラマが当たり前にやっていることを少し違う形にしたい
『コンフィデンス』誌のドラマ満足度調査「ドラマバリュー」では、第1話が19年7月期ドラマNo.1の初回満足度となる94Pt(100Pt満点)でスタートして以降、ぐんぐんと満足度を上げ、概ね90Pt台後半の高水準をキープ。第3話および第9話で7月期ドラマおよび2019年放送ドラマ最高となる99Ptをマークするなど、4月期の作品賞受賞ドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)が最終話で獲得した97Ptを上回る満足度を獲得していた。
「誰もがすべてを捨てて生まれ変わりたいという願望は誰しも持っていると思います。女性の主人公も魅力的だったのですが、すごく読者の間口が広い原作だと感じました。そして、“空気を読む”というキーワードがおもしろい。誰もが日ごろ感じていることでありながら、口にはしない。潜在的にいろいろな層に届くポテンシャルがあると思いました」
ドラマは、そのストーリー性や“夏のお暇感”が画面からあふれだす音楽と映像、キャスト陣の好演などが、放送開始とともに大きな人気を得たが、毎話劇中のいろいろな場面に現れる遊び心のあるオープニングタイトルや、一枚で出してしまうエンドクレジット、次回予告がないことなど、その巧みな構成も話題になった。それらを中井氏は「ドラマが当たり前にやっていることを少し違う形にしたいと思っていました」と語る。
凪がいつかまた2人と会うだろうという雰囲気だけを残したかった
「本作は内容的に説明しにくいドラマなので、観て楽しいと感じてもらうのが一番と考えていました。そのために武田真治さんにオネエのママを演じてもらったり、バルスなどの小ネタを入れたり、とにかく楽しさがあるドラマにしたいと思っていました。金曜夜の放送だからあそこまで振り切れたという面もあります」
「先ほども申し上げましたが、現代人には“人生リセット欲求”があるのではないかと思います。でも、社会で生きるなかでそれは簡単にできることではない。それをやってのけた凪にある種の憧れや願望を抱き、彼氏との付き合いも含めて、その後の生活がどうなるかに関心を持っていただけたのではないでしょうか。会社を休んで六畳一間に住んで、バイトだけで生活してみたいという思いに共感していただけた方も多かったと思います」
ドラマの第7話以降は、原作にはないオリジナル。凪が慎二とゴンのどちらも選ばない結末には、さまざまな声が寄せられたようだ。
「慎二と戻るという結末もあったんでしょうね。ドラマを観た周囲からはそうなったほうがよかったとも言われました(笑)。でも、ぐるっとまわって同じ地点に戻ったように見えるよりは、凪がいつかまた2人と会うだろうという想像の余地だけを残したかった。ただ、凪があのあと2人といっさい会わないわけではないんだろうなと。慎二がたまに立川に来たりしているその先を思い描きながら結末を作りました。もしかしたら、あのあと2人はまた付き合うのかもしれませんし、そこは観た人たちの想像にお任せしたいです」
最後に中井氏は、物語の舞台となったアパート・エレガンスパレスが最終話で取り壊されるシーンのエピソードを教えてくれた。
キャスト、スタッフの尽力のほか、放送タイミングなども含めたさまざまな偶然も重なって生まれた名作だったようだ。
(文:編集部・武井保之)