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悟空×ベジータ×フリーザ声優が語る、アニメ『ドラゴンボール』の30年

 世界で愛される人気コミック『ドラゴンボール』の映画化20作目となる『ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー』が12月14日(金)に公開となる。日本では一足早く日本武道館で完成披露試写会を兼ねたワールドプレミアが開催され、“声優界のレジェンド”とも言うべき豪華キャストが集結した。コンフィデンス(オリコン)は同イベントのバックステージに潜入し、孫悟空役の野沢雅子、ベジータ役の堀川りょう、フリーザ役の中尾隆聖にインタビューを決行。本作の見どころをはじめ、30年以上続く『ドラゴンボール』の魅力あふれるキャラクター作りやハイスピードバトルの制作秘話など、悟空・ベジータ・フリーザ役の3人に存分に語ってもらった。

「悟空と私は一体、ずっと2人で生活しています」(孫悟空:野沢雅子)

――『ドラゴンボール超 ブロリー』のワールドプレミア終えた、今のお気持ちをお聞かせください。
野沢雅子 日本武道館でアニメの完成披露試写会なんて、もうありえないですよ。あんな素晴らしいイベントは初めてでした。出させてもらっている側もすごく気持ち良かった(笑)。

中尾隆聖 ですよねぇ。しかもレッドカーペット! 僕も長年声優やっていますけど、あんなすごいイベント初めてでした。
堀川りょう 同じく「気持ち良い」の一言に尽きますね。満席のお客様を前にして挨拶できるというのは、非日常的でありがたい限りです。

――『ドラゴンボール』は30年以上続く超人気アニメで今作も世界中から注目されています。今回は鳥山明先生が自ら手掛けた物語です。みなさんが演じるキャラクターについて改めて気づいたことはありますか?
中尾隆聖 今回で劇場版20作目ですがいろんな発見がありましたね。僕はフリーザのかわいらしい一面が見れたのが嬉しかったです。今作でいえば“5センチ身長を伸ばしたい”とか(笑)。それが悪の限りを尽くしてきた彼の望みだなんてちょっとちっぽけな気がするけど、演じていて楽しかったです。

野沢雅子 私の場合はもう悟空の中に自分が入り込んじゃっているんです。だから、改めて何かを学んだというよりも、いつも通り自然に2人で生活していた感じですね。

堀川りょう 僕はこれからベジータがどういう一面を見せてくれるのかが楽しみになりました。ベジータって当初はすごく高飛車で冷酷なキャラだったけど、昔と比べたら最近はだいぶ柔らかくなったじゃないですか。今回も嫌々ながら悟空と共闘して、「あ、こんなこともやっていいんだ」って。そういう意味では、回を重ねるごとに『ドラゴンボール』の可能性は広がっているのかなと。
野沢雅子 ベジータはとくにワガママですからね。悟空のまわりにはワガママが多いんですよ。
中尾隆聖 本当そう。悟空は優しいからね。自然とわがままな人が集まってきちゃう。それはもう仕方ない(笑)!

ドラゴンボールの迫力あるバトルを作るのは…「役者陣と制作スタッフの相互理解」

――今作は今までに増して“長尺”のバトルシーンが目玉ですね。シリーズ人気キャラクターのブロリーと死闘を繰り広げるわけですが。演じている側もキャラクターと向き合うのにかなりのエネルギーを消費されているのでは…。
野沢雅子 エネルギーを消費しているとか考えたことはないですね。
中尾隆聖 それは雅子さんだけですよ! ブロリーを演じた(島田)敏さんは、あまりのバトルシーンの多さにアフレコで頭が痛くなったとおっしゃっていましたもん。本当に雅子さんだけはいつも元気。
野沢雅子 敏が体調悪くなったとき、背中をさすりながら「大丈夫?」って元気づけていたんです。そしたら「元気になりました」って言うから「じゃあ飲み行く?」みたいな感じでしたから(笑)。

――そのバイタリティは、まさに悟空ですね(笑)。野沢さんがみんなの“元気”を引っ張っているんですね。
野沢雅子 でも、りょうちゃんも声枯れたりしないよね?
堀川りょう そうかもしれないですね。でも、今回はたしかにバトルシーンが多かった。しかも、僕らなんて絵を完成前の線画で見るから、蹴っているのか、殴っているのか、それとも相手の攻撃を受けているのかがわからないこともあるんです。
中尾隆聖 でも、この2人はアフレコのときほぼ台本持っていない状態ですよ。台本を見ながらやっていたらバトルシーンのときに追いつかないですからね。雅子さんと堀川さんのバトルシーンは、経験値と阿吽の呼吸の賜物だと思います。

――つまり、“未完成の絵で、台本も目で追わずにアフレコをする”わけですね。刹那の一瞬に合わせて、「うりゃりゃりゃ!」と。それはかなりの“特殊能力”だと思うのですが。ドラゴンボールアニメに30年携わってきた皆さんの経験値のなせる業でしょうか?
堀川りょう もちろん、経験値もあると思いますが。感じるのは、アニメの製作スタッフ陣が、我々役者のことを理解してくれているのも大きいと思います。
野沢雅子 そうですね。スタッフさんが私たちに合わせてくれているところはあると思います。だから役者陣は無理なく演じられて、ドラゴンボールの迫力あるバトルが作られるんだと思います。

「“良い憎まれ方”で、後味を残す“悪”が僕の役目」(フリーザ:中尾隆聖)

――そんな数々の歩みを経て、ついに今作で記念すべき20作目となりました。
堀川りょう ちょうど20本目じゃないですか。毎週流すとして52本は撮りたいな。1年間毎週流すネタがあるって素敵じゃないですか。
野沢雅子 私も本数の多さにびっくりしました! 20作なんてなかなかないですよ。
中尾隆聖 つまりそれだけ雅子さん、堀川さんは「うりゃりゃりゃ!」と叫んだってことです(笑)。
――結婚して子供が生まれたり、悪役が改心したり…と30年間でキャラクターも変化していきました。キャラクターが成長していくなかで、演じる際に大切にしている“核”はは何でしょうか?
中尾隆聖 単に嫌われるのではなく、良い憎まれ方をしたいです。「フリーザってひどい奴!」と言われるのは僕にとって最高の褒め言葉だし、悪役はちゃんと憎まれなきゃいけない。後味を残せる“悪”であるのが僕の務めだと思っています。
野沢雅子 常に一体となること。客観的にならないこと。一体にならないで、俯瞰しちゃうのは、悟空の場合は違うかなって。
堀川りょう 今作は“PRINCE OF PRIDE”(プライドの王子)と紹介されています。これこそベジータの原点だと思うんです。悟空につっかかるときも「てめー!」じゃなくて「貴様!」と言うのがベジータ。やられても悔しくても、ベジータが持つ“高飛車”な部分はずっと大切に演じています。

「どこまで“惚れきれるか”が大事なんです」(ベジータ:堀川りょう)

――野沢さんは初代ゲゲゲの鬼太郎で、堀川さんは銀河英雄伝説のラインハルト、中尾さんは“ばいきんまん”も演じてますね。まさに日本のアニメ史に残る数々のキャラクターを演じて来られました。クリリン役の田中真弓さんは『ONE PIECE』のルフィでもありますし、ヤムチャの古谷徹さんは『ガンダム』のアムロで知られています。声優界のレジェンドが集った『ドラゴンボール』は皆さんにとってどんな作品ですか。
中尾隆聖 悪役を“定着”させてもらったという意味では、ターニングポイントとなった作品です。僕は実は『ドラゴンボール』ではタンバリン(初代ピッコロ大魔王の手下)も演じているので、クリリンを2度殺してるんです。だから今でも(田中)真弓から恨まれている(笑)
堀川りょう 僕の場合は、目の前のことを必死にやっていたらいつの間にかここまできていた、というのが率直な感想です。“『ドラゴンボール』だから”みたいに特別な意識はなかったですね。
野沢雅子 声優のオーディションの際、鳥山先生が一発で「この人!」と私を選んでくださったとお聞きしたときは震えました。「野沢さん以外の人は違うんです。本当はもっとギャラが安い人を使おうと思っていたのに(笑)」と。しかも、新作を描くときに今でも私の声が聞こえてくるんですって。長年やらせていただいてこんな嬉しい話はないですよ。“声優冥利に尽きる作品”です!
――声優といえば昔はアニメの声や吹き替えがメインの仕事でしたが、最近はスマホゲームの声やアーティスト活動など仕事がボーダレス化していますね。『ドラゴンボール』を見て声優を志した人も多いと思います。伝説の皆さんから若手声優たちにアドバイスを送るとしたら?
堀川りょう 僕なんてまだまだ発展途上のぺーぺーと思っていますから。お互い頑張りましょう、って伝えたいです。でも、ボーダレス化って良い側面もあると思っていて、いろんな経験ができるじゃないですか。絶対に学ぶことがあるし、いざ声優として力を出すときに相乗効果を発揮すると思うんです。結果は気にせず、恐れないでチャンレジしたほうがいいですよ。
野沢雅子 偉そうなことを言うのは好きじゃないんですが、「仕事がない」ってめげるぐらいならやめたほうがいいと思う。それじゃあダメでしょって。自分がやりたい・好きなことに向かっていくんだから、とことんやりなさいよって。「こうすればいい」なんてものはなくて、最後は自分の努力しかないんです。
堀川りょう どこまで仕事に“惚れきれるか”ですよね。人ってやったことに対して対価を求めるけど、もし神様に「お前は売れないよ」「報酬なんて出ないよ」と言われても、やりたいことをやれるのかってことです。仕事に惚れきるというのは、僕はそういうことだと思っています。
中尾隆聖 結局は“想い”ですよね。“想い”が人を育てるというか。やりたいことに対して“想い”があれば、つらいときがあっても待てるし、乗り越えられると思うんです。その“想い”をどれだけ強く持てるのか、シンプルだけどそこが一番大切なのかなと感じますね。
(取材・文/Kanako Kondo)
映画『ドラゴンボール超-ブロリー』
12月14日(金)公開
「力の大会」後の平和な地球で悟空(野沢雅子)はさらなる高みを目指し、修行に明け暮れる日々を送っていた。そんなある日、悟空とベジータ(堀川りょう)の前に見たことのないサイヤ人・ブロリー(島田敏)が現れる。全滅したはずのサイヤ人がなぜ地球に…? 再び地獄から舞い戻ったフリーザ(中尾隆聖)も巻き込み、まった違う運命をたどってきた3人のサイヤ人の出会いは、壮絶な闘いへと発展していく

原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明
声の出演:野沢雅子、堀川りょう、中尾隆聖、島田敏、久川綾、古川登志夫、草尾毅、山寺宏一、森田成一、宝亀克寿、水樹奈々、杉田智和
主題歌:『Blizzard』三浦大知
オフィシャルサイト:http://www.dbmovie-20th.com/
オフィシャルTwitter:https://twitter.com/DB_super2015
(C)バードスタジオ/集英社 (C)「2018ドラゴンボール超」製作委員会

提供元: コンフィデンス

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